常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

秋の歌

2022年10月29日 | 日記
俳人の長谷川櫂に『日めくり四季の』がある。かって日本の家庭にはどこの家にも日めくりがあった。365日、大きく日にちがあり、干支や六曜などの暦にその日の格言などが書かれていて、朝新しい日をめくると何か新しい気分になったものだ。長谷川はこの本で、その日の一年分のうたを入れて言葉を添えている。季節感と人の暮らしの匂いが立ち上がってくる。時々、この本を手にとると、自らの体験と重なることもあって驚かされる。

秋の山ところどころに烟たつ 暁台

暁台は江戸時代の俳人だが、詠んだ山村の景色は今も変わらない。稲刈りの済んだ田では、モミや稲わらを焼く烟が立ち上がる。先日、山登りで通った山近くの田では烟が見え、江戸から続く山村の景色が懐かしかった。

10月の日めくりには、悲しいうたも見える。

秋山の黄葉を繁み惑ひぬる妹を求めむ山道知らずも 柿本人麻呂

柿本人麻呂が妻を亡くしたときに詠んだものだ。霊となって、黄葉の山へ上がって行くのだが、人麻呂には妻の霊が道に迷っているのではと心配する。妻を探しに行こうと思うのだが、その道さえ自分には分からないと悲嘆にくれている。一日一詩、日付を見ながら開くページに人間の哀しみや喜びが詰まっている。
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