博士は窓の外を指さした。
素粒子の宇宙空間は、地球で観る星空とは大きく違っていた。
そこは光の洪水だったのだ。
あなたは地上から天の川を見た記憶はあるだろうか。暗い夜空の真ん中を、星の集団が輝き、まるで白い川が流れているように見える。街の明かりのせいで、今はそんな星の姿さえ見えないのだが、ブラックホールの空は、そんなものではなかった。
天の川が何百、何千も集まったように、全天に星が密集して瞬き、闇の空間はほとんどどこにも見えなっかった。
「こんな星空見たことないだス」
「やっぱり不気味でヤすな・・・」
白く輝く全天のいたる所から、時々。様々な色の光が点滅している。流れ星のようだが、その光は動かないで一瞬輝くのだ。
「博士、あの光は何ですか」艦長が聞いた。
「あれは素粒子同士がぶつかり合って出している光なんだ。」
「これだけぎゅうぎゅう詰めじゃ、ぶつかりますよね。」ぴょんたが感心したようにつぶやいた。
「ぐうすか、原子は原子核と電子で出来ていると、言ったのを覚えているかね。」
「覚えているだス。ほら、太陽を中心に地球や火星が回っているように、原子核の周りを電子が回っているっていうのだスな。」
「その通りだ。よく覚えていたねぐうすか。」
「眠っていても、頭だけはいいでやスからね、ぐうすかは。」
「当然だス。」ぐうすかが胸を張った。頭の包帯が目に垂れ下がった。
「原子核というのはね、あの素粒子星がいくつも手をつないでできている大きな星のことなのだが、これだけたくさん集まると、お互いにぶつかり合うだろう、もこりん。」
「は、はいでヤす」急に振られてモコリンはちょっとうれしかった。
「ぶつかり合うと、どうなる?ぴょんた。」
「つないでいた手を放して喧嘩になりますね」
「喧嘩はいけないだス」
「みんなで、はないちもんめやったらいいんでヤす」
「艦長はどうだ?」
「ぶつかったら、喧嘩して違うグループが出来るということですか」
「そういうことだ。素粒子の手をつなぐメンバーが増えて、大きな集団になったり、つながるメンバーが変わったりして、新しい原子核が生まれて行くんだ。それがあの光なんだ。」
「なるほど、皆、はないちもんめが好きなんでヤすな、ほら、あそこも、あそこも。」もこりんはたのしそうに点滅する光を探し始めた。もう暗い気分は忘れたようだ。
博士の話はとてもむずかしかった。だがもうみんなはむずかしい話に慣れてしまっていた。
分からないことはそのままにしておいてもかまわない。分からなくったってかまわない。とにかく前に進むんだ。
頭を打ったせいか、今回はぐうすかも眠らずに博士の話を聞いている。
「でも博士、あの光にはいろんな色があるだスが、あれはどうしてだスか。」ぐうすかは眠るどころか、博士に質問し始めた。
「よく気がついたね。色が違うのは、素粒子のメンバーが違うからなんだ。つまりあの様々な光の色は、それだけ種類のちがうたくさんの物質が生まれているということなんだよ。ほら、ここが墓場じゃないってことが分かっただろう。」
博士はゆっくりとかみ砕くようにしゃべった。みんなは途方に暮れたような顔をして、それでもうなずいている。とにかくここは墓場じゃない事だけは分かったのだ。
「先程、星が一生を終えたと言ったね。大爆発があって、星の物質は宇宙に撒き散らされた。その星の一部がここに集まって来ているんだ。分かるかね。死んだと思った星はここで新しい命として生まれ変わっているんだよ。宇宙に、新たな形を生み出そうとして、再生しているんだ。」
「原子と言うのは、世界に形を生み出すための一番小さな材料と言う事なんですね。」
「そうだな。すべての物は原子が集まってできている。だから新しい原子が生まれれば、それだけたくさんの種類の物が形となって世界に現れると言う訳なんだね。」
「博士、原子を積み木に例えるといいんですね。」ぴょんたが得意そうに話に加わって来た。
「ほーう、積み木に例えるとどうなるかね。」
「だからこう言う事でしょう。積み木が一種類だと決まった形しか出来ないけれど、何種類も積み木があれば、それでたくさんの形を作ることが出来るじゃありませんか。」ぴょんたが胸を張って答えた。
「ぴょんた、それは素晴らしい例えだ。偉い偉い。」
博士がほめると、ぴょんたは知らないうちに耳をひらひらさせて宙に浮いていた。
「それにしても博士、原子の世界と言っても、物がみんな空に浮かんでいて、宇宙と似ているのはなぜでヤすか。」
「もこりん、面白い事に気がついたね。これは大変大事なことなんだが、原子の世界の空も、太陽の浮かんでいる空も、みな別々の空じゃない。それはつながった、たった一つの空間なんだ。だからここが宇宙と似ているんじゃなくて、宇宙そのものなんだよ。どこまで行っても空間はただ一つしかないんだ。」
「博士、それは何とも不思議なものですね。」艦長が見知らぬ物を見るような顔付きで言った。
「世界は不思議だらけだね。私達の目にはたくさんの世界が在るように見えているが、実際はただ一つの世界しかないと言うのが私の研究の結論なんだよ。」
いつの間にか、博士の授業のようになってきた。しかし、そんな堅苦しい話にも気づかないくらい、スケール号の窓から見える光景は神秘的で、何とも言いがたい真実の重みがみんなの心を圧倒していた。
「あの星のきらめきをしっかり見ておくがいい。あれこそが世界に形が生み出されて行く最初の産声なのだ。」
全天に点滅する光を見つめながら博士がしみじみ語った。みんなは無心にその空を眺め続けた。
無数の原子が発するエネルギーのために、白と思えた空はうっすらとオレンジ色に染まっていた。
「みなさん、食事でヤすよ~。」
いつの間にか、もこりんがキッチンから食事を運んで来た。もこりんはスケール号の食事係なのだ。
「今日のお昼はなんだス。」ぐうすかが真っ先にテーブルについた。
「もこりん製シチューと、黒パン、子えびのトマト煮でヤす。」
もこりんはレストランのコックさんのように、腕にナプキンをかけてお辞儀をした。
「これは御馳走だ。」
「いい香りです。」
「ありがとう、もこりん。」
「どういたしましてでヤす。飲み物はオレンジジュースに冷たい水もあるでヤす。」
みんなは笑顔で食卓についた。
「さあ、それではみなさん、いただきます!」
「いただきます!」
みんなは一斉に食べ始めた。久しぶりになごやかな食事になった。
つづく
光のうぶ声無限大の光景ですね☆
確かに、宇宙の摂理からいたしましても、
真の意味での消滅はあり得ないと思います。
限りなく0,0000000000000000000000000と
0に接近はしますが、
そもそも0とは、有ると同時に無く無いと同時に有る円相〇
色即是空空即是色螺旋宇宙の象徴形態!
不生不滅永遠エネルギーの象徴だと思います☆♪
もこりん製シチュー、黒パンに子エビのトマト煮も
大変美味しいです ^ ね ^ !
わたくしも、想念口から吸収、頂きましたよ♪
ご馳走さま~~~みなさまに感謝申し上げます☆
スケール号の旅する宇宙は、0と1の間にある存在宇宙です。
限りなく0に近づく極小の世界と、限りなく1に近づく極大の世界。
それが存在の真実。
その全体像を認識するためには、スケールの概念が必要なのですね。
「色即是空空即是色螺旋宇宙の象徴形態!
不生不滅永遠エネルギーの象徴」
それは「0」と「1」があって、その隙間に成り立つのです。
限りなく0に近づくが0ではない。
限りなく1に近づくが1ではない。
五次元の世界観です。
のしてんてん博士の講義より。^で^し^た^¥