「風恋歌」 ~春から夏への短編集
綿毛はまるで、ひとつの宇宙。
そして、風の旅人になる。
「どれくらい、時が過ぎたの?」
君は今、目覚めたように尋ねた。
「ほんの千年だよ。
どうだい、何も変わっていないだろう?」
君はきょろきょろ、周りを見廻して、頷いた。
何か少し違うような気がしたが、
穏やかな春の日差しは確かに、そのままだった。
永い眠りから覚めて、お腹がへったんだ。
「ねぇ、リス君、こっち、向いてくれる?」
「えっ?僕は食べるのに夢中さ。ほっといて。」
「吾輩もにゃあ!暑くなると、だらけてしまうんだにゃあ~。
“オヤジ猫!”なんて、指さされたってにゃぁ、
にゃんともしがたいにゃぁ~。」
山が燃える!?そんな表現がしたくなる。
そういえば、燃えるような恋って、何時(いつどき)の事だったろうか。
いつもの散歩道の途中で誰かに呼び止められたような気がして、
振り返ると、陽光を一杯に浴び、風にそよぎながら、
君は微笑んでいた。
「夏を呼んでいるのよ。」
昔、誰かと此処に訪ねてきた。
誰だったか、なかなか思い出せない。
そのとき、閑静な庭園に、
獅子脅しが“カーン”と響いた。
「忘れないでよ。」
突然、あの人の顔が浮かんだ。
少し、ふくれていた。
毎日のように蝶を追いかけていた少年時代。
夢はいつか実現できる未来だった。
にゃんこも花見にやってきた。
しかし、花よりネンコのニャンコです。
ふるさとの駅に降り立った君は
重い鞄に哀しみがいっぱい。
僕を見つけると
「帰ってきました。」って、
無理して微笑んだ。
瞳の奥にたたえた
“AJISAI BLUE”は、もう話す必要ないよ。
雨の日があるから、晴れてる日が嬉しい。
涙を流したことがあるから、笑顔が輝く。
この雨がやんだら、
古いメモリーは消して、
また、やり直せるよ。
ステンドグラスの淡い光に、
過ぎし日の幻影が揺れている。
森の中の小さな美術館で、
その画家の想いを
ゆっくりとなぞってみる。
睡蓮とねむの花が浮かぶ水面に、
赤とんぼが束の間の休息。
見過ごしそうになる小さな世界でも、
生命たちは懸命に生きている。
私たちも今は“今”を
懸命に生きることしかできない。
それでいいんだ。それが自然だと思う。
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