7月22日の14時に、ミモロは、祇園祭の「大船鉾」の会所へと向かいました。この日は、ミモロはボランティアではなく、ひとり(1匹)の見物人として出かけました。
というのは、「ミモロちゃん、14時から特別な神事が行われるから、来たら~」とお友達に教えてもらっていたからです。
「どんな神事なんだろ?」とミモロは、ワクワクしながら出かけました。
その神事とは、「大船鉾」のご神体、神功皇后さまへ、剣鉾を奉納するのです。

会所に到着すると、「あれ?粟田神社の剣鉾の差し手の荒井さんがいる~」

この日、「大船鉾」の前で、東福寺駅のそばにある「瀧尾神社」の剣鉾の差し上げが行われました。

「瀧尾神社」は、「源平盛衰記」にもその名が記される歴史ある神社。ミモロも以前、伺ったことがあります。その拝殿の天井には、無垢材を使った全長8メートルの巨大な龍の彫刻があり、その大きさは、日本1といわれる立派なもの。
「大船鉾」の先端には、大きな御幣が飾られていますが、江戸時代の絵には、りっぱな龍頭が鉾を飾っていた姿が残っています。幕末の蛤御門の変で焼失した「大船鉾」ですが、その懸想品などは、分散して保管していたため、御幣などは焼失を免れました。巨大の龍頭も、分解して保存されていたと想像されることから、どこかに残っているのではと…。でも、今は行方不明です。
船体の復活に伴い、龍頭を復活させようと四条町の人たちは、この「瀧尾神社」の寄進などを賜りながら、来年に向かい、龍頭の復活を目指しているのです。
そこで、今回、「瀧尾神社」との新たなご縁より、剣鉾の奉納をすることに…。
「あ、始まった~」。新町通に剣鉾が差し上げられます。


剣鉾は、神輿の進む道を清める役割があり、つまり祇園祭の華やかな山鉾のルーツは、この差し手ひとりが差し上げる剣鉾にあるといわれます。
「大丈夫かな~。この通りすごく狭いし、電線いっぱいあるし~」と、ミモロは、そばで心配そうに見守ります。


観光客の多く、また地元の人でも、剣鉾を見るのは初めてという方も大勢。山鉾町にカーン、カーンと鈴の音が響きます。
「大船鉾」の周囲を2周する剣鉾…「なんか空模様が怪しい…」とミモロが思うと間もなく、パラパラと雨が降ってきました。

剣鉾の差し手は、一途に棹の先端の剣と鈴を見つめて、バランスと保ち、体を上下させ、鈴を棹にぶつけて音を出しながら移動します。しだいに雨が強くなってきました。雨が、容赦なく差し手の顔に降りますが、バランスを保つためには、目を閉じることはできません。


「あ、危ない~」ただでさへ、狭く電線の多い新町通。大船鉾の屋根も張りだし、剣鉾が通れるスペースはごくわずかです。

「わ~みんなビショビショになってる…」顔に降る雨をぬぐうこともできません。

ようやく、剣鉾の差し上げが終了した途端、さらに激しい雨が…。


剣鉾を下ろし、棹から外す作業も一苦労。差し手の人たちは、シャワーを浴びたように、全身びっしょり。
「雨の日の神輿や山鉾の巡行も大変だけど…ずっと空を見上げていなくちゃいけない剣鉾って、すごく大変だね~」とミモロ。
神事ですから、どんなに雨が降っても、途中でやめることができません。
剣鉾の差し手の皆様、お疲れ様でした。
「でも、鉾と剣鉾が一度に見られるなんて思わなかった~」と、感激したミモロです。

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