ツバメ・キッズの旅立ち
町並の軒先をツバメたちが猛スピードで飛び交っていた。
今、まさに、子育ての真っ最中のようだ。
それなのに、一匹のツバメが思案気に停まっていたのが気になったので、声をかけてみた。
「やあ、ツバメさん。みんな、忙しそうに飛び回っているのに、あんただけ、じっと、停まっているね。どうかしたの?」
「人間なんて、わたしらには気にも留めないと思っていたのに、わざわざ、声かけるなんて、あなたも変わっているね。」
「いや、何だか、悩んでいるように見えたから、ちょっと、気になってね。」
「そう、見えるかい?」
「見える!見える!」
「子育てのことでね。」
「子育て!?人間だって、子育ては大変さ。よかったら、話してごらんよ。」
「うちの子たちさあ。すっかり、大きくなったのに、いまだに親のすねかじりばっかり、してねぇ。困ってるんだよ。」
「こりゃまた、人間とおんなじ!ほんとに、ここまで育てたんだから、早く、一人前になって欲しいと思うよね。」
「ほら、奥にいるだろ!なんせ、五つ子だからね。」
「確かにでかい!親より、でかいかも・・・」
「でしょ!それなのに、いつまでたっても、餌ばかり、ねだるんだよ!」
「ほんとだ!また、顔より、でかい口だ!5匹、いっせいに口開けられたら、親もたまらんわな。」
「親は自分が食べる間もないくらい、大忙しさ!」
ところが、次の瞬間だった。
ツバメ・キッドたちが巣から身を乗り出したかと思った瞬間、特急電車のような猛スピードで何処かに飛び去っていった。
鮮やかな突然の親ばなれ!発つ鳥、巣だけを残す。
呆然と見送る親ツバメは、少し淋しそうにみえた。
「あんたが“青い鳥”だってことに、今、初めて、気が付いたよ。」
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