常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

葉山(村山)

2019年08月11日 | 登山

今週の山行は村山市の葉山であった。当初計画していた東大巓は、白布のロープウェイが運行を中止したため、急遽変更された。この日、日本列島には3つの台風が接近して、その影響が懸念された。8日には、山形で落雷と、短時間の強い雨が降った。予報でつく晴れマークもいつ天候が急変するかも知れない、不安定な空模様である。前日になって、曇りから晴れの予報となったため、山行が決断された。

登山コースは担当のAさんが、幸生から入る十分一峠を選ばれた。国道458号線の十分一峠の林道には、通行止めのゲートが設けられている。市の観光課の情報では、このゲートから登山口まで、登山の人が利用しているとのことであった。国道はこの地点で肘折への通行が止められている。林道は砂利道で路肩の左が深い渓になっている。慎重に運転して15分、登山口に着く。

登山口の周辺は、鬱蒼と茂る深い緑である。山の滋養を吸い上げ、葉一枚一枚にたくましい生命力を漲らせている。ガスが走るように流され、時折り青空をのぞかせる。葉山にはもう5度ほど登っているが、アパートの住人に誘われて、木下サーカスのスッタフ三人で登った時のことが忘れられない。丁度、夏休みの始まる前のことであったが、夏の入道雲が出ている暑い日であった。畑コースを登り、2時間ほどで尾根に取り付いた頃である。雲が急に山を覆い、雷が鳴り出した。

目の前を、ほぼ水平に稲光が走っていく。高い木の下に避難することはもとより危険である。だが尾根道には隠れるような場所すらない。姿勢を低くしながら進み、だだ雷が遠ざかってくれることを念じた。30分ほどで、雷は去って行った。

十分一峠からの登山道は、沢筋から入る。危険なところに入り込まないような侵入禁止のテープも張ってある。左側が崖になった細い、しかも急な登りが続く。緊張した目の前に現れたのが、ブナの原生林である。太い樹々が、適度な間隔をとって聳えている。やがて登山道は、刈り払いが行われた広い道になる。

出羽三山は羽黒山、月山、湯殿山であるが、以前には葉山、月山、湯殿山と葉山が加えられている時期もあった。また天正のころまで、寒河江の慈恩寺の奥の院と称されていたという記録もある。いずれにしても、葉山はこの山から流れ出す水が周辺の田畑を潤し、五穀豊穣の守りとして尊崇の対象になっていた。

登り始めて1時間、空には雲が広がっている。まだ朝の9時だというのに、遠くで雷名が聞こえてくる。「遠雷」という立松和平の小説を思い出していた。あれは、オンライと読むのか、エンライと読むのか。東京近郊で、土地の値上がりのなかで、切り売りして豪遊する父、と母を守るべくトマト栽培を始めた青年の話である。小説の流れの背景に響いているのは、「遠雷」である。この作品は映画化され、石田エリの出世作となった。

急な登りを過ぎ、葉山の頂上が仰げるようになるころ、トンボ沼が現れた。沼一面に広がる花を終えたミツガシワ。そして無数のトンボ。もうトンボの季節が始まっている。飛んでいるトンボは、羽化したばかりのせいか小さい。しかし、無数に飛んでいる。ブトや蚊など、肌を刺す虫も多い。「こんなにたくさん虫が出るのは今年初めて」と仲間の一人が語る。

1時間、葉山神社に着く。葉山の頂上に目をやると、山の東側にガスがまいている。雨さえも落ちて来る形勢だ。遠雷は少しづつ近づいてきているような気がする。1462mとさして高くない高度のため、ひたすら暑さ対策に務めてきたが、ここに来て風が出て、寒いような気さえする。

咲き残ったシャジンが可憐な姿を見せている。珍しい白のシャジンもみることができた。遠雷に背中を押されるように、頂上へ向かう。会に入って5回目の山行になるNさんは、はじめて楽な登りでしたと余裕を示した。雷が少し近くで光ったような気がするが、やがて雲が去って行った。頂上は高い木がなくなり、展望のいい山になっていた。以前からこの山の頂上は展望なくてつまらない、という評判で、来ない人も多い。山形百名山に選ばれたのを機に、その評判を無くそうとしたのであろうか。ここでカッパを着込んで、神社へもどり、お花畑へと向かう。

5年ほど前に登った山の内コースを30分ほど下る。ここは登る人も無いのであろうか、草木の葉が道を覆い、足元が見ずらくなっている。急な坂、水が流れ沢になったような石の道を降りていく。やがて、お花畑とおぼしい広場に着くが、すでに花はない。

神社から西の方は展望が開け、遠い山々が墨絵のような美しい様子を示している。一向に晴れる様子が見えないまま下山。歩きやすい下りだ。Nさんの足取りが軽い。ほぼ1時間で下り、車に着いて靴を履きかえて間もなく大粒の雨が降ってくる。

参加者5名、内女性2名。帰路寒河江のユーチェリーで汗を流す。風呂のなかへ野鳥の侵入があり、女性風呂を中心に2羽の野鳥の捕り物劇があった。風呂の天井までは意外に高く、鳥を追う網が小さく見えた。珍しいできごとであった。

コメント
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