11月7日、8日に糸魚川市で開催されたミネラルフェアに行って、暗澹たる想いをした。
予想通りに、ヒスイ製品の価格が年々下がってきている。
ヒスイ製品が飽和状態になり、売れなくなってきているらしい。
だから良い原石を使ったヒスイ製品を安く売る、という風潮が続いているのだ。
ネットショップで売れ行きの悪い勾玉は、在庫処分でヤフオクで売りさばく・・・ヒスイ製の勾玉は単なる商品?
だとしたら、文化の匂いのしないビジネスだね・・・サモシイじゃないか。
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私の勾玉作りに欠かせないのが、光を勾玉に当てるチェック。明るい所でなら素人目には解らなくても、暗い部屋で光に当てて勾玉をゆっくり動かしていくと、内側のカーブの尻尾付近にガタツキがある事が判明。赤鉛筆でチェック!
そんな風潮に対して、ヒスイの枯渇を早めるだけだと危惧する業界人とは、滅多に出会う事が無いのが不思議だ。
「勾玉の形はイビツだっていい。良いヒスイを安くすればお客さんは買ってくれる。だから勾玉は1時間で1個くらいで作れないとプロとは言えず、商売にならん!」という声まで聞く。
輪島塗りの職人が、半年かかる仕事を1週間で仕上げたら褒められるのか?
そんな仕事で作ったのなら、それは本物の輪島塗りではなく輪島塗りモドキでしょう?
1時間で1個の勾玉を作れないとプロではないという世界は、工芸品や美術品の世界の話しではなく、工業製品の世界の理屈ではないかな?
工業製品的な量産品の勾玉とはなに?
答えは「勾玉の形はしてはいるヒスイ製品」、つまり身近なアクセサリー用品という位置付けではないか?
世のすう勢が身近なアクセサリーとして、ヒスイ製の勾玉を求めているのは理解できるし、その要望に応えるのは決して悪い事ではないだろう。
そしてヒスイ製品の安売りに対して、私ごときがモノ申しても流れは変わらないという事も解ってはいる。
でも私は叶わぬまでも本来の祭器たる「ヒスイ製の勾玉」に挑み続けたい。
そんな想いで作られた勾玉もあるという事は知って欲しい。
万葉集に「沼名川の 底なる玉 求めて 得し玉かも・・・」と謳われ、貴人であっても垂涎の的であったヒスイの祭器が、今や1時間で1個の割合で量産されて、お手頃な価格で売られ、お気軽に買われていく時代。
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反対側も尻尾の所で急激に角が付いている。なんでこんな仕事してんだ、バカ野郎!と自分を罵るのはこんな時。
刀匠は、暗い部屋で小さな光源を刀身に当てて、日本刀の反り具合をチェックするそうだが、私も勾玉を作る時は同じ事をしている。
勾玉をゆっくり動かして、光が自然な放物線を描いていかないと駄目で、納得のいくまで何度も赤鉛筆でチェックを入れて研磨し直していく。
もちろん、そんな作り方だと1時間で1個の完成は望めず、その何倍もの時間は必要だ。
それは祭器たる勾玉を作ろうと努力をしているからで、お気軽なアクセサリーを作るつもりは毛頭ないのだ。
なぜなら、私は玉造の民であった古代奴奈川族の末裔という自負があるから。
自宅兼工房は、笛吹田遺跡という玉造遺跡の真上に建っているのだ。
お袋が敷地から千七百年前の勾玉を拾った一年後の同じ日に、私は生まれた。
何らかのチカラが宿っている勾玉、生物のような勾玉、そして何人たりとも犯し難さを感る神々しい勾玉を作りたい。
しかし、どれだけ手間暇惜しまず時間を掛けても、夢に描く勾玉が作れないモドカシサを感じ、自分の技の稚拙と感覚の鈍さを罵るマゾ的な仕事。
そんな想いをしてまでして作った勾玉をヒスイ関係者に見せると、「丁寧に仕事しているけど・・・ヒスイの質からいうと○×円くらいが相場だね。」と、原石の価値に見合った値段を付ける。
要するに量産勾玉と同じ価値しか認めて貰えないのが普通で、想いを共有できない事が非常に淋しい。
願わくば、想いを共有できる同志の存在・・・。
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修正研磨の結果はなんとか及第点だが・・・不満だらけで、けっして満足する事はない世界。
ところが・・・手前味噌だけど、ぬなかわヒスイ工房の勾玉を買ってくれるお客様は違う!(笑)
数あるネットショップの中から大手運営サイトを通り越して、宣伝広告費ゼロの私のサイトに辿り着くだけでも相当な検索をしているハズ・・・。
それでも「色んなサイトを観てもどれも同じでピンときませんでしたが、ぬなかわヒスイ工房さんの勾玉は何か違うと直感しました。」という嬉しい評価!
パチパチパチ(拍手の音)
私の思い描いている理想の勾玉とは程遠いにしても、その目指している方向性や呻吟振りが伝わるらしいのだ。
お客様はカミサマです!そして数少ない同志です!
そんな評価をしてくれるお客様がいるからこそ、私は「勾玉の形をしたヒスイ」ではなく、「ヒスイ製の勾玉」に挑み続けるのであります。
明日も自分を罵る仕事が待っておる・・・私はマゾヒストだ(笑)