2週間ぶりのブログだ。
季節の移ろいは、実に早い。
当地の紅葉は最終盤になった。
東山の裾に広がる唐松の林が橙色を残すだけに・・。
つい先日、地元新聞の記事に、
大きく『花壇じまい』の文字があった。
「花壇じまい・・・、何のこと?」。
私には、聴きなれない言葉だった。
街角を飾った花壇を整地し、
雪の季節を迎える作業のことらしい。
案の定、市内の小さな公園や道路脇の花壇、
そして各家庭の庭から草花が無くなっている。
気づくと、マイガーデンも同じだ。
黄や赤に染まった葉が、枯れ葉色に変わる。
その順に、ハサミを入れ刈り取ってきた。
今は、緑の葉をわずかに残す白蝶草と、
やや黄色みを増した西洋ススキだけが残っている。
わが家でも「花壇じまい」をしていたのだ。
さあ、まもなく初雪。
その先は水墨画のような日々が来年4月まで続く。
毎年のことだが、「冬だからこそ」の光景に心動かし、
寒さを超えたいと思う。
さて、その前に・・・。
秋の最中、朝ランのコースで目にした花や木が、
それらに興味薄だった現職時代の甘酸っぱい想いを蘇らせた。
① 「あれは個体差です」
高速道の伊達IC出入口から、
片側2車線の直線道路が海に向かって延びている。
その両側は、1キロ以上にわたってイチョウの街路樹だ。
市内の何カ所かには大きなイチョウの木がある。
だが、イチョウ並木はここだけだ。
光りを浴び黄色く色づいた歩道を走るのは、
この時期だけの楽しみである。
今年も、そこを走りながら思いだした。
6年生を担任していた。
秋の社会科見学は、貸切バスで都内巡りだった。
国会議事堂や最高裁判所など、都心の公共施設を見てまわった。
バスの中では、ずっと校長先生と最前列に座った。
バスガイドさんの案内が切れた時など、小声で会話した。
北の丸公園辺りのイチョウ並木が、色づき始めていた。
車窓からのイチョウは、隣同士の樹でも紅葉の進み具合が違っていた。
「すぐ隣なのにどうしてあんなに違うのでしょうね。」
理科教育が専門だと聞いていた校長先生に、尋ねた。
「隣りと言っても、やはり日当たりも違うし、生育条件が異なるんですよ。
だから、紅葉のスピードも変わるんだよ。」
明快な回答に私は納得した。
バスの中でのイチョウのやり取りはそれで終わった。
ところが、翌日のことだ。
授業中だった。
教室の前方ドアが突然ノックされた。
授業を中断し、私がそのドアを開けた。
驚いたことに校長先生が立っていた。
何か重要な知らせのように思い、
そのまま廊下に出て、教室のドアを閉めた。
校長先生は、やや緊張した顔をして、
私をのぞき込んで言った。
「昨日、バスの中で話したイチョウのことだけどね、
あの違いは、日当たりなどではなくて、
あれは、個体差です。
ほら体の大きい子もいれば、
小さい子もいるのと同じです。
訂正しておきます」。
そこまで言うと、私の返事を待たず、
校長先生は早足でその場を去っていった。
唖然としたまま、私は廊下で後ろ姿を見送った。
彼にとって、きっと重大な間違いだったのだろう。
でも、私には授業中のドアをノックするまでの重大さが、
今も、どうも・・理解できない。
② 「エッ! キバナコスモスも・・!」
校長として最後に赴任した小学校には、
幼稚園が併設されていた。
なので、私は園長を兼務した。
校庭を挟んで、校舎と幼稚園舎があった。
日に何度か校庭を横断して、校長と園長の職を勤めた。
時には、校長室の窓から、校庭越しに幼稚園の様子を伺った。
赴任した最初の年、春の終わり頃だった。
園児が帰宅した午後、園舎を囲んだ花壇で、
先生と職員が何やら土いじりをしていた。
その作業は、2,3日続いた。
校長室からそれを見ながら、
あの花壇も幼稚園では大事な学習の場になるのだろうと、
思った。
花壇は、次第に緑を増した。
そして、黄色い花を数多く咲かせたのは、秋になってからだった。
園舎をぐるっと可憐な黄色が彩り、華やかだった。
春の先生たちの頑張りを賞賛したかった。
なので、幼稚園ではリーダー格の先生に、
花壇の前で、そっと尋ねた。
「ねえ、この黄色い花の名前、なんて言うの?」。
相手が、悪かった。
彼女は、目を丸くして私を見た。
そして、
「えっえ~っ、園長先生って・・、
キバナコスモスも知らないんですか!」。
「うん」。
私は、うなずくしかできなかった。
彼女は、追い打ちをかけた。
「ホントに、知らないんですかぁ。キバナコスモス!」。
彼女の驚きは尋常ではなかった。
それどころか、私は恥ずかしい思いと、
屈辱を味わっていた。
無知をストレートに批難されたように思い、
傷ついてしまった。
だから、幼稚園の先生たちには、
キバナコスモスを賞賛しないまま、押し黙った。
今年も、ご近所の花壇の一角に、
キバナコスモスを見つけた。
とたんに、『・・・も知らないんですか!』が、
脳裏を走った。
やっぱり胸が痛んだ。
今朝 有珠山に初冠雪
季節の移ろいは、実に早い。
当地の紅葉は最終盤になった。
東山の裾に広がる唐松の林が橙色を残すだけに・・。
つい先日、地元新聞の記事に、
大きく『花壇じまい』の文字があった。
「花壇じまい・・・、何のこと?」。
私には、聴きなれない言葉だった。
街角を飾った花壇を整地し、
雪の季節を迎える作業のことらしい。
案の定、市内の小さな公園や道路脇の花壇、
そして各家庭の庭から草花が無くなっている。
気づくと、マイガーデンも同じだ。
黄や赤に染まった葉が、枯れ葉色に変わる。
その順に、ハサミを入れ刈り取ってきた。
今は、緑の葉をわずかに残す白蝶草と、
やや黄色みを増した西洋ススキだけが残っている。
わが家でも「花壇じまい」をしていたのだ。
さあ、まもなく初雪。
その先は水墨画のような日々が来年4月まで続く。
毎年のことだが、「冬だからこそ」の光景に心動かし、
寒さを超えたいと思う。
さて、その前に・・・。
秋の最中、朝ランのコースで目にした花や木が、
それらに興味薄だった現職時代の甘酸っぱい想いを蘇らせた。
① 「あれは個体差です」
高速道の伊達IC出入口から、
片側2車線の直線道路が海に向かって延びている。
その両側は、1キロ以上にわたってイチョウの街路樹だ。
市内の何カ所かには大きなイチョウの木がある。
だが、イチョウ並木はここだけだ。
光りを浴び黄色く色づいた歩道を走るのは、
この時期だけの楽しみである。
今年も、そこを走りながら思いだした。
6年生を担任していた。
秋の社会科見学は、貸切バスで都内巡りだった。
国会議事堂や最高裁判所など、都心の公共施設を見てまわった。
バスの中では、ずっと校長先生と最前列に座った。
バスガイドさんの案内が切れた時など、小声で会話した。
北の丸公園辺りのイチョウ並木が、色づき始めていた。
車窓からのイチョウは、隣同士の樹でも紅葉の進み具合が違っていた。
「すぐ隣なのにどうしてあんなに違うのでしょうね。」
理科教育が専門だと聞いていた校長先生に、尋ねた。
「隣りと言っても、やはり日当たりも違うし、生育条件が異なるんですよ。
だから、紅葉のスピードも変わるんだよ。」
明快な回答に私は納得した。
バスの中でのイチョウのやり取りはそれで終わった。
ところが、翌日のことだ。
授業中だった。
教室の前方ドアが突然ノックされた。
授業を中断し、私がそのドアを開けた。
驚いたことに校長先生が立っていた。
何か重要な知らせのように思い、
そのまま廊下に出て、教室のドアを閉めた。
校長先生は、やや緊張した顔をして、
私をのぞき込んで言った。
「昨日、バスの中で話したイチョウのことだけどね、
あの違いは、日当たりなどではなくて、
あれは、個体差です。
ほら体の大きい子もいれば、
小さい子もいるのと同じです。
訂正しておきます」。
そこまで言うと、私の返事を待たず、
校長先生は早足でその場を去っていった。
唖然としたまま、私は廊下で後ろ姿を見送った。
彼にとって、きっと重大な間違いだったのだろう。
でも、私には授業中のドアをノックするまでの重大さが、
今も、どうも・・理解できない。
② 「エッ! キバナコスモスも・・!」
校長として最後に赴任した小学校には、
幼稚園が併設されていた。
なので、私は園長を兼務した。
校庭を挟んで、校舎と幼稚園舎があった。
日に何度か校庭を横断して、校長と園長の職を勤めた。
時には、校長室の窓から、校庭越しに幼稚園の様子を伺った。
赴任した最初の年、春の終わり頃だった。
園児が帰宅した午後、園舎を囲んだ花壇で、
先生と職員が何やら土いじりをしていた。
その作業は、2,3日続いた。
校長室からそれを見ながら、
あの花壇も幼稚園では大事な学習の場になるのだろうと、
思った。
花壇は、次第に緑を増した。
そして、黄色い花を数多く咲かせたのは、秋になってからだった。
園舎をぐるっと可憐な黄色が彩り、華やかだった。
春の先生たちの頑張りを賞賛したかった。
なので、幼稚園ではリーダー格の先生に、
花壇の前で、そっと尋ねた。
「ねえ、この黄色い花の名前、なんて言うの?」。
相手が、悪かった。
彼女は、目を丸くして私を見た。
そして、
「えっえ~っ、園長先生って・・、
キバナコスモスも知らないんですか!」。
「うん」。
私は、うなずくしかできなかった。
彼女は、追い打ちをかけた。
「ホントに、知らないんですかぁ。キバナコスモス!」。
彼女の驚きは尋常ではなかった。
それどころか、私は恥ずかしい思いと、
屈辱を味わっていた。
無知をストレートに批難されたように思い、
傷ついてしまった。
だから、幼稚園の先生たちには、
キバナコスモスを賞賛しないまま、押し黙った。
今年も、ご近所の花壇の一角に、
キバナコスモスを見つけた。
とたんに、『・・・も知らないんですか!』が、
脳裏を走った。
やっぱり胸が痛んだ。
今朝 有珠山に初冠雪
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