秋の陽ざしに誘われて、棚田のある飯田の山手へ行ったきた。旧蔵王工業高校を田圃道に沿って歩いた。久しぶりに見る棚田は、刈り取りを殆ど終えている。2、3年前であれば、稲架が作られ、稲を乾燥する風景が見られたがもうその姿はない。コンバインで刈り取ると、その場で脱穀され、米だけが運ばれていく。棚田の秋も、私の年代の者にとっては淋しい景色になっていた。
日の縁をしづしづすすむ稲刈機 坂巻純子
この道は、まだ会社勤めをしている30年も前、出勤前のウォーキングで毎朝歩いた道である。田は所々耕作を放棄した跡も見えている。道端にあった、野菜や果樹の畑も、手を入れる人もなく、雑草が茂っている。
以前からあったリンゴ畑には、今年もたわわに実をつけている。秋が深まり、日をうけた赤いリンゴは、日に日に甘味が増していく。今年は台風が多く発生しているが、この地方はその影響を免れて落果もせずに収穫の時を待っている。リンゴ畑の脇を小川が流れている。田の水はこの小川が引かれているのだろう。
この道を通ううちに、畑で働く人たちとも顔見知りになった。今日歩いても、もうその人たちの顔は見えない。どうしているか、気になる。今の自分にできること。毎日身体を動かすことを習慣にする。「運動のみが精神を支え、心の活力を保つ」古代ローマの政治家キケロの言葉を反芻しながら、秋を歩く。スマホのえも子ちゃんからの励ましの言葉を聞くことも継続のモチベーションになる。
道ばたのあちこちに、雪のような白い花が目をひく。グーグルレンズが夏雪カズラであることを教えてくれる。この花は、秋の花とは言い難い。6月から10月の、むしろ夏を中心に咲く花だ。花言葉が、「この冬に咲くはずの雪」とある。今日の散歩の収穫、またひとつ覚えた新しい花の名。