縄文人(見習い)の糸魚川発!

ヒスイの故郷、糸魚川のヒスイ職人が、縄文・整体・自然農法をライフワークに情報発信!

ホンモノの石笛演奏家、守山鷲声・・・石笛動画撮影

2017年05月31日 11時48分08秒 | ぬなかわヒスイ工房

和歌山在住の石笛仙人こと、守山鷲声さんと石笛の動画撮影をした。

撮影場所は京都の古刹の庫裡。

 

直接会うのは2度目で4年ぶりくらいだが、私の石笛は鷲声さんに吹いて貰う事を念頭に置いて作られているので、毎日会っている感じがする。

お互いのお客さんも交流して情報が入ってくるので、なおさら。

名刹に相応しい仏像のような守山鷲声さんの姿(笑)

右手に持っているのはチューナー。即興演奏はデタラメに吹けばいいと簡単に思っている人が多いが、ちゃんと型というものがあり、型が無いのは形無しという。

作り手と吹き手の価値観と感受性の指向が一致した得難い関係は、本当に助かる。

私の石笛が4年前とは格段に完成度が上がっているというような事を言われて嬉しかったが、鷲声さんが独自に開発した奏法を披露してくれて、身震いした。

それは、単調になりがちな石笛初心者の演奏に光明が差す革新的な即興演奏方法…詳細は後ほどユーチューブ動画にアップ予定。

飽くなき探求心と真摯な姿勢、クールな頭脳、卓越した技量・・・本当に凄い人。

 

 

 

 


ズバリ演目は「船徳」でしょう!・・・ヒスイ寄席の演目大胆予想

2017年05月26日 19時19分02秒 | 田舎暮らし

5月28日、糸魚川に落語家の柳亭市馬(リュウテ・イイチバ)師匠がやってくる。

ヒスイ寄席という落語会で、トリは三遊亭小遊三師匠だが、中トリが市馬師匠!

何を隠そう、私が一番、贔屓にしている噺家さん。

糸魚川在住の津軽三味線奏者、高橋竹山さんと初対面の時、お互いが落語好きと分かって「誰が好きなの?」と聞かれた。

「柳家小三治師匠は別格として、今一番うまい噺家さんは柳家さん喬師匠、面白いのは柳亭市馬師匠と滝川昇鯉師匠ですね。若手なら柳家三三、喬太郎、春風亭一之輔かな。」と答えたら「わかってるねえ!」と褒められた。

さん喬師匠は竹山さんのお友達で、私が挙げた噺家さんはテレビには出なくても実際に寄席に通って初めて知る事のできる実力者ばかりだからである。

市馬師匠の落語は落語初心者でも分かりやすく、また同業者からも「柳家小さんの最高傑作」と称賛される噺家さん。

首都圏ではチケットが即日完売という人気者にして、史上最年少の落語協会会長という人格者!

いつか人間国宝になるに違いない逸材。

残念ながらヒスイ寄席は予定があって行けないので親孝行の意味もあってお袋にチケットを買ってあげたが、当日の演目を予想しちゃうと・・・。

ズバリ、時節柄と地方寄席でも受けの取れそうな「船徳」でしょう!

きっと得意の歌を入れてくるに違いない。

古今亭志ん輔師匠なら冒頭に舟歌を入れるが、以前聞いた市馬師匠の船徳は、中間で端唄の「ささや節」を楽しそうに軽く歌っていた。

「四万六千日のお暑い盛りでございます・・・」夏を先取りした古典落語。

いいなあ。

 

 


美術女子、ペンダントを作る

2017年05月24日 21時09分15秒 | ぬなかわヒスイ工房

ぬなかわヒスイ工房に取材に来た美術女子、作品作りの実際を体験してもらう事にした。

自分で拾ったネフライトの孔開けと研磨をしてペンダント作り。

リューターでの孔開け作業。

 

木工なら木の繊維に沿って刃物を当てるが、石には繊維が無い代わりに結晶の流れる方向というものがあるので、まずは結晶の観察。

結晶の流れといっても全部が揃っている訳ではなく、ゴチャゴチャに混ざり合っていることの方が多い。

ダイアモンドやルビー、サファイアのような単結晶の鉱物なら一定の方向性もあるが、ヒスイやネフライトのような複数の鉱物が混じった岩石の結晶の流れは複雑なのだ。

無理のない感じ、流れる感じで優しく撫でるように、そしてピンポイントで研磨していく。

 

それでも頭を逆撫でされると気持ち悪いように、ヒスイの研磨もメチャクチャに研磨する訳ではなく、研磨機に当てたヒスイが「気持ちいい!ここをもっと研磨して!」と感じられるような研磨の仕方が大事なのだと教えた。

それはヒスイと我が対極関係ではなく、混然一体となった同化感覚の世界なのでR!と大上段に構えて教えたが・・・解ってもらえたかな?(笑)

完成したネフライトペンダント・・・ネフライトも綺麗だが、私と違って細くて傷も節のない美術女子の指に目がいく(笑)

 

研磨の後はワイヤーワークで、チェーンだろうが革紐だろうが通す事の出来る環を作るのだけど、私は耐食性と耐久性のいいステンレスワイヤーを使っており、こればかりは訓練が必要なので、私が仕上げた。

とても個性的でオンリーワンのネフライトペンダント。

孔を開けて簡単な研磨だけで売れるレベルのペンダントトップが拾える糸魚川、やっぱり面白い土地だ。

 

 


美術女子来たる

2017年05月21日 21時54分48秒 | ぬなかわヒスイ工房

美術を専攻する女子大生が、一泊二日でぬなかわヒスイ工房に訪ねて来てくれた。

購入した手工芸品の現場を取材してレポートするという課題だそうで、京都の「民族楽器コイズミ」さんで私の作ったヒスイ製石笛を買ってくれたのだとか。

お客さんを必ず案内するのが親不知・・・綺麗なネフライトが拾えた。

ヒスイ原石屋さんで鑑定してもらった結果、やはり極上のネフライト(軟玉ヒスイ)との事。

 

ヒスイや縄文の興味から、ぬなかわヒスイ工房を訪れてくれるお客様が多いなか、造形やモノ作りの現場に興味を持って訪ねてくれるのだから是非もない。

話してみると事前取材は相当で、取材も熱心だった。

五千年前のヒスイ工房と推測されている、長者ケ原遺跡の復元された20号住居も、必ず案内する場所。

糸魚川に多い左巻き渦巻のカタツムリ発見・・・全国的には右巻きが多く、珍しいらしいのだ。

 

予定調和的なモノ作りと即興的なモノ作りの違い、勾玉のカタチをしたヒスイとヒスイ製の勾玉の違い、そして石笛のようなモノと石笛の違いなど、普通の人には難解な事を二日間にわたって話した。

美術や造形の素養があるためもあるだろうが、普通の人では難解な話しも通りがよく、異質な世界への理解のセンスがとてもいい。

彼女の趣味が写真撮影との事でカメラに詳しく、私も色々教えてもらえて助かった。

 

質問も切口鋭く的を得ており、思わず誰にも教えない技術的な事まで喋ってしまった。

卒業後は美術館の学芸員でもしながら創作活動をしてくのかも知れないが、編集者や取材する仕事にも向いているぞ(笑)

まだ21歳との事だが、行く末が愉しみなお嬢さん。

 

 

 

 


町工場にみた日本の底チカラ・・・仕事への誠実さ

2017年05月18日 08時23分06秒 | ぬなかわヒスイ工房

ヒスイ加工必需品の小割切断機がズタボロ状態になりつつある。

もともと只で貰った中古品を改造したり直したりして使っていたのだが、錆びが金属部内部まで浸み込んでいて、ブレード(円形の切断カッター)の固定ナットもナメつつある。

放置しておけないので、とりあえず同じ規格のボルトを市内のホームセンターや金物屋さんを探したが、適合品がみつからない。

思い余って作業工具のメンテや改造でお世話になっている町工場に窮状を訴えたら、「細目」という特殊な規格のナットらしい。

そこで何人かで在庫品を探し回って、適合品に近いナットを見つけて現場合わせで作ってくれた。

たった1個のナットのための、誠実極まりない仕事。

その仕事振りを見ていて、胸が熱くなった。

現場合わせで作ってくれたナット。

 

世界に誇る日本の技術の根幹は、現場の奉仕にも近い誠実な態度、真面目さ。

ノーベル賞や世紀の大発明品も、モノ作りする現場の存在抜きではアイデア倒れでカタチになってくれないのだ。

短時間でヒスイ製品を量産する風潮があるが、こんな仕事振りこそ私の師匠。

 

 

 


奇縁・・・水銀の海に浮かぶ妖しい不知火と縄文石笛

2017年05月15日 23時10分56秒 | ぬなかわヒスイ工房

金華石製の石笛が評判がよく、SNSで随分と色んな人が褒めてくれた。

そこで金華石では初めてとなる、縄文時代出土タイプの石笛を作った。

熊本県の轟貝塚出土の石笛をベースに改良を加えたのだけど、使用原石は黄鉄鉱が酸化して黄色く発色した変わり種。

ぬなかわヒスイ工房は石笛だけじゃなくて色んなオリジナル作品をパクられているのだけれど、実物を見た同業者から「こりゃ手間暇かかっていて真似できないわ。」と呆れていた。

 

カタチだけ真似しても必然性のない造形は、内実がないから貧相で、品格がないのだ。

そこの事情も理解できずに外見だけ真似したつもりでも、「この石笛、ぬなかわヒスイ工房の真似でしょ?」と鋭い人には解ってしまうのだ。

そして仕事に哲学がない職人だとバレてしまうのだ。

と、先日ある石笛愛好家から電話を頂きました(笑)

(お得意様や石笛仲間から、ミネラルフェアで私の石笛コピーが売られていたとか、ネットで売っていたとかの連絡がよく入るのです)

貫通孔を持つのが縄文石笛の特徴。

 

面白そうというだけで選んだ原石だが、完成した石笛を「ぬなかわヒスイ工房」ネットショップにアップしていて、ふと閃いた。

水銀の海に浮かんだ鬼火のような景色・・・そういや旧暦八月に発生する鬼火現象の「不知火」は、轟貝塚近くの不知火海の風物詩。

不知火(シラヌイ)とは、漁火が夜の水平線に浮かんで観える蜃気楼現象と説明されている。

石と人が出会ってこそ物語りは始まる。

意図しなかった奇縁に後から気付く事もある・・・銘「不知火」と名付けた。

石と私の一期一会のご縁。

願わくば熊本のお得意様の目に止まってお求め頂けたら・・・そして轟貝塚で吹いていただけたら・・・と物語りが続いていく。

物語りは終わらない。

 

 

 

 

 

 

 


縄文ファンの穴場・・・糸魚川のラベンダービーチ

2017年05月14日 19時39分12秒 | 縄文

「翠風会」というヒスイと水石、糸魚川産の真柏と山野草の愛好会がある。

5月13、14日は翠風会の展示即売会。

私は会員ではないが、色々とお世話になっているので多少のお手伝いをしており、その一つが物販ブースのアルバイト店員の手配。

若いお嬢さんがいいとの事で、友達の十日町市在住の縄文女子のHちゃんを紹介したら、会員のおぢさん達はニコニコ恵比須顔!

彼女は大学時代に遺跡の発掘ばかりしていたそうだが、現在は介護の仕事をしており、お年寄りの接し方に慣れていて非常に好評だったよう(笑)

愛嬌抜群で勉強熱心なHちゃんを、閉会後にお手伝いのご褒美がてらラベンダービーチに案内した。

ヒスイは無論だが、ここは縄文人が生活必需品に使った石材が簡単に拾える穴場なのである。

 

普通の砂岩はドングリ類の粉砕用の石皿、石英粒を含んで堅固な来馬層群産の砂岩はヒスイや磨製石器の加工用の砥石や石鋸、蛇紋岩類は磨製石器や装飾品、頁岩やチャートは矢尻、そして古墳時代以降の利用例だけれども火打石を作れる等々、教えてあげると、縄文好きなら石拾いに夢中になる。

名前も知らないただの石ころが、お宝に見えてくるのだ。

とにかく糸魚川の海岸は豊富な種類の石が落ちていて、非常にカラフル。こんな海岸は他に見たことがない。

 

ジオパーク糸魚川の魅力を、自然科学的な視点だけで発信するのは片手落ち。

太古からの石と人のモノガタリという視点が加われば、間口も広くなり、より身近に感じるのだ、と私は思う。

ヒスイだけが糸魚川の魅力ぢゃないぜ!

 

 


巨大アンコウ・・・困った困った、嗚呼困った

2017年05月11日 07時40分50秒 | 糸魚川自慢

東のアンコウ、西のフグと並び称される体長60㎝もあるアンコウを頂いた。

旬を過ぎているといえども高級魚アンコウ!

小家族では食いきれない巨大なアンコウ!

困ったなあ・・・食い過ぎて飽きてしまっては、せっかくの高級魚アンコウがかわいそう。

困った困った、嗚呼困った(笑)


創造のチカラ、それが造化・・・金華石石笛

2017年05月09日 19時30分14秒 | ぬなかわヒスイ工房

造化とは、天地開闢の根源力。

具体的にはインド神話や古事記の記述されている入海撹拌神話などで、混沌とした形のない原初の宇宙から、神様が万物を創造していった時のチカラの事。

金華石石笛。

 

さて、私の石笛作りは最初からデザインを決めておらず、石の持つ個性を引き出すように作りながら形が決まっていく。

作業工程のある瞬間に「ただの石から石笛に生まれ変わる」時があり、それがあるから石笛作りが面白い。

勾玉のように最初からカタチが決まっておらず、即興的にデザインが決まっていくのだから、作った本人が意図しないカタチが生まれる。

だから作業効率は悪くても止められないのだ。

ちょっと大袈裟だけども、入海撹拌神話の創造主の気分(笑)

微妙な曲線!

宇宙船っぽいデザイン。

奇抜な意匠だと思って欲しくない。

 

そんな中、久しぶりに金華石の石笛を作った。

金華石は、泥岩に黄鉄鉱の華が咲き、瑪瑙のガラスが嵌る糸魚川特有の奇天烈な岩石。

隕石のような金属っぽい岩石なので、どうしても宇宙船のようなカタチになってしまう。

どんな秀逸デザインでも、石笛として吹きにくかったりすると作り手の自己完結した独りよがり。

プロの演奏家やご神事でお使いになる神職の方々から評価されない石笛ではダメですな。


縄文の多様性を示唆してくれるヒスイ・・・上尾駮遺跡出土石笛neo「墨流し裏勝り」

2017年05月06日 10時22分23秒 | ぬなかわヒスイ工房

縄文時代の石笛としてネット検索できるものは、ほとんどがヒスイ製大珠を石笛として誤認、もしくは独善的に断定した眉唾情報である。

考古学的に縄文時代の石笛として推定されている数少ない石笛の一つが、青森の上尾駮遺跡出土の石笛。

実測図に基づいてレプリカを多数作っているが、私好みに改良して製品化しているのが「上尾駮遺跡出土縄文石笛neo」である。

この連休中の仕事で縄文石笛neoを作ったのだけど、思いがけず面白い作品ができた。

表は渋く墨流しの景色・・・。

裏は淡いコバルト発色にガラスのように半透明の白乳色が嵌る派手な姿で、これぞ裏勝り。

所々に赤と鮮やかな黄緑の星が散らばるヒスイ製石笛である。

 

江戸の庶民は奢侈(しゃし)禁止令により、地味な着物しか着る事を許されなかったが、その事を逆手にとり羽織の裏地に趣向を凝らした「裏勝り」が流行した。

普段は観えない所に凝るという、江戸っ子好みの裏勝りの誕生である。

因みに、大相撲で番狂わせがの一番があると座布団が飛ぶが、かっては贔屓力士の勝利を祝った谷町衆(たにまちしゅう)がこぞって自分の羽織を土俵に投げ入れていたそう。

後から呼び出しさんが拾った羽織を相撲茶屋で一杯やっている旦那の所に持って行けばご祝儀と引き換えてくれるという粋な慣習だが、名前など書いてなくとも誰の羽織か解るほどに「裏勝り」に凝っていたらしい。

実際に本場所見学中に座布団投げの現場に居合わせたことがあるが、今時は面白がって投げているだけで、非常にみっともない風景だった。

座布団を投げた人がご祝儀でも持っていく料簡でもあれば、これはこれで面白いのだが。


さて、古今東西から宝石とされているのは、単結晶の鉱物で、ダイアモンドやサファイア、ルビーがそれである。

ところが縄文人が発見した糸魚川ヒスイは複数の鉱物が混じった岩石で、ここが非常に示唆的だと思う。

すなわち四季折々の気候と沿岸部から山岳部まで複雑な地形を持つ日本列島の風土が育んだ多様性である。

完成した「墨流し裏勝り」は、不純物が多いと一般的には製品化されることのない鬼っ子ヒスイ。

ガラスのような半透明の部分は沸石という不純物で、普通はカットされて捨てられてしまう部分。

不純物でも綺麗じゃないか!


でも私は美しいと思ったから石笛を作ったし、作って良かったと思う。

多様性こそ美しい。

それにヒスイのピュアな部分(ヒビなし・緑一色など)だけを切り売りする時代もそう長くは続かないと思うし、ヒスイ職人はこれまで顧みられなかったヒスイの美しさを見出して作品化していく努力は必要だろう、と思う。