西陣の千両ヶ辻は、かつて毎日千両の商いが行われたという西陣繁栄の中心地。
そこに明治10年創業の「箔屋野口」は、金糸、平金糸の製造を長年手がける老舗です。
金糸を扱う店を示すように、玄関には、金糸を巻いた糸巻が。
室内に進むと、「なんかキラキラまぶしいねぇ」とミモロは、目をパチパチと…。
金箔を使った作品が多数並んでいます。
「うちの仕事がわかるものをお見せしましょう」と野口さんご夫妻。
お座敷で、ミモロの前には、金色に燦然を輝く帯が桐の箱から出されました。
「わー、まぶしい!全面が金色に輝いてるー」
この金色の帯を作るのに、使われるのが平金糸です。
「平金糸って、なあに?」ミモロは、初めて聞く言葉に首をかしげます。
平金糸には、西陣の帯などに平面のまま織り込まれる糸のこと…。
その糸の素材は、三俣などの繊維を漉いた和紙です。
「え?どういうこと?」とミモロは、全く想像できません。
まず、金糸の帯をよく見ると、金色の地の部分にニュアンスのある模様が見えます。
その模様は、予め、和紙に漆を引き、その上に金箔や銀箔、プラチナ箔などを一枚一枚のせ、まるで絵のようなものを作ります。箔の微妙なニュアンスの違いで、作品の表情も異なる熟練した技が必要な作業です。
「このまま額にいれても、ステキなアートだね」とミモロ。
「箔屋野口」で作られるこの箔を押した和紙が、帯のベースのデザインと輝きになります。
「えー、まだよくわからない…糸はどうするの?」
次に、それを、細く裁断して、金糸を作ります。
裁断は、専門の職人さんが手掛けるもので、まるで絹糸のように細い糸状に。それが平金糸です。
「え、紙の糸なの?」そう、でもしっかりとした和紙に漆と金箔などがのった糸となるので、普通の和紙の糸とは違います。
そして、絹の金糸を縦糸に張った織り機で、横糸として、この平金糸を一本一本渡して織ってゆきます。
「順番間違えたら、模様が変になっちゃうの?キャー大変…」アバウトなミモロには想像すらできない、気の遠くなるような緻密な作業です。
「スゴーイ!帯って、絹だけじゃなくて、紙でできてるんだー」それ以上言葉が出ないミモロです。
まばゆい輝きで、辺りをも明るくするような見事な金糸の帯。
「金襴緞子の帯締めながら…の花嫁さんの帯?」まぁそうかも・・・でももっと高級品です。
金箔などを施された平箔は、数枚つなぎ1本の帯になります。縦糸の幅もあるので、描かれる意匠は、帯として完成した姿を想像して意匠が施されるそう。
「わー織り跡が付いちゃうから、帯を結ぶのがもったいー」と、なかなか和服に詳しいミモロ。紬の帯のように、縛っても、伸ばせば元通りという訳にはゆきません。
まさに美術品的な帯です。
さすがのミモロも、このあまりに豪華な帯を前に、欲しいとは口にしません。よかったー。
さて、帯を拝見したミモロは、お座敷に並ぶ箔を使った箔画と呼ばれるアート作品に興味津々。
「なんかヨーロッパの香りがするー」と、確かにイタリアやウィーンなど貴族のお屋敷にある装飾を思わせます。
ここに並ぶのは、4代目の野口康さんと息子さんの野口琢郎さんの作品。伝統の箔の技を現代アートへと発展させた作品が並びます。
ライブラリーの壁面には、クリムトの絵画をモチーフにしたお二人の作品が。
さまざまな美術作品の修復なども手掛けていらっしゃる野口康さん。またNYなどでの個展も評判に。
息子さんの野口琢郎さんも、箔画の個展をいろいろなさっていらっしゃりその作品は、注目を浴びています。詳しくは、ホームページをご覧ください。
「また、ゆっくり見学に来てもいいですか?」とすっかりここが気に入ってしまいました。
伝統の技を見事なアートにする箔画。今や京都の伝統の技は、国内よりむしろ海外での注目度が高いよう。一流の作品は、いずれもどこか共通するセンスが漂い、その魅力に惹きこまれてしまいます。
*「箔屋野口」京都市上京区元誓願寺通大宮西入ル元妙蓮寺町546 電話075-415-1150 10:00~16:30
見学には、事前の予約が必要。不定休。ギャラリーに展示された作品は、購入も可能です。
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