常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

桃伝説

2020年04月18日 | 
今日は雨模様。昨日まで続いた晴天で、矢継ぎ早に花が開く。桜が散った後に咲く筈の桃も、きれいな花を見せた。桃は中国で特に珍重される。桃源郷の話は、以前にここで書いたような気がする。地上に桃の種をもたらしたのは、かの孫悟空である。天上界で不老不死といわれる仙桃を食べ、そこの桃畑を荒らしまわって地上に追放された孫悟空は、地上の猿たちに仙桃を食べさせようと歩き廻っている内に、桃の種を2個無錫の太湖の辺に落とした。

そこで芽を出し、大きくなったのが仙桃の木に実がなった。地上でも仙桃の美味しさは変わらない。二人の天女が鳳凰に乗って、この桃の木に舞い降りてきた。天女はこの木の下で倒れている老人をみつけた。二人は籠に一個づつ仙桃を採り、それを倒れている老人に食べさせた。何としたことであろう、老人はたちまち目を覚まし、しかも若返ったのだ。天女からその訳を聞いたが、口外はしないようにと仙桃の秘密を教えた。

近くに住んでいた大地主が、老人が若返ったのを不思議がり、しきりにその訳を訊ねた。あまりのしつこさに、とうとう仙桃の秘密を漏らしてしまった。大地主はさっそく2本の桃を自分の屋敷へ移し植えた。ところが、桃は土に馴染まず、数日のうちに枯れてしまった。怒った大地主は老人を、といっても若返った姿だが、村から追放してしまった。だが追放された老人には、食べた後、大事に残していた仙桃の種が2個あった。近くの山に植えて故郷に残した。これが、水密桃の種である白鳳桃と白花桃として伝わることになった。このうち白鳳桃は、海を渡って日本に渡来した。

ただひとつ惜しみて置きし白桃の
 ゆたけきを吾は食ひをはりたり 茂吉

斎藤茂吉は白桃が大好物であった。ウナギ好きは有名な話だが、好物の食べ物をひそかにしまっておくのは茂吉の習性であった。目を閉じて、そのおいしさを堪能している茂吉の姿が目に浮かぶ。昭和14年の作である
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