
今日小寒、いわば寒の入りである。2週間後には大寒を控え、一番寒い季節がやってきた。列島の東西、日本海側では雪、太平洋側では乾燥期である。低温と乾燥、コロナやインフルエンザ菌が活発になる条件でもある。寒は厳しい季節に違いないが、雪国の人はそれを受け入れ、逆手にとって楽しんでいる人もいる。昨年の冬に雪がなかったので、積雪を喜ぶ向きも多い。今年は、どのスキー場も、雪に関しては心配はない。
白菜の沁みるしたじや寒の入 神保愷作
昨日、テレビで山形郊外の山中で、雪中のソロキャンプを楽しんでいる人たちが紹介されていた。テントの内には暖をとる薪ストーブ、外には料理用の器具を持参して雪上ではなければできない料理を楽しむ風景があった。中でも桜の薪の上でつくるスモーク料理。野菜も肉も、桜のスモークでしっかりと焙られて、いかにも美味しそうな料理である。キャンパーが口を揃えて言うのは、「静か」だということだ。しんしんと降る雪の音のほかにには、鳥の声も絶えているのであろう。街では出会えない異界が、すぐ近郊の山中にある。
同じ雪中の暮らしでも、良寛が越後の国上山中腹の五合庵で過ごすした冬は、想像をこえた厳しいものがある。雪が深くなると、雪を踏んで庵を訪ねる人も絶えてしまう。そこで一冬を越すためには、暖や調理のための薪の用意、そして何よりも飢えをしのぐに足る食料。
うづみ火に足さしくべて臥せれども
こよひの寒さ腹にとほりぬ 良寛
厳しくそして寂しい一人暮らし日が長いほど、春を待つ心の期待は深まる。そして春を迎える歓びそれだけ大きくなる。良寛の歌や詩の深さは、この越後の厳しい冬のなかで得られたものだ。