冬になって暇になったら工房に籠って練習しようと思っていた矢尻作りだが、何年も暇にならないので、ぬなかわヒスイ工房の仕事の合間に開始した。
矢尻作りの道具はシンプル。
黒曜石を叩いて小割するハンマー兼整形道具の鹿の角だけである。
木のハンドルが付いた道具は、私の縄文の師匠である古代技術研究家の関根秀樹先生のそのまた師匠である、和光大学名誉教授の岩城先生が誰でも気軽に矢尻作りができるようにと考案した、銅線を嵌め込んだ鹿角の代用品。
黒曜石は天然ガラスなので、硬い石や金属製品で加工しようとすると粉々に砕けてしまうので、原始人達は大割は石のハンマー、小割と整形は鹿角で打製石器を作っていたらしい。
しかし現代人が鹿角を入手するには難しい。
第一、どこで鹿角が買えるのか???
そこで岩城先生が考案したのが、銅線利用の鹿角の代用品という訳だ。
実際、使い比べると代用品のほうが扱いやすいのだ。
ユーチューブで検索したら、外人が同じ道具で打製石器を作っていたので、岩城流が外国まで広がっているという事・・・流石である。
左から栄養ドリンクの空き瓶、青い日本酒の空き瓶、クリスタルガラス、右端が黒曜石で作った矢尻。完成度は60点くらいかな?
黒曜石は購入品なので、練習はガラス瓶で行う。
ガラス瓶のほうが硬いので、これで練習しておくと黒曜石の加工はずっと楽。
矢尻が満足できるレベルになったら、次はナイフを作りたい。
「もののけ姫」の主人公、アシタカが胸に下げている「珠」とは、黒曜石のナイフ。
アシタカナイフが目下の目標だ。
この冬までに完成させたいもんだ。
縄文オカリナの新作!
縄文晩期(三千~二千五百年前)の秋田県能代市の麻生遺跡出土の土面をモデルにした縄文オカリナ。
表面がピカピカに磨かれており、黒く燻し焼きされている。
日曜は、友達の赤野さん一家を中心に、子供たち相手の縄文土笛つくりの教室。
毎回のことながら、子供たちはすぐに飽きて他の遊びに夢中になっていたけど、大人のほうが夢中になっていた。
実は縄文土器つくりも土笛つくりも、泥んこ遊びの延長なのだ。
大人が子供に帰って泥んこ遊びしている姿は可愛い。
「見て~!」
子供の作品は、奇想天外なデザインばかりでニンマリしてしまう。
大人たちは、子供の喜ぶ顔が観たいと色んな遊びを考える。
でも当の子供はすぐに飽きて他の遊びに夢中になる・・・。
こんな現場を目の当たりにしていると、子供を支えている、という大人の想いが、実際には子供に支えられていると思えてくるのだ。
ありがとう、子供たち!
土笛を友達に見せて周っている。
どこでも受けるが、アニメキャラ以外の一番人気は埴輪形の土笛だ。
ブログやフェイスブックで見ていた人から、実物がこんなに小さいとは思わなかったという感想が多かったので、友達のお嬢ちゃんにモデルになって貰って大きさの比較写真を撮った。
みて~っ!って感じが可愛らしい。
モアイは予想通り人気。
縄文時代の土偶は一部の人にしか受けないのは意外でもあり心外だ。
縄文時代中期(五千~四千年前)の土偶をモチーフにした土笛。
子供には怖い印象を与えるようだ。
クニという概念できた弥生時代以降は、社会的には貧富の差や身分の格差が発生し、民衆の自由度は低くなっていた暗い時代と思っていたのだけど、埴輪には微笑ましい印象のデザインが多いのは何故だろう?
左手を頭に当てている埴輪を、私は林家三平形埴輪と呼んでいる(笑)
「ドーモ、スイマセンッ!」っていう感じしませんか?
福井県若狭町主催の「若狭縄文丸木舟競漕大会」に参加してきた。
前日までは晴れ時々雨という天気だったが、当日はピーカン。
オープンセレモニーで選手宣誓をさせてもらい、大会の間は「新潟県糸魚川市、ヒスイ、日本海縄文カヌープロジェクト」という場内アナウンスを何度もしてもらったし、中日新聞、福井TVからも取材を受けたので、糸魚川の宣伝になった。
結果は日本海縄文カヌープロジェクトとして2組参加したうち、私と竜太組が準優勝。
赤野、天野組が予選敗退。
竜太・山田艇は準決勝でのタイムは二位に2秒の差を付けていたので、実に惜しい準優勝だった。
レースは三方五湖に流れ込む「はす川」を会場に、五隻同時に80m先にあるブイを回ってラスト20mの直線までの順位を競うというもの。
手前は赤野さん(後ろ)と天野さんのチーム。
若狭の縄文人が「行くでえ~!」と声をかけてから竹竿をパシャンと水面に打ち付けるのがスタートの合図。気の毒に炎天下で一日中この作業をしていた。
竹パッシャンの合図で一斉にスタートするが、五隻が綺麗にスタートできるのは稀(笑)。スタートできても途中から迷走する艇が続出していた。
中にはスタートと同時にコースを外れて、あらぬ方向に進む艇も。
手前の艇は、縄文人に扮装した地元の介護職員で、バランスを崩して沈没してやんやの喝采を浴びていた。
80m先のオレンジのブイを周って、コースを20m折返してゴール。
1個のブイを5艇が周るので、転覆やコントロール不能になって対岸へ行ってしまう艇が続出・・・DJが面白おかしく実況中継していた。
片側だけを漕ぐシングルパドルは難しいし、使用艇も縄文時代の丸木舟のFRP製レプリカだから舵など無く、直進すら難しいのだ。
決勝での竜太・山田艇は、準決勝二位通過の京都から参加した林さんの艇の出鼻を抑えるべく、コースを左に寄せて時計周りに最初にブイを周ることができた。
ここまでは作戦成功・・・ブイを周った時には優勝を確信したが、好事魔多し!
なんと遅れてきた二隻が半時計周りでブイに殺到してきたので、ブイを周って直線コースに入る直前の我々の艇の横っ腹に乗り上げてきた。
転覆は免れたが、竜太君の脇腹に相手の艇の船首が当たり、肋骨骨折の危険もあったのだ。
海上では右側通行であり、衝突の危険においてはお互いに右に回避するのが国際的なルールだ。
またヨットやウインドサーフィンなどのレースでは、先行している艇の針路妨害はしてはいけないことになっているが、この大会は海や水上レースに詳しい人のいない行政主催だから、大雑把なルールしかない。
お遊びのレースと言えども全国大会と銘打ったレースなので、ルールの不備が非常に残念。
転覆だけなら笑えるが、実際に骨折の危険もあったので、今後は改善は必要だろう。
有り得ない追突事故で漕げないでいる内に、林艇に追い抜かれてしまったのである。
表彰式。右から3人目が喋りっ放し、立ちっぱなしで大会を盛り上げていたDJさん。
後から動画を観ると、林艇とのゴールでの差は3mほど。
タイム差にして1秒くらいのものなのだ。
我々のロスタイムが3秒くらいだったので、追突が無ければ準決勝の順位と同じく、2秒くらいの差で優勝できたのだ。
勝負に勝ってレースに敗けたというのが実感。
チーム日本海縄文カヌープロジェクトの面々。来年の雪辱に向けてみんな燃えている。準優勝の賞金3万円は交通費として一部分配して、残金は活動費として貯金。
副賞の地酒は慰労会で飲むことになった。
パフォーマンス賞があるので、ウケ狙いの参加者も多かった。
フンドシ組は隣町の役場職員。
行政マンがこんな姿で参加しているのも、新潟では有り得ない光景。
福井の人達は明るいのだ。
フンドシ組はレースの後に、ずれて大事な部分が観えていると指摘され「ヒャー!」と慌てていた。微笑ましい風景。
縄文人に扮した介護施設の職員。
縄文人というよりは昔のゴジラ映画に出てくる南洋の土人でしょ?って突っ込みも(笑)。転覆してやんやの喝采を浴びていた。
日頃鍛えたパワーにものを言わせてガシガシと漕いでいた自衛隊組。
町役場職員、介護施設職員、自衛隊といった公務員や団体職員の仮装参加には、非常に好感が持てたし、オープニングセレモニーも新潟よりは手短で好印象。
新潟のイベントでは、偉い人たちが次々と出てきて、大上段に構えた長い演説をするのが恒例だ。
その点、福井はザックバランでヨロシイ。
竜太君も福井県は優しい人が多いと実感したようだ。
敗退した参加者が勝ち残った参加者に頑張って下さいと握手して激励したりと、大会も和やかな雰囲気。
大会の間中、プロレス中継のような快活なアナウンスをしていたDJさんも、大いにそんな雰囲気を盛り上げてくれていた。
嬉しいことに後日、優勝した林さんから、10月に糸魚川の雨飾山に登山に来るとメールを頂いた。
こうやって縄文、パドルスポーツをきっかけに、各地と繋がっていく事こそが、この大会、そして日本海縄文カヌープロジェクトの存在意義だと思うのだ。
来年はリベンジせねば。
打倒、林!
若狭町のみなさん、ご苦労さん。佳き大会を有難う。
また来年お会いしましょう
ゴキゲンヨ~!
フォッサマグナで地質構造的に東西日本の境界に位置する糸魚川市。
地質構造的だけではなく、文化的な東西の境界であることも有名で、民俗学の本にもよく紹介されている。
その境界とは概ね、上流部にヒスイ原石の露頭がある姫川だ。
生物界でも鬼蜘蛛の巣の張り方や、源氏ボタルの発光周期も姫川を境に違うと聞いている。
8月に「ぬなかわヒスイ工房」に遊びに来た東京のお客さんを長者ケ原遺跡に案内したら、カタツムリを見つけて喜んで写真を撮っていた。
糸魚川市のガイドブックに、カタツムリの渦の巻き方までもが違うと紹介されているとの事。
初耳である。
私もカタツムリの写真を撮ってネットで調べたら、右側のカタツムリの渦が右巻きで、左側が左巻きであるとの事で、左巻きカタツムリは全国的にも珍しいのだと。
だからどうした、と言われても困るけどねえ・・・。
10月に予定されている縄文土器の野焼きまで待ちきれずに、乾かしてした土笛を焼いた。
モアイ揃踏み。海岸に並べてみたい感じだ。
アクセサリーとしても使えるようにペンダント仕様になっているが、演奏する時に笛を落として壊さない工夫でもある。
石笛のプロ演奏家や神職さんの顧客が多い「ぬなかわヒスイ工房」が作るから、演奏用の笛として機能するのは当然!ちゃんと音色の調整と、音階変化ができる工夫がされているのだ。
この埴輪を観る度に、「どうもスイマセン!」と額に手を当てる林家三平を想い出す。
縄文時代の土偶は、オドロオドロシイ印象を与えるが、古墳時代の埴輪は剽軽な感じのものが多い。
叫び!・・・中央の黒い土笛は、焼成の後に「炙り焼き」という炭素を吸着させた技法によるもの。縄文晩期(三千~二千五百年前)に流行る焼き方で、当時は焼成直後の熱い土器を松葉などに包んで行っていたと推定されている。
縄文時代の土偶をモデルにした土笛。
信州の土偶をモデルにした土笛。
コダマ、大魔神、アンパンマン!予想通り、友人の子供たちに見せたら「チョーダイ!チョーダイ!」と大合唱になったので、暇になったら友人宅で土笛作りの体験会をすることになった。
著作権のないキャラは、ぬなかわヒスイ工房ネットショップで売ってやろうかな。
石笛と違って造形に制限を受けないので、作っていてアイデアがゾクゾクと出てきて困っているのだ。
ぬなかわヒスイ工房では、誰もやっていない作品開発を意欲的にしているが、新しい世界が開けてくる感覚って好きだし、人の真似やパクリは面白くない。
9月14日に、福井県若狭町主催の「縄文丸木舟競漕大会」というイベントに出場する。
若狭町には「鳥浜貝塚」という縄文前期(六千~五千年前)の遺跡があって、完全な形を保つ六千年前の丸木舟が出土している。
そこで若狭町は、三方五湖という大きな汽水湖と丸木舟をテーマにした地域活性化活動をしており、今回はその一環として出土した丸木舟のFRP製レプリカでのレースをすることになったのだ。
大会は二人一組でのトーナメント方式のレースで、日本海縄文カヌープロジェクトからは二組が参戦。
優勝すれば、初代丸木舟王者の称号と賞金5万円!
大会事務局からは、当日の選手宣誓を頼まれた。
もしや優勝候補と目されている?
事務局にアウトリガーカヌーやシーカヤックなどのアスリートクラス、経験者出場の有無を尋ねたら、詳細不明だが成人男子クラス30組程の出場予定のうちにはいないらしい・・・優勝するかも!
みっともない姿を見せられないので、クルーの竜太と泥縄式のトレーニングをした。
なんたって優勝候補だからさぁ・・・。
課題は、レースに使用する丸木舟が椅子無しで直に船底に座るらしいので、漕ぐ時の適正な座る形の確認とクルーとのピッチを合せること。
往年のウインドサーフィンの名艇、ウインドサーファー艇でトレーニング。
開発されてから50年も変わらないデザインは、初心者から上級者まで幅広く楽しめるという証し。
シングルパドルのトレーニングのみならず、立って漕げるほどの浮力と安定性があるので、サップが買えない人のトレーニングにも最適だ。
この艇は世界で一番売れたウインドサーフィンの板だから、バブル期の流行時に買って現在は不要になった艇がゴロゴロしている。
正座だと前傾姿勢が取り易く、左右バランスも取りやすかった。
胡坐だと前傾姿勢が取れずに、生の腕力による手漕ぎになってしまうようだ。
パドルスポーツは、いかに腕以外を上手に使うかで艇速と持久力が違ってくる。
正座に次いで良かったのが、片膝を立てた座り方。
もう一つの課題は、今回は50mの直線コースの折返し100mのタイムレース方式なので、速度を落とさずにブイを回る訓練も必要だ。
能生町の弁天岩~とっとこ岩までの往復と、艇速を落とさずに岩を回る訓練を半日みっちりやった。
竜太が空気を入れて膨らませる方式のiSUP(インフレータブル・スタンドアップ・パドル・ボード)を買ったので、二人で乗ってトレーニング。
大人二人が乗っても余裕の浮力なので、色んな遊び方ができそうだ。
とっとこ岩。とっとことは、糸魚川方なのだ。言でニワトリのこと。
この岩の周辺は浅いから、泳ぐかパドルボードじゃないとアクセスできない所がいいところ。
ジェットスキーなどが来ないので静かなのだ。
縄文式土笛の質問があったので、構造と作り方を公開。
息を吹き込む孔がある中空構造を作ると、取敢えず音は出る。
鉛筆キャップやビール瓶を吹いて遊んだことのある人なら簡単。
ただ、良い音色の土笛を作るにはそれなりのノウハウがある。
吹き口のアップ。吹き込んだ息の半分から七割くらいが中空の中に入ってくれることが重要。エッジの工夫がいるのである。
吹きながら、エッジの微調整をしていくと、綺麗な倍音が出てくれる。
裏には音階調整用の指孔を開けたが、これは好みで無くても大丈夫。
指孔付きの土笛を作っていて閃いたのが、石笛にも指孔を開けるというアイデア。
友人の石笛仙人、守山鷲声さんはアメージンググレースを始めとした複雑な曲を演奏しているが、石笛で自在に音階調整するのは難しい技術。
試作したら、能管みたいな音色の石笛が出来た・・・すぐに売れた!
大魔神みたいな複雑な造形に挑戦するのは面白い。
造形が終わったら一週間ほど自然乾燥。
焚火の周りで炙り焼きして、土笛の色が赤くなってきたら野焼きすればお終い。
土器と違って短時間に焼けるので、七輪コンロでも焼ける。
以上!
8月に縄文土器講座講師をしたら、久し振りに土器の創作意欲が湧いてきた。
土笛作りである。
子供達に既成概念から離れた遊びを提示するために、キティーやムンクの叫びをモデルにした土笛見本を作ったのだけど、講座が終わってからも次々とアイデアが湧いてきて、ぬなかわヒスイ工房の本業そっちのけで作り始めてしまった。
埴輪、モアイ、縄文の土偶、叫びのバリエーション、もののけ姫に出てくる森の精霊「こだま」、大魔神、アンパンマンなどなど・・・。
土偶形土笛のモデルは、青森や信州の土偶が多い。
首からぶら下げられるペンダントにしてある。
土偶そのままだとアクササリーや土笛にならないので、あくまでもデザインは創作。
意外にも大魔神は簡単に作れた。リアルに作るには小さ過ぎるのが残念だが、眼を点にして汗を流す大魔神も悪くない。なんか戸惑っているよう。
あんまり面白いので、アニメキャラ以外の土笛は、ぬなかわヒスイ工房ネットショップでも売ってやろうと目論んでいる。
縄文式の土笛の音の出し方は石笛と同じだから、石笛初心者の練習用である。
石笛も新しいアイデアがドンドンと湧いてくる・・・時間がなくて困っている。