外は霙もようの冷たい風。室内に取り込んだ観葉植物の葉は、緑の輝きを日に日に増していく。山の木々は、すっかり葉を落として、眠りについたであろう。目を閉じれば、裸木の辛夷には、幾百ともない純白の花を枝いっぱいに咲かせている。
幻の辛夷かがやく枯木なか 角川源義
角川書店の創始者である角川源義は、国文学者であり、俳句を嗜んだ。句集「西行の日」は1975年の読売文学賞を受賞した。この人が幻想した辛夷は、かって残雪の山に咲き誇っていたあのこの世の花とも思えない、私が見た純白の花と同様のものであったろうか。