
俳人飯田龍太は甲府盆地の境川村に生まれ、甲斐の山々を見ながら育った。山地の自然を友として、俳句に親しみ、四季の句を創った。同じ山国に生きるものとして、龍太の句には、共感を覚える句が点在する。12月の句に
師走はや山の素ごころさだまりし
「山の素ごころ」という表現がこの句の肝になっている。冬に空気が澄んで、木の葉が落ち、尾根の凹凸がくっきりと目に飛び込んでくる。葉の繁みがかくしていた山肌の本来の姿を素ごころと、したのであろうか。甲斐の山々の存在のありようというのが定まってくる。この地に住むものの目に映る山の姿であろう。高い山はすでに白い雪を被り、前山は枯木一色である。
人間世界の活動が師走という季節に慌ただしく過ぎていくなか、どっしりとした山の新しい年を迎える姿とが対比されている。山に見守られながら、今年も暮れていく。