クロモジ
2020年04月15日 | 花
クロモジの花は可憐だ。ヤマザクラが咲いて、クロモジの花の脇に、葉が顔をのぞかせてきた。昨日登った千歳山で、いまが見ごろである。あまり山歩きをしない妻がこの花を知っているので聞いてみると、以前やっていた生け花の花材に使ったということである。なるほど、この花を花材として使えば、いい生け花になるような気がした。お茶のお供に食べる和菓子には、クロモジという爪楊枝がついている。一部分皮を残して削った高級な爪楊枝だが、やはりこの木を利用する。
クロモジはクスノキ科の低木である。クワオルトで山を歩いたとき、リーダーがこの木を見つけ、折って匂いを嗅いでみるようにと手渡してくれた。ちょっと表現は難しいが、特有の爽やかな香りであった。この仲間には、ニッケイやシナモンなどがあり特有に香りがありお菓子の香りづけに利用されている。樹皮には地衣類が付着したと見られる黒い模様がある。このためにクロモジという名がついたのであろうか。
信州や東北の農村では、この材料を削る楊枝作りが冬の手仕事であった。機械化している時代にこうした手仕事の物があるのはうれしい。
木の香りは、それを食材とする特有の生きものが集まる。自然の不思議だ。クスノキの葉には、クスサンという蛾が集まる。クスノキの葉を食べる蚕という意味だ。葉に粗い網状の繭を作り、中のサナギが外から見える。この繭の糸は丈夫で、テグスといい、釣りの糸として利用されてきた。化学繊維の出る前の釣りは、こうした天然のものを使っていた。