山中独居。人間が一人で、山中の庵で暮らすこと、その生きざまを良寛は見せてくれている。人間が生きている喜びは、一人で暮らしながらも、乞食して触れ合う人、山中で遊ぶ子らとのふれあいの中にやっと見出すことができる。国上山の五合庵が雪に閉ざされるころ、良寛の暮らしは、真の意味で孤独になる。
わが宿は越のしら山冬ごもり往き来の人のあとかたもなし 良寛
12月から3月までの4ヶ月、越後の出雲崎にある国上山は深い雪に閉ざされる。この庵で、秋の間に集めていた薪を焚き、里を托鉢して蓄えた米を炊いて過ごす。もう、ここを訪れる人もいないなかで、来る春をじっと待つ。時に筆を持って、歌をつくり詩を詠む。良寛の詩歌には、孤独のなかで己を見つめた人にしか出来ない詩境がある。
水やくまむ薪や伐るらむ菜やつまむ朝の時雨の降らぬその間に 良寛
冬に備えるために、時雨れる日にはじっとしていることはできない。短くなった冬の日は、一日になすべきことが山のようにある。これからは、来る日もまた来る日も雪が降り積もる日が続く。良寛の国上山での山中独居は20年の長きに及んでいる。