アメリカ芙蓉の大きな花が、真夏の太陽の光をいっぱいに受けて咲いている。植物の力は強い。これぼどの暑さにも、頓着する様子を少しも見せずに咲く。花の蜜をもとめて、蜂や蝶がやってくる。芥川龍之介の句に
鉄条に似て蝶の舌暑さかな 龍之介
蝶の舌はゼンマイのように丸まっていて、蜜をすうとき、すっと伸ばして花芯に差し入れるらしい。作者は、蝶の生態をよく観察してこの句を詠んだ。いっぱいの太陽の光のなかに、機械的な管のような吸い口を持った蝶の存在。そこに、やりようのない夏の暑さが映しだされる。
俳人たちも、夏の暑さにはじっと耐えるよりほかはない。村上鬼城はその暑さをこんな風に詠んでいる。
念力のゆるめば死ぬる暑さかな
一瞬の気のゆるみで、命を奪われしまうような暑さ。夏の暑さをこんな風に詠みながら耐えていく覚悟を示した句だ。「心頭を滅却すれば火もまた涼し」という格言もある。今日は立秋。この暑さも、すぐに秋の涼しさがとってかわる。