縄文人(見習い)の糸魚川発!

ヒスイの故郷、糸魚川のヒスイ職人が、縄文・整体・自然農法をライフワークに情報発信!

平面で曲面を作る意義・・・ミズチ石笛

2019年09月28日 08時54分16秒 | ぬなかわヒスイ工房

暗い水底で身をくねらすミズチ(蛟)をイメージした石笛。


ミズチ紋は私が好んで線刻のモチーフに使う縄文土器の文様である。中国語では蛟と表記するらしいが、上古の日本語ではヤマタノオロチのチと同じく、ミズの精霊だからチが付いてミズチ。

ミズチ紋は八ヶ岳西南麓を中心とした、縄文土器の深鉢に施文された水棲生物のような文様である。

ただし文学的なニュアンスのあるミズチ紋と命名したのは長野県の考古学者で、同じ文様であっても山梨側ではサンショウウオ紋と客観的に呼んでいるのが面白い。
考古学者にも県民性の違いがある訳ですな( ´艸`)


曲面を造形するのは結構大変で、ヒスイ関係者からどんな機械で作っているのか?と質問されるが、特殊な加工機械無しでごく普通の平面研磨機だけで作っている。


コツはピンポイントで研磨機に当てることくらいで、平面で曲面を作る努力するからこそ動きが出ると思う。


曲面を作る特殊機械で動きは出るのか?使ったことないので不明だが、ピンポイントへの集注の積み重ねが肝要とは思う。

ヒスイの質を自慢する職人は多いが、私は勾玉でも石笛でも「生きているみたい!」「今にも動き出しそう!」と言われるのがイチバン嬉しい。


失敗を成果と評価する・・・糸川英夫博士に学ぶ

2019年09月26日 18時31分50秒 | ぬなかわヒスイ工房

惑星探査機「はやぶさ」の快挙を称える映画「はやぶさ/HAYABUSA」は傑作だ。

度重なる失敗に意気消沈する科学者たちに対し佐野史郎さん演じる開発リーダーが、国産ロケット開発の創始者として知られる糸川英夫博士は、失敗を「成果」と評価して諦めなかったのだよ!と慰める場面があった。

ええこと聞いたのでメモメモ( ..)φ

戦時中の糸川さんは中島飛行機製作所の主任設計技師でもあり、軍部の無理難題に応えて旧帝国陸軍の一式戦闘機「隼」と二式戦闘機「鍾馗」を担当したそうだが、部下からも信頼の篤い人格者であったらしい

我もかくありたし・・・。


さて、本日の「成果」は、石笛が完成直前で割れてしまったこと。

仲間からもらったヒビだらけで誰も手を出さないヒスイに闘争心に湧き、ヒビに沿って縄文っぽい線刻をと目論んだが・・・紐孔内部の最終研磨の際に見事に割れた。

割れた紐孔内部を観察したら、穿孔痕がちゃんと消えていたのを確認できたのは成果!

「難しい課題に挑戦するのはいいが、モノには限度があるぞ!」という格言も成果!

負けるもんか!(´;ω;`)


ヒスイがモノに産まれ変わる瞬間・・・私が紐孔内部を磨く訳

2019年09月24日 08時15分47秒 | ぬなかわヒスイ工房

私が勾玉の紐孔の内部をピカピカに磨くのは、貫通孔を開けることは特別な意味を持つと感じているから。


スピリチュアルな意味などではなく、孔を貫通させると「向こうと繋がった!」という次元を飛び超える感覚があるのだ。物理的に表と裏は連続した物体ではあるが、人為で貫通孔を開けた時の次元を飛び超える違いは確かにある・・・もしかしたらそう感じるのは私だけか?(笑)


それは物質のヒスイがモノになった瞬間で、松尾芭蕉が唱えた「造化」とはこういう感覚なんだろうな、と感じる。

孔を貫通させただけだと、孔内部は穿孔痕でザラザラしたまだだ。

芭蕉の造化・・・「在る自然から人を介して産み出された自然」と私は理解しているからこそ、生まれたての勾玉を成長させる意味で孔内部を研磨する。

勾玉のカタチをしたヒスイからヒスイで作った勾玉へと、糸魚川ヒスイ製であることに寄り掛かからず、内実ある勾玉への転換。

私が初心者の頃から稚拙なりに紐孔内部の研磨に励んでいたのはそんな理由から。

もっとも初期の頃は竹串に金剛砂を付けて磨くという非効率な方法だったが、試行錯誤の結果、現在はもっと効率がいい方法を見つけている。


所用で有名な勾玉名人を訪ねたら、見せたいものがあると自宅に招き入られ「30年来勾玉を作ってきたが、ついに勾玉の紐孔内部を研磨するようになった!」と見事に紐孔内部を研磨した勾玉を出された。

勾玉名人が紐孔内部の研磨を始めた理由は、あまた売られている勾玉との差別化なのだろうと思う。

そこは私と違うし、どんな方法で研磨しているのかも、お互いの企業ヒミツなので不明(笑)

しかし少しでも「佳い勾玉」を作ろうとする飽くなき欲求は共通しており、こういう大御所の存在は励みになるから有難い。

ヒトとヒスイの物語、勾玉の物語も人それぞれ。


メルトダウンするゴジラ?いいえ金華石の石笛です・・・即興が面白い

2019年09月20日 07時54分29秒 | ぬなかわヒスイ工房

メルトダウンするゴジラか溶岩のような姿の金華石製のご神事用石笛のアップ。


稀にメノウ化した部分が酸化鉄で黄色く変色した物もあり、原石の野趣をそのまま活かさない手はない。


植木屋さんが樹木を自然樹形に仕立てるように、様子を観ながら少しづつ成形していくのは石と私のセッション。


「いいねぇ!」という感覚だけが頼りの即興仕事だから、完成した時に自分の予想を超えたモノが生まれる処が面白い。


事前に完成デザインを決めてしまえば仕事は早いだろうが、私には予定調和的で面白くないのですな。

即興セッションで生まれたから、作品はオンリーワン。

過去の作品と同じモノを作って欲しいと言われても、石も違えばその時の私と今の私は違うから難しい。

古武術研究家の甲野善紀先生に聞いた、江戸時代の剣術家の名言「今という間にイは過ぎ去る也」が身に滲みる。

 


宮沢賢治が泣いて喜ぶ金華石・・・金華石石笛

2019年09月17日 08時20分31秒 | ぬなかわヒスイ工房

鉱物に宇宙の神秘を観た宮沢賢治が観たら歓喜するに違いないのが、糸魚川産の金華石。


原石は茶色い地味な姿だが、中身は泥岩と石英の海に黄鉄鉱と瑪瑙の華が浮かび上がるアバンギャルドさ。


表面の窓の中に、瑪瑙の葡萄状結晶が覗く趣向を凝らしてみたが、どうですか宮沢さん!

ヒスイは複数の鉱物が集まった多結晶鉱物だが、金華石は更に極端に物理特性の違う鉱物の集まりだから、石笛の音質も重層的な響き。

プロの演奏家も同じ意見で、その倍音特性は豊潤で馥郁たる「倍音キング」の異名を持つ(ヤマダ談)


堅さの違う鉱物の集まりだからルースのような平面的なモノなら誤魔化せても、立体造形だと形が歪になったり表面が平滑ではなかったりと、モロに技術が露呈する勉強になる石。


加工すると硫化水素の匂い(いわゆる硫黄質の温泉の匂い)が漂い温泉気分が味わえるので、注文仕事に疲れたら箸休め的に遊ばせてもらう。

旅に出たくても出れないので、工房に籠ってしばしの宇宙旅行のつもり。

それがゲイジュツというものなのでR!と自分を納得させる(笑)


贈与と返礼による疑似親戚関係・・・縄文のヒスイ交易を想う

2019年09月16日 07時48分25秒 | 縄文

去年の北海道旅行で知遇を得た、知床の「えぞ鹿工房カルペ」の斎藤さんから見事な鹿角彫刻が届いた。


北海道中のお土産屋さんに鹿角アクセサリーを卸している斎藤さんは、「作りたいモノ」を作る時間がないほど多忙とのことだが、ヒスイ職人の仕事にも興味津々で意気投合して話し込んだ。

珍しい職業のヒスイ職人であることで、様々な分野の人と懇意になれるから有難い。

山形県埋蔵文化財センターの時は、話しかけてきた学芸員さんが私がヒスイ職人であると解ると表情を変えて収蔵庫に案内してくれて、出土品の目視鑑定方法や現代のヒスイ加工の実際を聞かれて、2時間くらい話し込んだ。

これほどの彫刻をリューター(電動工具の一種)だけでサッと削って作ったらしいが、お見事の一言!

大量にお土産に持たせてくれた鹿角で、創作のヒントになればと笛を作って送ったら、その返礼の意味らしい・・・律儀なお人。


齊藤さんが手に持っているのは鹿角製の勾玉!

縄文時代のヒスイ交易は「大盤振る舞い」であり、その実態は贈与と返礼による疑似的な親族関係の構築とする学説があるが、今もそれは残っていますな。


千代鶴や長次郎を目指せば永遠の求道者・・・勾玉作り

2019年09月13日 08時33分52秒 | ぬなかわヒスイ工房

作るほどに難しくなっていくのが勾玉。


技術が上がると観察眼も上がるので、永遠に満足できない。


滑らかな曲面だけで構成された立体造形だから、造形も研磨も難しく、工夫を重ねても納得いかない。


工房に訪ねてくるヒスイ好きから自作の勾玉を見せてくれることが多く、「どうですか?」と出来栄えを聞かれたり、「2時間で作りました!」と短時間で作ったことを自慢されても、求めているモノが違うので返答に困る。


石なのに温かく柔らかく感じる勾玉、イキモノのように感じる勾玉を作ってみたい。

例えば不世出の名人大工道具鍛冶「千代鶴是秀の刃物」や「長次郎の黒樂茶碗」の横に自分の勾玉を置いたら、邪魔だからどけてくださいと言われてしまうだろう。

千代鶴や長次郎を目指せば極はなく、永遠の求道者になってしまうから厄介だ。


50年も水晶加工を続けた職人の掌

2019年09月12日 08時51分39秒 | ぬなかわヒスイ工房

50年も水晶加工を続けた甲府の伝統工芸士、Tさんの掌。


修行時代は日に16時間も修行したという大先輩に、丸玉加工の依頼と加工の実際を見学に行ってきた。

最初は多忙なので下請け仕事はしないし、企業秘密だから工房の見学も不可と仰っていたが、話を聞いてもらう内に打ち解け、工房に入れてくれたばかりか加工体験までさせてくれた。

工具や加工機械のほとんどは特注品で、話す言葉はすべてご自身の体験談!

フリーハンドの墨付けに驚愕!

Tさんは筋金入りの好事家でもあり、日本刀や丸山応挙の話でも意気投合。

次回は水晶彫刻をする秘密の部屋を見せてやると約束され、弾丸日帰りの大人の修学旅行が終わった。

師匠と呼べる人がまた増えた。


一杯のコーヒーに人間復興を想う

2019年09月10日 07時21分12秒 | ぬなかわヒスイ工房

幼馴染の直子嬢が自分で焙煎したコーヒー豆を贈ってくれた。

直子嬢はハラール認証エージェント会社の社長なのでマレーシア出張が多く、コーヒー豆の他に乾燥デーツ(ナツメ椰子の実)なども入っていた。

生豆を丁寧にお湯洗いして、時間を掛けて焙煎したとのことで、雑味が無く深い味わいに歓喜。

コーヒー好きを自認するある陶芸家の工房に行ったら、メーカー無償貸与の機械を使い、一杯分ごとに真空パックしたコーヒー粉を淹れたコーヒーを出してくれて「自分で豆を買うより安くて新鮮な美味いコーヒーが飲めるから合理的なのだ。」と自慢していたが、確かに美味いものの何か物足りない。

私は自分で豆をカリカリ挽くのも、お湯を注いだ時にムワ~ッとコーヒーが盛り上がってくるのも愉しいし、味のバラつきに一喜一憂することさえ愉しいと感じる。

なにより友達が手間暇かけた逸品を惜しげもなく贈ってくれた行為が有難い。

「ヒトとヒスイの物語」をテーマにしたヒスイ職人は、「安くて合理的なコーヒー」ではなく「ヒトとコーヒーの物語」こそを愉しみたい。

ヒスイを主役にして丁寧に1点づつ完成させた勾玉と、人間の都合で1時間に1個の割合で量産された勾玉のどちらを選ぶかは人それぞれ。

優劣の問題ではなく、求めるものの違い。

21世紀の近代日本社会の中で、私はヒスイ加工や一杯のコーヒーを通して人間復興を想う。


日本経済新聞で「ぬなかわヒスイ工房」の石笛が紹介!

2019年09月08日 08時29分30秒 | ぬなかわヒスイ工房

今朝9月8日付けの日本経済新聞日曜版で、「ぬなかわヒスイ工房」の石笛が紹介された。

非常に残念ながら日経さんは詳細な新聞記事をブログやSNSなどで紹介することは不可だそうなので、興味のある方は図書館で読むか、コンビニで買ってください!( ´艸`)


しかも矢沢永吉のインタビュー、アンパンマン特集と同じ紙面に並ぶという光栄(笑)


縄文人(見習い)としてなら新潟ローカルTVとNHKで人工石笛が少しだけ紹介されたことはあるが、石笛そのものがマスメディアで取り上げられたのは初めてではないだろうか。


スマホアプリをダウンロードすれば、掲載写真のQRコードで動画も視聴できるそう。


有難い話し・・・。