ワンダースター★航星記

写真を撮るとは、決して止まらない時間を止めること。旅や日常生活のインプレッシブな出来事を綴ったフォトエッセイ集です。

「風恋歌」 ~春から夏への短編集

2020-05-22 | 心の旅

「風恋歌」 ~春から夏への短編集
 
            

 綿毛はまるで、ひとつの宇宙。
 そして、風の旅人になる。

            

 「どれくらい、時が過ぎたの?」
 君は今、目覚めたように尋ねた。
 「ほんの千年だよ。
  どうだい、何も変わっていないだろう?」
 君はきょろきょろ、周りを見廻して、頷いた。
 何か少し違うような気がしたが、
 穏やかな春の日差しは確かに、そのままだった。

            

 永い眠りから覚めて、お腹がへったんだ。
 「ねぇ、リス君、こっち、向いてくれる?」
 「えっ?僕は食べるのに夢中さ。ほっといて。」

            

 「吾輩もにゃあ!暑くなると、だらけてしまうんだにゃあ~。
 “オヤジ猫!”なんて、指さされたってにゃぁ、
  にゃんともしがたいにゃぁ~。」

            

 山が燃える!?そんな表現がしたくなる。
 そういえば、燃えるような恋って、何時(いつどき)の事だったろうか。

            

 いつもの散歩道の途中で誰かに呼び止められたような気がして、
 振り返ると、陽光を一杯に浴び、風にそよぎながら、
 君は微笑んでいた。
 「夏を呼んでいるのよ。」

            

 昔、誰かと此処に訪ねてきた。
 誰だったか、なかなか思い出せない。
 そのとき、閑静な庭園に、
 獅子脅しが“カーン”と響いた。 

 「忘れないでよ。」
 突然、あの人の顔が浮かんだ。
 少し、ふくれていた。

            

 毎日のように蝶を追いかけていた少年時代。
 夢はいつか実現できる未来だった。

            

 にゃんこも花見にやってきた。
 しかし、花よりネンコのニャンコです。

            

 ふるさとの駅に降り立った君は
 重い鞄に哀しみがいっぱい。
 僕を見つけると
 「帰ってきました。」って、
 無理して微笑んだ。
 瞳の奥にたたえた
 “AJISAI BLUE”は、もう話す必要ないよ。
 雨の日があるから、晴れてる日が嬉しい。
 涙を流したことがあるから、笑顔が輝く。

 この雨がやんだら、
 古いメモリーは消して、
 また、やり直せるよ。

             

 ステンドグラスの淡い光に、
 過ぎし日の幻影が揺れている。
 森の中の小さな美術館で、
 その画家の想いを
 ゆっくりとなぞってみる。

             

 睡蓮とねむの花が浮かぶ水面に、
 赤とんぼが束の間の休息。

             

 見過ごしそうになる小さな世界でも、
 生命たちは懸命に生きている。
 私たちも今は“今”を
 懸命に生きることしかできない。

 それでいいんだ。それが自然だと思う。


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