縄文人(見習い)の糸魚川発!

ヒスイの故郷、糸魚川のヒスイ職人が、縄文・整体・自然農法をライフワークに情報発信!

ノーマンさんに学ぶ縄文・・・映画「狩人と犬・最後の旅」

2018年06月30日 15時14分10秒 | サバイバル

予備知識ないまま映画「狩人と犬・最後の旅」を観た。

大首飾り製作で休みなく働いているので、せめて週に何度かレンタルDVD映画の鑑賞をしている内の1本。

 

美しい映像に息をのむが、主人公がカヌーや馬で急流を下る場面、チェーンソウ無しで手道具だけでログハウスを作る場面、犬ぞりの場面などのリアリティーが半端なく、主人公の存在感も凄いので、途中から俳優の演技ではなく本物の狩人だと確信した。

極北の朝日と夕陽に拘った映像美が凄い!

主人公ノーマンさんの動きや道具扱いのうまさと仕事の手際の良さ、なにより存在感が凄い!

メイキング映像を観たら、やはりアラスカで50年も狩猟生活をする狩人ノーマンさん本人主演によるセミドキュメンタリー映画だった。


生態系の頂点に立ち、絶妙にバランシングする役割を担う彼は「俺も動物の一員だよ。」と語る。どんな局面でも静かに淡々と対応するホンモノのリアリズム!

監督は自身が冒険家でもあるフランス人のニコラ・ヴァニエで、北極圏を犬ぞり旅行中にノーマンさんと知り合ったとか。

 

環境問題、アウトドア、サバイバル、そして縄文に興味のある人にお勧めしたい名画。

北に旅したくなってきた。

 

 


恐るべし、ミャンマー人の観察眼・・・ミャンマーヒスイ

2018年06月28日 09時14分46秒 | ぬなかわヒスイ工房

お得意様から加工して欲しいと送られてきたミャンマーヒスイの原石が非常にアヤシイ(笑)

原石内部の色合いを確認するために原石表面を部分的に研磨した部分を窓というのだが・・・。

窓の部分をカットしてみたら色は窓の表面だけで内部は色が入っておらず、ヒビだらけで結晶は味の素なみに粗いという三重苦ヒスイ。


カットすると茶色い部分でバラけてしまうし、研磨しても綺麗になってくれないので、加工には向かないヒスイ。


ヒスイの産地に限らず、アマチュアの人が加工用に購入する場合は、板状になった原石の購入をお勧めします。
それにしても色のある部分だけをピンポイントで見つけて、窓を研磨したミャンマー人の観察眼に感嘆する。

 

 


崖から縄文土器!

2018年06月26日 21時59分14秒 | 縄文

有名な登山家だけど、好事家を自称するA田さんが自宅近くで土器の破片を拾ったとのことで、仕事を放り出して現地確認に急行。

状況がわからなかったので取敢えず持参した発掘セットは使わなかった・・・文化財保護法があるので素人が勝手に遺跡を発掘しては駄目なのです(笑)

A田さんが土器片を見つけたという標高100mほどの山の中腹を拓いた切通しに案内してもらったら、確かに法面に剥き出しになった樹の根っこの中に幾つか土器片が露頭していた。

地主の方に連絡して土器片を拾い集め、土器片を水に漬けてから古歯ブラシで丁寧に洗ってみたら、長者ケ原遺跡出土品に多い縄文中期(四千~五千年前)の北陸系土器のようだ。厚みは平均で1㎝でけっこう厚め。

 

切通しの上は田んぼで下は林だから、往時は三~四反ほどの小段状の狭い平地だったのではないだろうか。

付近には鮭が遡上する谷もあり、海まで歩いても30分くらいで、すぐ近くに小川もあるそうだ。

海に面した北向き斜面なので厳冬期は季節風が吹き付け過酷な環境だろうが、水、食料の確保は問題なし。

大雨でも振ると土砂に埋まってしまいそうな場所だから、道端に土器片が落ちていたら拾い集めておいて下さいと伝えて帰宅。

翌日、A田さんは教育委員会に連絡したら、はやり中期の遺跡がある所らしく、拾い集めた土器片を区長さんに預けて一件落着。

自宅近くに五千年前の縄文人が住んでいた事を知って、縄文好きのA田さんは喜んでいた。

縄文好きで無いにしろ、もしかしたらご先祖?と想像すると愉しいし、地元愛も沸くというものだ。

 

 



吉井宿の火打ち金仙人・・・高崎市のあかりの資料館

2018年06月25日 07時42分23秒 | ぬなかわヒスイ工房

所用で訪れた高崎市吉井町が、江戸時代に「西の明珍、東の吉井」と謳われたブランド火打ち金の「吉井本家」発祥の吉井宿であることに現地で気が付き、ひょんなことから自宅で「あかりの資料館」という無料私設博物館を営む館長の指出(さしで)さんと知遇を得た。

吉井郷土資料館発行の解説書には、火打石の歴史から使用方法までが詳細に記載されており、差出さんが実演モデルにもなっている。

火打石の実演をする差出館長。火打ち金や灯り文化に並大抵ではない見識とコレクションを持ち、話していて愛情をヒシヒシ感じる。


展示品の説明が無いような「予算があるのでとりあえず作りました!」という感じの公立民俗資料館は数あれど、あかりの資料館は説明書きの詳細さと収蔵品の希少さに驚くが、差出館長の情熱の現れだろう。

 

敬意を持って「火打ち金仙人」と呼ばせていただくが、コレクションの中には根曲がり竹やダケカンバの樹皮の燭台などもあり、訪れるとサバイバル技術のヒントになることは請合える。

乾燥させた根曲がり竹を鎌に開けた孔に差し込むだけという、目からウロコが落ちる簡素な燭台。明るくはないだろうが知っていればイザという時に役立つ生活の知恵。
樹皮を剥いで丸まったままを燃やす燭台は、白樺とあるが恐らくダケカンバの樹皮だと思う。円筒形に丸まったダケカンバの樹皮は現在でも薪ストーブの着火に使われるためか、海岸に漂着していることが多く、5年前の海のヒスイロード検証実験航海の時は焚火の焚き付けで活躍した。
 
 
差出さんと1時間ほど話し込んだが、本職はボイラー設備会社の社長で、趣味が高じて私財をなげうって自宅横に「あかりの資料館」を作ったのだとか。
近頃は差出さんや青森の左京窯さん、オランダの考古学者イローナ先生のような本気の人に出会う事が多く、有難い。
 
取材を受けたりで多少の縁があるビーパルやフィールダーといったアウトドア雑誌で取り上げて欲しいものだ。
 
 

青森の縄文人(見習い)来る・・・左京窯さんの箒

2018年06月21日 00時06分28秒 | ぬなかわヒスイ工房

国宝指定の「合掌土偶」で有名な是川遺跡のある青森県八戸市で、縄文をテーマに陶芸をしている左京窯さんご夫妻が訪ねてきてくれて、初対面で意気投合。

語り合っても語りつくせない得難い友となった。

お土産に手作りの掃除セットを頂いた。

素材の栽培から始めた箒は数あれど、左京さんの箒はコシが強く使いやすいのは無論だが、凛然とした姿は「用の美」も備えた工芸品クラス。

 

私が得意とする石笛も、よい姿のものは音もいい。

この箒なら茶人の眼鏡に適って、お茶室の掃除にもうってつけだろう。

丸みがある柄の先端を掌に収めて持つと自然に背筋が通り、手首・肘がピタリときまり、腰が入る感じは単に埃を掃くだけでなく、祓い清めの祭器にさえ思えてくる。

 

モノは作り手の人生を投影している。
このような箒を作る人は、人生の達人に違いない。


左京さんご夫妻をヒスイ拾いに案内したら、小型磨製石斧にピッタリの綺麗な軟玉ヒスイ(ネフライト)が拾えた。

最近は縄文をテーマにした各分野のクリエーターの訪問が増えているが、左京さんほどガチに取り組む人は滅多におらず知識や経験も半端ないので、長者ケ原遺跡のガイドでも専門家なみに反応がいい。


手間暇を掛けた高価そうな箒でも解る人には解るらしく、クラフトフェアでは値段も聞かずに買う人もいるとか。
私もこの人なら、という人に左京さんの箒や陶芸作品を紹介したいし、何時しか縄文テーマの合同作品展が開ける時が来るように、と精進を重ねたいと思う。




自家製ベンガラでもののけ姫ごっこ・・・縄文人のミネラルパラダイス糸魚川

2018年06月18日 20時09分13秒 | こんなモノ作った!

ぬなかわヒスイ工房に遊びに来た後輩一家に「もののけ姫ごっこしよう!」とそそのかし、若いお父さんの顔に水で溶いたベンガラを塗った。

天然素材顔料といってもベンガラは大正時代に酸化セリュームが登場するまでは玉類の最終研磨剤にもなっていたくらいの超微粒子で、顔を洗ってもなかなか落ちないと事前に説明してあるが、子供が喜ぶならと勇気を出してくれた(笑)


興味さえあれば、糸魚川には遊びの素材が豊富。私は鉱物由来で9色、葡萄蔓で作った木炭も入れれば全10色の顔料を作っている。

胡粉で白く彩色したウナリ木

 

土で顔料を作ると鉱物学・美術史・歴史・工作・化学が遊びながら自然に学べる総合学習ができる。

ナショナルジオパークといっても、鉱物学や地質学以外の面白さや学びのベクトルが無いのは勿体ない。
今こそ糸魚川は縄文人のミネラルパラダイス!と声を大にして叫びたい。




琅玕 ヒスイとかぐや姫・・・還暦祝いの勾玉象嵌カンザシ

2018年06月15日 07時30分13秒 | ぬなかわヒスイ工房

高校の後輩が、お世話になった方への還暦祝いにと勾玉を象嵌した簪を注文してくれた。

木部も自作しているヒスイ勾玉を象嵌したカンザシは、物凄く使いやすいという京都の職人さんが作ったカンザシをベースにしており、残念ながらその職人さんは高齢で仕事を止めてしまい、同じ寸法・形状で作って欲しいと頼まれたのが最初。

奇しくも私もお世話になっている方に還暦祝いを贈る予定だったので、還暦祝いらしいラッピングを工夫。

竹から産まれたかぐや姫をイメージしてみたが、天岩戸開きと同じく再生と死を象徴しているような・・・。

還暦祝いです!と、贈られた方が渡された竹筒から意外な物が出て来て「うわぁ~!」と驚く顔を想像しながら作った愉しい仕事。

 

残念ながら諸般の事情から引き取りが一月以上遅れてしまい青竹が色褪せてしまったが、極上ヒスイを琅玕 (ろうかん)と呼ぶのは、青竹のような鮮やかな緑、またはそのような貴石という意味の中国語に由来するらしい。

緑色は若々しく旺盛な生命力の象徴、英語で新人をグリーンボーイと言ったりもする。

縄文人もそんな想いをヒスイに感じて尊んだのかも知れない。

 


求む、切子玉のルーツ情報・・・大首飾りプロジェクト

2018年06月13日 23時26分48秒 | ぬなかわヒスイ工房

迂闊にも八角柱で作ってしまった切子玉のリベンジ!

フロスト加工して完成した切子玉。孔が三角錐になっているが、これは実物がそうなっているから同じにしたのだけど、私は超音波孔開け機で極細の孔を開けてから実寸法通りに広げており、これが一苦労なのだ・・・残り55点!

 

水晶の原石を分けて頂いた甲府の加工名人は、「私らは14面体の切子玉くらいなら墨付けせずに手の感覚だけで作れるが、10年は年季がいるねぇ・・・あんた大丈夫?作ってやろうか?」と心配してくれた(笑)

私は曲面だけで構成された石笛や勾玉くらいしか作っていないヒスイ職人だから、平面だけで構成された切子玉作りを心配してくれるのも無理はない。

初心者は初心者らしく、手の感覚を基本としながらきちんと墨付けしているが、やはり難しく、如何に研磨技術が稚拙だったかと思い知らされた。

正確に墨が打ってあっても、その通りにまっ平に成形してシンメトリックにするのは難しいく、平らに作ったつもりが微妙に波打っていたり、結合点が一致していなかったりして、修正するうちに実寸法より小さくなってしまったりと苦労が絶えない。

 

さて、常々疑問に思っていることがある。

私は同じ寸法、形に作りさえすれば大首飾のレプリカとは考えておらず、古の職人達の意図や想いを汲み取り、理解した上でないと内実が供わないと思う。

そこで色々な資料を漁り、有識者に問い合わせたりしいるのだが、切子玉について疑問が解決しておらず、どうもスッキリしないのだ。

大正時代に京都帝國大學で出版された「出雲上代玉作遺物の研究」の中に、六角柱をした水晶の結晶に孔を開けた「水晶下げ玉」の記述があり、切子玉との関係性を示唆した記述があるものの、出土時期などが記載されていないのだ。

 

もしや切子玉は水晶の結晶をそのまま装飾品にした「水晶下げ玉」をルーツとし、抽象化・洗練化した装飾品ではないか?

出土時期が「水晶下げ玉」が先で、切子玉が出土するようになってから作られなくなったになら、私の推測も満更ではないのだが、どなたかご存知の方がいらっしゃいましたら、よろしくご教示下さい。

それが解った上で作るのと作らないのでは、まるで違うと思うのです。

 

 

 

 


世界初?八角の切子玉を作ってしまった巻・・・大首飾りプロジェクト

2018年06月10日 20時18分39秒 | ぬなかわヒスイ工房

大首飾りに含まれる63点の水晶製切子玉作りを始めた。

六角柱の14面体である事は解っているハズなのに、何を勘違いしたのか八角柱の20面体で作ってしまう失態・・・8点作った時点で気が付いて良かった。

世界初の八角柱の水晶製切子玉を作る偉業を成し遂げたのだと、ポジティブシンキング(笑)

試作品ではちゃんと六角形で作っていたのだが、どこで八角柱だと思い込んでしまったものか不思議。

正しい切子玉。初期の出土品には、6面体の水晶の結晶を半分に切って作った細長い装飾品もあるので、切子玉は結晶の抽象化ではないかと推測している。


納品できない失敗作ではあっても、20面体の接点と接線を一致させたシンメトリックな形状、かつ実寸法通りに完成させるコツを掴んだし、出土品っぽい氷砂糖のような質感、古びた黄ばんだ感じを出す事に成功したので、習作だと思えば気分は軽い。

平面を正確に作る技術さえあれば、丸玉を作るより簡単だと思う。

因みに勾玉類は、実測図と写真が個々にあるので首っ引きで作っているが、切子玉・管玉・丸玉は縦×幅(直径)の寸法と孔直径だけが記載された実測表しかなく、六角柱でも八角柱でも同じ寸法に作る事はでき、今回のような勘違いもあり得るのである。

中央の透明感のある切子玉は艶消し研磨していないもので、周りは艶消し研磨済の完成品。実物そっくりの古色感の出し方は企業秘密!

面の接点、接線をピッタリ一致させた上で実測寸法通りに仕上げるのも大変で、何点か失敗してやっとコツが掴めてきた。

幻となった八角柱の切子玉の製作工程(笑) 発注者の松阪市に大首飾り製作プロセスを報告する事になっているのだけど、言われるまでもなく自分の研究用に仔細に記録している。

 

ヒスイとまったく違う水晶の付き合い方も解ってきた。

水晶は非常にデリケートで、まるで箱入り娘のようだ。

 

 


木賊でシプシプ磨いたら談志師匠が苦笑い・・・大首飾りプロジェクト

2018年06月07日 08時34分11秒 | ぬなかわヒスイ工房

縄文以来、古代の石製品や木製品の仕上げ研磨に植物の木賊(とくさ)で磨かれていたという説があり、大首飾りプロジェクトの機会に友人宅の庭に生えていた木賊を株分けして移植した。


研草とも書き、現在でも柘植の櫛の最終研磨に使われているそうで、アイヌ語では木賊の茎で研磨する時のシプシプという擬音語がそのまま名前にもなっている。

耐水ペーパーと比べると600番より細かく、1000番より粗い感じ。

水晶勾玉の仕上げに乾燥した状態と生の状態で試したら、耐水ペーパーの方が遥かに効率はよく、煮たりとかの工夫も必要なのだろう。


落語好きの私は木賊と聞けば、出囃子の「木賊刈」に乗りながら、困ったような照れたような表情をして高座に上がっていた立川談志を連想する。

 


「いってぇ、どうなってんのかねぇ・・・やだねぇ、どーも!」と、苦笑いする談志師匠を連想した。