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十二、最後の決戦(2)

2016-08-22 | 童話 スケール号の冒険(第4話)

 

 

 

 艦長も、博士も、頭をフル回転させた。何か方法を見つけなければ、スケール号もろとも、宇宙の塵と消えてしまうのだ。しかもあと五分で。 

 さあ、どうすればいい。落ち着いて、必死で考えるのだ。あきらめてしまいそうになる自分を奮い立たせるように、艦長は思いを巡らせた。時間がない。スケール号を操るだけでは素粒子爆弾を外すことは出来ない。船体に同化している以上、打つ手はない。ためしにスケール号の尻尾で弾き飛ばそうとしたが、無駄だったのだ。

 「・・・・・・・・・・」

 「博士、スケール号の事を頼みます。」

 艦長が何かを決心したようにきっぱりと言った。

 「どうするのだ。」

 「スケール号の外に出て、爆弾をはずします。」

 「しかし、危険過ぎるぞ。」

 「それしか方法がありません。みんな、博士を残して全員船外に出る。宇宙服を付けろ。武器も忘れるな。」

 「はいでヤす。」

 「はいだス。」

 「分かりました。」

 決断すると、艦長の行動は早い。乗組員たちもその勢いに押されて、てきぱきと動き出した。 あっと言う間に、四人は宇宙服に身を包んだ。

 「では博士、言って来ます。」

 「気を付けてな。」

 四人は次々と、宇宙空間に身を乗り出した。ふわりと自分の体が浮いてしまう不思議な感覚、何もなければきっと楽しいに違いなかったが、今はそんなゆとりはない。時間がないのだ。

 「チュウスケに気づかれるな。あわてないで、そのままスケール号の背中に回るんだ。」

 「分かりました。」

  四人はゆっくり回り込んで、背中の爆弾まで、はうように進んで行った。

  「何とか外せそうか。」艦長が聞いた。

  「このテープを取れば何とかなりそうでヤす。」

  「危ない、伏せろ。」突然ぴょんたが叫んだ。

  それと同時に、二本の白い光線がみなの頭の上を交差して飛び去った。

 何が起こったのか、理解する前に、伏せたもこりんに真っ黒な塊が突進して来た。黒い塊は無防備なもこりんの脇腹を突き刺して飛び去った。その勢いでもこりんは、スケール号の背中から弾き飛ばされたのだ。

  「うわーっ」

  「もこりん!」

  「カウカウカカカカ、お前たちの思うようにはさせないカウ。」

 カンスケが奇襲攻撃をかけて来たのだった。

 スケール号の背中からロープがピンと張って、その向こうにもこりんの体があった。命綱だ。

 「もこりん大丈夫か。」

 艦長がロープを引いて、もこりんを助けようとしているところに、白い光線が艦長の腕をかすめて通り過ぎた。光線銃だった。

 見るとスケール号の後ろに、ポンスケとカンスケが並んで光線銃を構えているのだ。

 「私とぴょんたが迎え撃つ。ぐうすかはなんとかして爆弾を外すんだ。」

 言いながら艦長は、光線銃を腰から引き抜いて撃った。ぴょんたも応戦した。 暗い空間を白い光線がいく筋も走り、交錯して飛び交った。

 「ぐうすか、爆弾は外せそうか。」艦長が振り向いてぐうすかに聞いた。

 「一人ではむつかしいだス。」

  一人の力ではとても外せそうになかった。時間はどんどん過ぎて行く。あと3分しかないのだ。チュウスケは大きな口を開いて吸い込みの技を最強にしている。スケール号が爆発して粉々になったら、その破片を一つ残らず吸い込もうと待ち構えているのだ。

 時間は刻一刻と過ぎて行く。カチ、カチ、カチ、カチ、カチ、素粒子爆弾の箱からデジタル時計の刻むカウントダウンの数字が変わっていく。

 こうしてはいられない。艦長がぐうすかを手伝おうとして後ろに下がった。

 「爆弾を外させるものかポン」

 「むだな抵抗はやめるんだカウ」

 一瞬のすきをついて、ポンスケとカンスケが攻め寄って来た。ぴうんとカンスケの発射した光線銃がぴょんたの光線銃を弾き飛ばした。

 「あっ、」

 ぴょんたは手を押さえてひざをついた。

 「カウカウカカカカ。覚悟するんだカウ。」

 カンスケとポンスケの光線銃が三人に向けられた。その時だった、くるくると円を描いてツルハシが飛んで来たのだ。命綱につながれたまま、もこりんがツルハシ投げの技を出したのだ。。もこりんのツルハシ投げはくるくるとブーメランのように回転して、正確に敵を倒す。

 ツルハシはがつんとカンスケの腹に命中した。

 「ギャーカカカウウう」カンスケが悲鳴を上げてスケール号の背中から落ちて行った。

 「ちくしょう、よくもやってくれたなポン。」

  ポンスケが振り向いて、宇宙に浮かんだままのもこりんに光線銃を向けた。もこりんは刺された腹を押さえて、命綱の先で身動きが出来ない。やっとの思いでツルハシを投げた後だから、ぐったりとして、格好の標的になっている。

  「スケール号、しっぽを使ってポンスケを弾き飛ばせ。」

 艦長が心の中でスケール号に命令した。

  「ゴロニャーン、ニャン」

  スケール号が一鳴きしてしっぽを振り立てた。そしてびゅんと一振り、鞭のようにしっぽをしならせてポンスケを横に払った。  

  「ギャーッポンポン」

 不意を突かれたポンスケはあっけなく弾き飛ばされて、宇宙の彼方に消えて行った。

  「やっただス。」

  「スケール号、よくやった。」艦長は声を出して言った。

 

 

つづく

 

 

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