市民タイムスの2019年4月12日の記事に、
「5月からの新元号が「令和」に決定されたことを受けて、松本市立博物館は館内1階ロビーに、明治から平成にかけての各元号と「令和」の出典となった日本と中国の古典書籍を紹介する展示コーナーを設けた。中国古典の教科書や、令和の典拠となった万葉集の研究者でもあり、同市和田出身の歌人・窪田空穂の著作などを並べている。5月12日まで。「明治」と「大正」の出典元となった「易経」と、「昭和」「平成」の出典元の「書経」、平成の別の出典元とされる「史記」の書籍と該当箇所をそれぞれ展示する。「史記」(個人所蔵)以外の書籍はいずれも、本年度から博物館分館として27日に新装開館する旧山辺学校(里山辺)の倉庫から5日に見つかったばかりの資料で、教科書に使われたとみられる。」
とありました。
遅ればせながら見に行ってきました。
明治に関しての資料。
元号明治の出典
『易経』説卦
引用文
「聖人南面而聴天下、嚮明而治」
書き下し文
聖人(せいじん)南面(なんめん)して天下に聽(き)く、明に嚮(むか)いて治める
意味
聖人が南面して政治を聴けば、天下は明るい方向に向かって治まる
大正に関しての資料。
元号大正の出典
『易経』「彖伝(たんでん)・臨卦(りんか)
引用文
「大亨以正、天之道也」
書き下し文
大いに亨(とほ)りて以て正しきは、天の道なり
意味
天が民の言葉を嘉納(聞き入れる)し、政治が正しく行われる
昭和に関しての資料。
元号昭和の出典
『書経(しょきょう)』尭典(ぎょうてん)
引用文
「百姓昭明,協和萬邦」
書き下し文
百姓昭明にして、萬邦を協和し
意味
人々が、それぞれ徳を明らかにすれば、世界の共存繁栄が図られる
平成に関しての資料。
元号平成の出典
①『史記(しき)』五帝本紀(ごていほんき)
②『書経(しょきょう)』大禹謨(だいうぼ)
引用文
①「内平外成」
②「地平天成」
書き下し文
①内(うち)平(たいら)かに外(そと)成(な)る
②地(ち)平(たいら)かに天(てん)成(な)る
意味
国の内外、天地とも平和が達成される
令和に関しての資料。
元号令和の出典
『万葉集』巻五「梅花の歌32首・序」
引用文
「初春令月、氣淑風和、梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香」
書き下し文
初春(しょしゅん)の令月(れいげつ)にして、気淑(きよく)風和(かぜやわ)らぎ、梅(うめ)は鏡前(きょうぜん)の粉(こ)を披(ひら)き、蘭(らん)は珮後(はいご)の香(こう)を薫(かおら)す
意味
正月の善い月、空気は美しく風はやわらかに、梅の花は、美女が鏡の前で白粉を装うようで、香草は、身を飾った帯のお香の如きかおりをただよわせている
(参考:窪田空穂『萬葉集評釋 第4巻』)