徒然なか話

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牛深のみなと文化

2018-04-20 19:57:23 | 熊本
 今日20日から22日まで開催される「牛深ハイヤ祭り」。古より受け継がれる牛深の豊かな「みなと文化」についてまとめた山下義満氏の研究論文「牛深港の みなとの文化」より、牛深の伝統芸能について記述された部分を抜粋してみた。

 全国の約50といわれる「ハイヤ節」の源流は、この牛深ハイヤ節といわれ、九州の西海岸の「鹿児島ハンヤ節」「田助ハイヤ節」「阿波踊り(徳島)」、また大阪からの北前船により、「浜田節(島根県)」「宮津アイヤ(京都府)」「佐渡おけさ(新潟)」「津軽アイヤ節(青森)」など、江戸期の海運の発達に伴い海路沿いに伝播していく。
「その特徴は海に生きる人たちが持つ、直感的な性格が生み出したと思われる」(民謡研究家 竹内勉)
 牛深には「牛深ハイヤ節」の他に「牛深三下り」「磯節」「ラッパ節」など他地区より伝播したものも存在する。旅芸人の芝居・ビャードンと呼ばれる三味線弾きなどは村にも来て賑わった。また元日の朝は獅子舞が網元宅前で舞う。これは昭和30年代後半までの事例である。

「黒砂糖 求めて 花いちもんめ 白砂糖 求めて 花いちもんめ」


ハイヤ節の収録(昭和2年)
(「写真集牛深今昔」 吉川茂文 2001)

 「花いちもんめ」ではこの歌詞を子どもは唄い、遊戯にもその痕跡を残す。黒砂糖は南方系、白砂糖は北方系の産物で、南北地産の交易中継地がこの牛深であったことを遊戯の中で残存した。子どもたちは社会状況を見ていたのであろう。漁撈に関してはいわゆる労働唄として帆船時代までは唄われていた。カツオ船の「潮換え節」などは鹿児島県の影響を受けている。これは漁法の伝播からでも注目すべき事例である。また少年が漁民として必要な知識・知恵・躾等を学ぶ教育機関的な位置付けができるイカ捕獲のための「イカ網」では約100の櫓囃子があった。数例挙げると

「甑 オダ山 雲かけたなら サー 明日は南風じゃと さとらんせ サー」
「人の七癖 我が八難じゃ サー 人の振り見て わが振り直せ サー」



牛深ハイヤ節(牛深高校郷土芸能部)


牛深三下り(ザ・わらべ)