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五、チュウスケの復讐(1)

2016-08-22 | 童話 スケール号の冒険(第4話)

 

           五、チュウスケの復讐

 

 パルサー星の背後に巨大な黒い影があった。注意深く見れば、パルサ星の向こうに広がっている星空が、奇妙な形に切り抜かれたように見えているのに気づいたはずだ。

  その影の部分だけ、まさに星空を切り抜いたように真っ黒な形を作り出しているのだ。そしてその形は、巨大なネズミの輪郭を描いていた。その黒い影はチュウスケだった。

  「今に見ていろチュウ、スケール号め、今度こそ宇宙のちりにしてやるだチュウ。」

  チュウスケはニヤリと笑った。

 チュウスケはネズミで、魔法使いの大怪盗、どこにでも出没して悪事をたくらむ。

  しかし、その度にスケール号に阻まれて悔しい思いをして来たのだ。機会さえあればスケール号をやっつけてやろうと、チュウスケの思いはますますつのっていき、今や巨大な星をしのぐ大きさになっていた。

  チュウスケはここでスケール号を待ち伏せしていたのだ。

  長い間、スケール号の様子をうかがいながら宇宙を漂い、チュウスケはようやくチャンスをつかんだ。

 スケール号はまだ気づいていないが、チュウスケには大きな切り札があったのだ。それはチュウスケの後ろに隠されている漆黒の穴、ブラックホールだった。

  ブラックホールと言うのは、宇宙に出来た大きな穴のことで、そこに落ち込んでしまうと、光さえ外に出ることが出来ないと言われている、魔の空間なのだ。

  そこでは強い力が働いていて、その穴に飲み込まれたものはどんなものでも、その圧力によって、跡形もなく押し潰されてしまうのだ。

  ブラックホールに飲み込まれたものは、一生そこから逃げ出すことが出来ない恐ろしい宇宙の穴、そんな不気味な真っ黒い空間がチュウスケの背後にぽっかり口を空けているのだった。

  チュウスケはその穴に、スケール号を誘い込もうと企んでいるのだ。

 「今度こそ思い知るがいいだチュ。」

  チュウスケはおもむろにパルサー星をつかみ、パルサー星から出ているレーザー光線を剣にしてスケール号に挑みかかって行った。

  「艦長、パルサーの光線がこちらに向かって来ます!」ぴよんたが耳をピンと張って叫んだ。

  「何!」

 「危ないでヤす!」

 「スケール号、横に飛んで光線を避けろ。」

 「ゴロニャーン」

 スケール号はヒラリと身を横に移して、パルサーの一撃をかわした。パルサー星の向こうに、巨大な影が見えた。その部分だけ星のまたたきがなく、漆黒の闇になっていた。それは見たことのある形をしていた。

 「あっ、あの影はネズミでヤす。」もこりんが叫んだ。

 「艦長、もしかしてあれはチュウスケネズミではないだスか。」

 「あるいはな。」艦長が巨大なネズミの影をにらみつけた。

 「チュウスケ、こんな所にいたのか。」ぴょんたが、耳をいなずまのように、曲げて叫んだ。

  「チュハハハハ、待っていたぞスケ-ル号、こんどこそ終わりだチュウ。」

  ヒラリと、かわしたスケール号を、今度は左から、パルサーの剣が、襲い掛かった。

  スケール号は大きく横に回り込んで、パルサーの剣先をかわしながらチュウスケに接近した。

 すると、パルサーの反対側の剣がスケール号を迎え撃った。

  「艦長、前から来ます!」

  「スケール号飛べ!」

  「ゴロニャーン」

  スケール号は真っすぐ上に飛んで、そのままチュウスケを飛び越えた。スケール号はチュウスケを真下に見たとき、ビームを発射した。チュウスケは前に飛びのいてスケール号の攻撃をかわし、パルサーの剣を大きく振り回した。

  スケール号とチュウスケはそのまま体を入れ替えた。チュウスケの背後に隠れていたブラックホールの不気味な丸い口が、今度はスケール号の後ろになった。

  チュウスケはパルサーの剣を車輪のようにくるくる回し始めた。パルサーの両刃の剣はだんだん勢いをつけて、ぶんぶんプロペラのように回りだし、宇宙空間に果てしなく大きな円盤の壁を作り上げたのだ。その円盤がじりじりスケール号に迫ってくる。その度にスケール号は後ろに下がった。

  「スケール号、出来るものならこのパルサーの剣の壁を破って見るのだな、チュウチュウ。」

  チュウスケは巧みに、スケール号の注意を前のほうに引き付け、じりじりとスケール号を背後に押しやって行った。そこにはブラックホールが、ぽっかりと不気味な口を開けて獲物を待ち構えているのだ。スケール号はそれを知らない。

  ぐるぐる振り回すパルサーの剣はスケール号に逃げ場を与えなかった。スケール号が動けるのは後ろにさがるだけだった。

  後ろにさがりながら、スケール号は二発目のビームをパルサーの中心を目がけて発射した。しかしそれはいとも簡単にパルサーの剣の壁に跳ね返されてしまった。

  「ばかめ、むだだチュウ。そんなものでこのパルサーの両刃の剣を破れると思うチュウのか。」

  チュウスケはスケール号を挑発しながら前に踏み出して来る。そして巧妙にスケール号をブラックホールの方に追い詰めて行った。

  だが、艦長以下乗組員の全員がパルサーの剣に気を取られていた。まさにその背後にブラックホールの真っ黒な口が迫っている。その魔の穴の引力がすでにスケール号を捕らえ始めていた。スケール号の計器類が最初は気づかないほどに、やがて少しずつ震え始めたのだ。

  「艦長、何かおかしいでヤす。」

 もこりんが言ったその時、ぐるぐる回るパルサーの剣のすき間をぬってチュウスケの渦巻攻撃が飛び出して来た。

  「死ね、スケール号!」

 

つづく

 

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6 コメント

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☆ピンチはチャンス♪ (真鹿子(まかこ))
2016-07-17 04:37:17
宇宙巨大マウスチュウスケ登場!!
大変(((((((・・;)なことになりました


それにいたしましても、
お嬢姫女神さまの、
指名手配画チュウスケの愛らしいこと♪
軽妙ピカピカの音楽のよう☆
やはり、のしてんてん画伯ゆずりの天才です ^ ね ^



それに、スケール号には、お嬢姫女神さまの
宇宙勇気が脈々と流れています!



チュウスケ魔剣のパルサー剣攻撃!
ブラックホール追い込み作戦!ピンチはチャンス!!


のしてんてん博士をはじめ☆艦長☆
もこりん☆ぴょんた☆ぐうすか☆
みなさまのご無事ご健闘を
神速でお祈り申し上げます!!


ピンチはチャンス☆ピンチはチャンスだぁ~~☆♪
返信する
はじめまして (延岡の山歩人K)
2016-07-17 06:44:56
お早うございます

 >のしてんてん系宇宙(五次元)
スケールの大きな物語ですね
頭が柔らかいですね(*^_^*)
豊かな発想に驚きます

返信する
ピンチが意識を目覚めさせる (のしてんてん)
2016-07-17 07:44:38
ありがとうございます真鹿子さん

スケール号始まって以来の大ピンチがいきなり立てきました。さすがのしてんてん博士も、こちらに通信などできないみたいです。

チュウスケネズミはスケール号の宿敵。ここで負けるわけにはいきません。

摩訶不思議極大極小魔力で、応援してください^ね^
返信する
おはようございます (のしてんてん)
2016-07-17 07:57:46
延岡の山歩人Kさん、おほめに預かりありがとうございます。

五次元宇宙は、「己は空なり」という真実に行き着く思考です。それをどう伝えるか、なかなか難しいのですが、今、スケール号が力を貸してくれていますので、私も楽しみながら、話を進められます。

それより、延岡の山歩人Kさんのお写真こそ、素晴らしい精神力を感じさせられます。すっかり虜になってしまいました。

神の山に降りそそぐ朝日、生きいきとした水分をたっぷり含んだ風景。

濃い意識の風景写真に驚くばかりです。

これからもよろしくお願いいたします。
返信する
ブラックホール猛省磁場! (トンチンカン真鹿子)
2016-07-18 09:03:02
そうなのですよ

復讐心などというものは、
どうしても、人を呪わば穴二つで、
墓穴を掘ってしまうようですね。


チュウスケ鼠復讐魔チュウスケは
遂に、ブラックホールという墓穴を掘ってしまいました。
ここはひとつ、腹を決めて、
粉骨砕身!猛省していただきたいです ^ネ^ ;


チュウスケ!がんばってね~~!!
返信する
まったくです (のしてんてん)
2016-07-18 21:13:48
チュウスケに反省の弁なし

このままでは済みそうにありません^わ^

お楽しみに-ね-
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