縄文人(見習い)の糸魚川発!

ヒスイの故郷、糸魚川のヒスイ職人が、縄文・整体・自然農法をライフワークに情報発信!

希代の自由人、川の人、私の師匠、野田知佑さん逝去・・・名著「日本の川を旅する」

2022年03月30日 23時11分22秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画
水遊びの師匠、文章の師匠、生き方の師匠だったカヌーイストの野田知佑さん逝去の報道。享年84歳。
在りし日の野田さん。40代くらいか?
 
野田さんは、男なら孤独を楽しめ、誰にも知られず熊に食われたっていいじゃないか、と野垂れ死にする自由や日本のダム行政や河川行政のデタラメ加減も教えてくれた。
20代から何度も読み返している名著「日本の川を旅する」は、今は失われた70年代くらいまでの日本の川の美しさも教えてくれた。
 
激流を下る様子を「快!快!快!快!快!快!快!快!」と、1ページに渡って書いた文章に衝撃を受けた。
 
その文体は変化自在。改行なしでドストエフスキーみたいな長文も書く一方、真逆なヘミングウェイみたいな端的表現も巧みだった。
 
野田さんがどんな文体を使いこなしても、共通するのは詩情と郷愁、それと焚火の匂い。
 
川旅と映画と読書、孤独と自由を愛した希代の自由人の野田さんは、私に最も影響を与えた師匠のひとり。
 
自分のお金で、自分だけの時間を過ごす旅の紀行文の数々は、どれも面白いが、若い頃にカヌーと出逢った欧州ヒッチハイクの旅行記も好きだ。
ギリシャ哲学に興味をもって辞書を引きながら独学したギリシャ語が、ギリシャで「あなたのギリシャ語は2,000年前に使われていた言葉です」と笑われた逸話や「その男ゾルバ」の主演アンソニー・クインと出逢って話をした逸話などなど。
この頃の野田さんは、アメリカ人俳優のロバート・ショウに似ていた。
 
ずいぶんと昔に某アウトドア雑誌で、海・山・川のプロフェッショナルたちに「寒さ対策」を聞く企画特集の時、多くの人は新素材の衣類の紹介や着替えの重要性を説いていたが、野田さんだけは「濡れたら焚火で乾かせばいい。寒ければ酒を飲んで体の中から温めればいい」と、実にそっけない回答で、私はコレコレ!とほくそ笑んだ。野田さんは生粋の川の人。
 
毎晩深夜まで残業していたサラリーマン時代に、オフィス机にお守りのように入れておいたのが「日本の川を旅する」とヘミングウェイの短編「二つの心臓の大きな川」の二冊。
 
どこから読んでも面白く、数ページ、数行読むだけで夜空の下で焚火をした気分に誘ってくれた。心がすり減ってきたと感じたら読むといい本。
 
追悼に「日本の川を旅する」を読むことにする。

プロパガンダ!と叫ぶと反対陣営のプロパガンダに加担することにならない?・・・ロシアのウクライナ侵攻に思うこと

2022年03月30日 07時17分30秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画

ピンクヒスイの勾玉を納品にいったら、衆議院議員の梅谷守さん(立憲民主党)とばったり。

選挙前に、ぬなかわヒスイ工房にご挨拶に来ていただいて以来の再会に、肩を抱き合って泣いた(な~んちゃって)自然災害の多い糸魚川は自民党でないと駄目!という声も聞くが、地元選出議員の所属党派に関係なく、県や国は迅速に動いてもらわないと健全な民主主義国家とはいえない。自民党でなくても国政が動いてくれる健全な関係作り、古い秩序や既成概念をぶっ飛ばして欲しい。

 
で、現役の国会議員に、最近の国際問題についての疑問を聞いてみた。
 
日本政府が人道的立場から「ウクライナ難民」を受け入れるなら、パレスチナ難民も受け入れると表明して、力による現状変更を70年以上も続けるイスラエルへ経済制裁しなくてはいけなくなるのでは?が、質問の内容。
 
だから日本政府は「ウクライナ難民」でなく、「ウクライナ避難民」と言っているのですと、梅谷さんはなるほどの回答。
 
迂闊にも「避難民」と「難民」を同じに捉えていたが、かなりニアンスは違うし、例えば北朝鮮の脱北者は「経済的な個人亡命者」ということになるのだろうかネ。そういえば中国政府は、脱北者を「難民」と言ってしまうと北朝鮮との外交問題になっちゃうから、食料を求めて越境してきた「飢民」と呼んでいましたネ。
 
人道的な立場からだけでは捉えられない国際政治は難しいが、逆に一民間人の立場では、冠番組で沈黙したタモリさんのように「人道的に心を痛める」と表明するしかないということか。
 
民間人がフェイクだプロパガンダだとSNSで騒ぐと、どちらかの陣営のプロパガンダに肩入れすることにもなり兼ねず、ここは人道的に戦争に反対という立場を堅持する必要を感じた。
 
昨今のSNSでは、我こそは正義の味方!とばかりに陰謀論を主張する人を見かけるが、そんな人は情報の過呼吸に陥ってるかのように一日に何度も投稿するので辟易する。根拠の曖昧な情報ばかりを投稿したり、不愉快なレベルの投稿ばかりする人にはブロックしたりしている。
 
 
 

極上のピンクヒスイとの出逢い・・・原石を使い切った達成感

2022年03月26日 18時01分20秒 | ぬなかわヒスイ工房
ピンクヒスイは砂糖菓子のようなざらついた質感というのは思い込みだった。
同業者から小形勾玉を作って欲しいと託された小石ほどの原石は、ストロベリーアイスのような濃いピンクで、これほどの色艶の原石は滅多に出逢えるものでなく、緊張しっぱなし。
加工条件は1個作ってもらえれば、あとは好きに使ってよいとのことだったので、慎重に石目を読み5段階に分けてカットして3個分のプレートができた。柔らかい石なので高目の番手で根気よく平滑に研磨していったら、ピンクヒスイでは初めてつるつるの鏡面仕上げができて感激。
 
古代風の縦向き飾りでチョーカーに仕立ててみた。現在の主流は逆C字に見える向きを表にする飾り方だが、古墳時代のように縦向き飾りにした方がスッキリしてわたし好みだし、この魅力を同業者を通じて多くの人に知って欲しいとの思いがある。
 
全部で3個できたが、残った端材は砂利ほどの大きさもない小粒だけというくらい使い切った。綺麗に仕上げることができた上に無駄を出さなかったという達成感も得難い。
 
いちばん綺麗な勾玉は依頼者へ。他の黒い模様がはいった勾玉2個は自分用に。色が薄目で均一さはなく、ザラツキ感はあるけれども味があって好きだし、好きになれるように作るのが仕事に対する誠意。
 
 
 

 


日ユ同租論の誕生と15年戦争の関係は?・・・映画「戦争と人間」を深掘りしてみると面白い

2022年03月24日 07時59分29秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画
映画「戦争と人間」には、「戦争を食い物にする死の商人」として振興財閥が出てくるのだが、現在の日産自動車や日立に繋がる長州財閥系の「日産コンチェルン」がモデルだそう。
「日産コンチェルン」の創業者は鮎川義介。長州閥の大物の井上馨の甥。
 
「日産コンチェルン」を深掘りしたら、ドイツ在住のユダヤ人を満州に移住させる計画をしていたことがわかった。その理由はアメリカのユダヤ系金融家からの融資を取り付けるためだそうだが、これは最近の流行りの陰謀論などではなく、日露戦争時にユダヤ系資本家のヤコブ・シフ(ジェイコブ・シフ)から戦時外債の50%を引き受けもらい、辛うじて戦費調達ができて勝利した事例を模倣したのだろう。
日露戦争時の日銀副総裁だった高橋是清は、破産寸前の国家財政から戦費調達のために欧米の金融家を東奔西走して融資を持ち掛けたが、どこも日本の敗戦を予想して相手にされなかった。しかしロシア国内で弾圧されていたユダヤ人に救うために打倒ロシアを目論むヤコブ・シフとロンドンで出逢い、利害が一致してタッグを組んだ訳ですね。
ヨセフ・シフさんは、日露戦争に貢献した功績で勲一等旭日大綬章を叙勲している。
ユダヤ系金融家から融資を受けるこれら一連の活動は鮎川義介が発案し、内閣で承認もされた国策となり、俗に「河豚計画」と呼ばれる。この時は陸海軍にもユダヤ問題専門班が設置され、陸軍の通訳が戦後にトンデモ説の大物として有名になる酒井勝軍だったようだ。この辺りの事情から、日露戦争~昭和初期までの間にふってわいたように出てくる日ユ同租論や、酒井の青森のキリストの墓の発見となるようだ。
 
日本人の祖先がユダヤ人と言われても、イスラエル人の知人から「イスラエル人とは国籍を表し、ユダヤ人とはユダヤ教の信者」と定義を教えられたのだが、多神教の日本に一神教のユダヤ教が存続していないことをどう説明するのだろうか?
 
それは明治期はそれほどでもなかった天皇の神格化が進み、八紘一宇や神武皇紀といった皇国史観により、民族優越思想に彩られた全体主義国家になっていく昭和初期と一致する。そのターニングポイントが、1933年(昭和8年)の国際連盟脱退であったと半藤一利さんは書いている。
長州系財閥と軍拡の関係や、国家神道と日ユ同租論が満州事変から太平洋戦争に至る「15年戦争」に果たした役割などを深掘りしたら面白そうだ。
 
そういえばロシアのウクライナ侵攻でも、ユダヤ金融家の陰謀論やネオナチがどうのというプロパガンダが拡散されているが、本当のことは後年の歴史家が調べてくれるでしょう。
 
振興財閥の満州の出先機関には、三国連太郎さん演じる得体のしれない粗暴で冷酷な男がいるのだけど、この人物の説明が一切ないのに「なにがしかの犯罪がらみで日本にいられなくなった満州浪人・金のためならなんでもする・正社員ではなく金で雇われている鉄砲玉的存在」といった人物像が自然と浮かんでくるから恐れ入る。ロン毛の三国さんは息子の佐藤浩市さんに似ているのネ。
ちなみにこの映画ではロシア人スパイが三国さんに「黄色い豚」と呼んでピストルを突き付けているが、日本人を「黄色い猿」と侮蔑した最初は、日露戦争時のロシア皇帝ニコライ二世であったと、「坂の上の雲」に書いてあったような?
 
今時の日本映画なら、顔に力を入れて憎々し気な表情と大声を張り上げたセリフで悪事を働くところだが、三国さんも軍人たちも実に淡々と残虐なところが流石の山本薩男監督。
 
この映画、軍人などは実在の人物がたくさん出てくるが、他の登場人物もモデルがいそうだし、原作者の五味川順平は日産コンチェルン傘下の満州の鉄工所で働いていたことがあるそうで、原作を読む必要が出てきた。
 
 
 

戦争の起きる仕組みとリアリティはこの映画で勉強を!・・・「戦争と人間」全3部作

2022年03月21日 22時45分53秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画

戦争のおきる仕組みと実態を知りたい人におすすめしたいのが、日活で1970年から3年間に渡って公開された「戦争と人間」全3部作。

昭和3年に関東軍(日本陸軍の中国方面隊)が独断専行で自作自演の「張作霖爆殺事件」を起こし、邦人保護を理由に戦争を起こしたのが「満州事変」で、ここから上海事変や日中戦争(支那事変)、そして太平洋戦争までの泥沼の「15年戦争」になった訳だ。
 
上海事変の発端はロシアが主張するウクライナ侵攻の理由に似ているが、その正当性の是非や結果は、後年の歴史家に委ねるしかない。
 
この映画は昭和初期から太平洋戦争直前のノモンハン事件までの10年間前後の史実を丁寧に描き、雑多な登場人物が綾なす群像劇の形式になっている。
日本側は財閥・軍閥・満州浪人・マスコミ・生活苦にあえぐ庶民(労働者や娼婦など)、中国側は国民党・八路軍(共産党軍)・匪賊(馬賊)・朝鮮族パルチザン・庶民など、それぞれの立場が公明正大にきちんと描かれ、ラブロマンスもある3時間の大作が3部作もあるのに、ダレ場も齟齬もない神がかった作品。
 
古くは東映の戦争映画大作、最近では「永遠のゼロ」や「男たちの大和」が典型だが、ヒットしても「戦争を美化している」と酷評もされた映画には共通の特徴がある。第一に人気俳優の起用と特撮が売り。
 
戦争を知らない世代が祖父に戦争体験を聞き、当時を回想して物語が始まるといったベタな展開、状況や心理を長ゼリフで説明して大仰な演技で表現、史実を切り張りしつつ在りえない漫画チックなエピソードで繋いでいくお涙頂戴のストーリーなどなど、深い哲学を感じない安易な大衆迎合的な傾向があるのだ。
その点、この映画のリアリティは凄いの一言。メインヒロインは財閥の令嬢役の吉永小百合さんだが、サブヒロインの身売りされた貧困層出身の娘役がどこかで観たような南国風の別嬪さんで、ググったら日活女優の夏純子さんと判明。
夏純子さんは小学生の時に密かに恋心を抱いていた「シルバー仮面」の妹役の人だった。子供の頃から南国風のキリリとした美人が好きという好みは変わってなかった(笑)
 
兵隊さんも将官も軍帽を脱いだら、野球部員みたいに額に日焼けの痕がクッキリなんていうのは一例だが、この映画は歴史学者や軍事評論家が観ても納得できるレベルの考証をきちんとしている。
 
登場人物ひとりひとりにもリアリティがあり、カメラワークもストーリー展開も魅力的で、映画の中に引き込まれてしまう。
 
すごい映画だと感動していたら、エンドロールに「監督 山本薩男」とあって納得。
 
山本監督は戦前の東宝の黎明期から活躍していた社会派監督で、最高傑作は全国の農協婦人部の義援金で撮った明治から高度成長期の農村を舞台にした「荷車の歌」ではないだろうか。
 
戦争映画は東映がファンタジー路線、東宝は実録路線、松竹は人情喜劇路線、日活は???とイメージがあったが、ヒーローが登場しない地味だが骨太な戦争映画に金を出したとは、日活もやる時はやる。
 
 
 

冠番組で沈黙したタモリさんの金言・・・ロシアによるウクライナ侵攻に寄せて

2022年03月20日 06時30分46秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画

私はあまりテレビを観ないのだが、タモリさんが冠番組で沈黙を貫き、最後に人道的な発言のみしたことに賛否両論がでているらしい。

詳細は下記URLのヤフーニュースで!
https://news.yahoo.co.jp/articles/d3020b42e19b6fe18806cd2f4d9755c9f3ca0a16?fbclid=IwAR2UqXiI-6_n2NloC2omGjPZEz_qK9cPfUtFaF__cSgLjwDP68DrFeF_OnI
 
番組終了2分前に「こうしている間も、大勢の人がウクライナで亡くなっているわけですね、というより殺されているわけですから。いろいろとありますけど、一日も早く平和な日々がウクライナに来ることを祈るだけですね」とコメントした、とある。
 
中世のお公家さんのように奥ゆかしく、憲法9条を持つ日本国民に相応しい言動ではないか?
 
 
ヨットマンでもあるタモリさんは、旧帝国海軍由来の「列外のもの発言すべからず」という日本の海の男の矜持を持っているのだろうか?
私が遊ばせてもらっている「エズキズム号」も富山大会に参加したタモリさん主催のヨットイベント「タモリカップ」は、「人より早く走らせようとするのは心得違いな楽しい大会」であるらしい。
 
この矜持は作戦行動中に命令を受けていない立場の人が四の五のと横槍をいれるなという意味で、それが守られて成功したのが明治の日本海海戦。昭和になると大本営軍令部が現場に介入して失敗ばかりしていた。
 
われわれ日本の民間人は、戦争当事国の国民ではないから「列外」。
 
ところがアメリカの同盟国という国家単位となると、タモリさんのいうところの「いろいろとあるでしょうが」と何かとややこしい。
 
日本政府は人道的な立場としてウクライナ難民を受け入れると表明したが、正真正銘に人道的な立場を貫くならパレスチナ難民やアフガン難民も受け入れると表明しないと整合性がとれないし、イスラエルにも経済制裁しますと表明しないと(笑)そうはいかないのが「いろいろとあるでしょうが」という言葉に込められているのではないだろうか。
 
国際政治の「列外」にある一民間人として、憶測や政治を語らず、人道的なコメントのみをしたタモリさんに私は共感する。
 
 

 


戦争を芸能人ゴシップのように消費する社会・・・体験者の訴えを聴く

2022年03月19日 06時25分50秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画

各地の戦争で尊い人命が失われ続けるなかで、各国のプロパガンダ合戦や、戦争を知らない世代が茶飲み話のような憶測をSNSに流す風潮を、戦禍のただなかにいる人々や、先輩方はどう感じるだろうか。

先輩方とは、ご先祖が新潟に由来する著名な戦争体験者たち。

11歳の時にハルピンでソ連兵から撃たれ、母親を辱められた宝田明さんは、初主演作の「ゴジラ」の試写会の時、水爆実験で海底の眠りから覚めたゴジラが白骨化していく場面で号泣した。
陸軍上等兵として航空隊の偵察要員と新兵教育係をしていた三船敏郎さんは、紅顔の少年航空兵たちが特攻する前夜、「これがお前たちにしてやれる精一杯のことだ。遠慮せずいっぱい食え!」と泣きながらスキ焼を食わせた。
三波春夫さんはシベリア抑留生活中に、飢餓と過労で疲弊する仲間たちに、浪曲を歌うことで生きる希望を与えた。
東京大空襲を生き延びた「歴史探偵」の半藤一利さんは、打上げ花火の音が聞こえるだけで機嫌が悪くなった。
 
戦争は終結しても、戦争体験者の中で戦争は終わっていない。
 
史実と歴史観は同じではないのだが、SNSをみる限り明らかな史実誤認や、バイアスのかかった歴史観を史実と錯覚して、「これが真実!」と投稿している人が多いように思う。あたかも戦争を芸能人ゴシップのように「消費」しているかのようだ。
 
戦争体験を語るYouTube動画や書籍はたくさんあるので、その気になりさえすれば戦争のリアルを経験者に教えてもらうことはできる。
 
 
 

宝田明さんの終わらない戦争・・・戦争体験の語り部

2022年03月18日 09時09分32秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画
つい昨日、記者クラブで戦争体験を語る動画を人に勧めたばかりの俳優の宝田明さんが亡くなったとラジオニュース。
 
 
初代ゴジラはアメリカでもヒットしたが、水爆実験の結果に海底での眠りから目覚めた怪獣という反核実験テーマはカットされた怪獣映画だったが、のちにオリジナル版がアメリカでも公開された。宝田明さんは海外のゴジラ上映の際はゲスト招待され、「人間のエゴで眠りから覚まされたゴジラが殺されるのは理不尽で、初めての試写会のゴジラの最後の場面では涙がとまらなかった」と語っていたそう。
 
 
少年時代を戦時中のハルピンで過ごした宝田さんは、ゴジラ映画、ダンデイな二枚目、喜劇となんでもこなす東宝のドル箱スターであった一方、映画で流暢な中国語や達筆を披露することも多かったが・・・。
 
小学5年の時に日ソ中立条約を反故にしてソ連軍が満州に軍事侵攻、関東軍は在留邦人を置き去りにして逃亡し、ハルピンはソ連軍が暴行・略奪・凌辱を好き放題にする無法地帯となった。
 
宝田少年も自動小銃でわき腹を撃たれた。麻酔なしで裁ちバサミで摘出した弾丸は、国際条約違反のダムダム弾(鉛の散弾)だった。
 
日本人女性が白昼堂々とレイプされる現場も目撃した。
 
記者クラブでは語っていないが、宝田少年の家にもソ連兵が押し入り貴金属類を強盗、そして母親が隣りの部屋に連れていかれたが、その30分ほどの間になにをされたのかは母親が亡くなるまで聞けなかったと涙を流して語る動画もある。
 
命からがら帰国船の待つ港に到着したが、青酸カリで殺処分できなかった飼い犬がキャンキャン鳴きながらどこまでも追いかけてきた・・・本籍地の新潟県村上市で戦後を過ごした。
 
どんなに優れた芸術と言われても、ロシア文学、ロシア映画、ボリショイサーカスやボリショイバレイなどは途中で嘔吐してしまい、生涯触れることができなかった。太平洋戦争は終結しても宝田さんの戦争は終わっていなかった。
 
晩年になって戦争体験を語り始めたのは、人気商売だったことと、口にできないほどの体験であったから。
 
しかし昨今の日本の政治動向をみるにつけ、このままでは戦前に戻ってしまうと危機感を持ち、積極的に戦争体験を語るようになったようだ。
同じ新潟県人でもあり、シベリア抑留生活を送った三波春夫さんも最晩年に「二度と戦争は起こしてはいけない」と戦争体験を語り始めた。
彼らの戦争体験は、戦争を知らない世代への遺言。ちなみに満州鉄道の技術者だった宝田さんの父親が村上藩士族の家系で、宝田さん自身は朝鮮生まれの満州育ち。
 
ニュース映像で流れるドンパチは「戦闘」であって、「戦争そのもの」ではない。
 
戦争を知らない世代は、善悪二元論で戦争を語ったり、したり顔で国際政治や陰謀説を論じる前に、戦争体験者の言葉に耳を傾けるべきではないか。
 
もっと長生きして語り継いで欲しかった。ご冥福をお祈り申し上げます。
 

俳優 宝田明氏 「戦後70年 語る・問う」(29) 2015.8.6


普遍的なテーマを不偏的に描いた「独裁者と小さな孫」の旅・・・映画「独裁者と小さな孫」

2022年03月16日 07時17分13秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画

アマゾンプライムビデオでなにげなく選んだ2014年公開の映画が、ロシアのウクライナ侵攻に心を痛めていたタイミングにぴったりだったし、20代の時に起こったチャウシェスク大統領の独裁国家だったルーマニアの内乱を思い出した。

俳優もロケ地もジョージアだが、架空の軍事独裁国家で内乱が起こり、独裁者の大統領と孫が流浪の芸人になりすまして逃避行する物語。
 
逃亡生活の中で、山賊のような軍隊の実態や、弾圧と貧困に苦しむ国民など、自ら創り上げた世界を弱者の立場で目の当たりにしていく大統領と孫。映画では、独裁者の手先となり国民を弾圧してきた軍隊が、掌返しに追う立場になることにも容赦はしない。
 
ジョージアの人々の顔立ち、習俗と音楽がどことなくエキゾチックな雰囲気を漂わせていて、特にラストはギリシャ映画の名作「その男ゾルバ」を思わせる結末・・・現代版のギリシャ悲劇か。
 
観終わって気付いたが、過去と現在を繋ぐかのような固有名詞が二つしかでてこないのは、物語に普遍性を持たせるためと威圧的な大統領と純真な孫の二人組に、過去と現在を投影させて一人の人物として描いているのだろうか?
 
国際政治の泥沼こそ描かれていないが、善悪二元論的な単純な世界観や、過剰なセンチメンタリズムに陥らず、普遍的なテーマを不偏的に淡々と描いているところが素晴らしい。
 
映画封切りの直後に「ウクライナ騒乱」が起こり話題となったそうだが、心が痛む映画だ。
 
 

絵本「憲法くん」・・・テレビで会えない芸人、松元ヒロ

2022年03月14日 06時27分58秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画
かってはテレビで天気予報にパントマイムで当てぶりをする芸で爆笑させてくれた松元ヒロさんが、「テレビで会えない芸人」としてライブで大活躍していることを知って、Facebookで繋がることができた。
松元さんがテレビで会えないのは、マスメディアの自主規制スレスレの政治風刺をネタにしているからだ。永六輔、井上ひさし、立川談志らが絶賛したその芸は、憲法を擬人化した「憲法くん」という一人語り芸。
YouTube動画で「憲法くん」のライブの抜粋を視聴したら、憲法の前文をせつせつと朗読する松元さんの姿に感銘を受けたが、井上ひさしも「ヒロさんの朗読を聴いて、はじめて憲法の前文が韻を踏んだ美しい文章だと気付いた」と興奮して松元さんを称えたそうだ。
 
松元さんの故郷の鹿児島のテレビ局が制作したドキュメンタリー番組が評判となり、映画にもなったし絵本化もされた。
絵本も評判がよいとのことで、私の買った時点の「憲法くん」は、なんと12刷版のロングセラーになっていた。お子さんやお孫さんに買ってあげてください!買うならオンラインショップではなく、地元の本屋さんにお金を落としてあげてください!講談社の絵本「憲法くん」税抜たったの1400円也!
ライブでは元総理たちのモノマネをして、「アメリカ大好きなくせに、アメリカから押し付けられたから改憲しようっておかしくないですか?」と笑いをとった後に、「理想と現実がちがっていたら、ふつうは、現実を理想に近づけるように、努力するものではありませんか。」と訴える憲法くん。
生前の談志師匠は、「芸人てものはお客さんが言いたくても言えないことを代弁するもんで、今の日本で芸人といえるのはヒロ、お前だけだ」と評価した。
 
一家に一冊、絵本「憲法くん」を買って、子供たちと戦争と平和、憲法について語りあってはどうだろうか。