縄文人(見習い)の糸魚川発!

ヒスイの故郷、糸魚川のヒスイ職人が、縄文・整体・自然農法をライフワークに情報発信!

神様のお迎えと能登からの漂流物・・・来訪神、マレピト、あるいはやってくるモノ

2018年05月26日 08時16分51秒 | 民俗学ごっこ

ある日突然に、東京からのご婦人三人組が訪ねてきた。

糸魚川観光に来てから地元の人から面白い人がいると、ぬなかわヒスイ工房の事を聞いて興味を持ったとの事で、ダメもとで訪ねて来たのだという。

話しを聞いて驚いたのが、ご婦人の一人が私と浅からぬ縁のある浅草神社の三柱のご祀神、すなわち三社様のうち、檜前浜成(ひのくまはまなり)の末裔という事。

浅草神社は、浅草開拓の祖である土師真中知(はじのあたいなかとも)、檜前浜成(ひのくまはまなり)・武成(たけなり)の兄弟の三柱を祀ったのが縁起で、今年は土師真中知の末裔である浅草神社の宮司さんが、土師と改名すると聞いたばかり。

 

浅草神社のご神紋は三社様を投網で表した「三網」だが、これは隅田川の漁師であった檜前兄弟の投網に金銅仏がかかり、地元有力者の土師真中知に相談した所、これは尊い観音菩薩像であると真中知の屋敷に祠を作って祀ったのが浅草寺の始まりで、後に浅草寺の隣りにこの三人を祀ったのが浅草神社の始まり。

 

檜前兄弟も実在して現代に家系が続いているという事に驚いたが、つい数日前に終わった今年の三社祭では、私が長年に渡り神輿を担がせてもらっていた柴崎西町会が属する西部町会が二之宮、すなわち檜前浜成を祀った神輿が担当だったのだと、祭り仲間から聞いていたのだ。

七年前にUターン帰郷して以来、三社祭とご無沙汰だったので、ついに三社様が迎えに来た!(笑)

不思議な縁に感謝して、大首飾り作成を中断してご婦人たちを天津神社を手始めに市内各所にご案内した。

 

神話に興味があるというので、市内各地の神社と旧筒石漁港に案内した。


ここは舟屋が残っている事と、現在の糸魚川で最も漂流物が多い事の他に出雲風土記逸文に「越の筒石」とこの付近らしき記述があるので、神話好きにとっても面白い場所。


私が説明しながら歩いて10分ほどで拾い集めた漂流物は漆器の折敷膳、汁椀と飯椀の蓋、丸盆、下駄などなどだが、ご婦人たちに「能登から漂着した輪島塗らしい」と説明しながら観察したら面白い発見。


漆器に朱漆で持ち主の屋号、下駄の裏にも同じ焼印があり、漆器類と下駄が同じ所有者のものと判明。

 

古くから来客や漂流物は、マレピト、来訪神、寄り物として縁起が良いとされてきた。

屋号の付いた漂流物の持ち主と漂流物との物語、漂流してから私に拾われるまでの冒険譚、いったいどんなご縁があるのだろう?

漂流物は無言に物語りする・・・これが面白いのだ。


ご婦人たちは興奮して宝探しに夢中・・・ただのゴミがお宝に見えてくるから、漂流物の案内は面白い。

 

 


怪我の功名・・・大首飾りプロジェクト

2018年05月24日 09時58分46秒 | ぬなかわヒスイ工房

大首飾りプロジェクトは主役とも言える勾玉作りが始まって佳境に入りつつある。

懸案の一つの赤瑪瑙の染めが成功したので勾玉を作ってみたが、問題は研磨の具合。

ヒスイ、水晶、青碧玉の勾玉も含めて、通常行っているヒスイ製品と同じ乾式研磨による鏡面仕上げでは近代的過ぎて、歴史的遺物のレプリカらしくなくなってしまうのだ。

赤いのは自分で染めた赤瑪瑙の勾玉、緑は青碧玉の勾玉で、ヒスイに比べて非常にデリケートなので別の研磨法を模索している。

 

出土品を観察すると成形時の切削痕が僅かに残っていたり、石表面に多少のザラツキを残したまま柔らかい光沢が出ているので、この感じを表現したい。

研磨し過ぎずに研磨傷を残さず、柔らかい光沢を持った半艶仕上げは意外に難しい。

普段はあまり使わないフェルトバフで鈍い光沢を出して試作した勾玉を、監修役の國學院大學のU先生に送って研磨具合をチェックしてもらう事にした。

金環も含めて監修結果が出るまでは、しばし大首飾りから離れて通常業務に戻る。在庫品が無くなっているのだ。

 

折しも三条市のメッキ工場から、メッキを終えた金環が送られてきた。

文句あるか!のピカピカにメッキされた金環。「平成の大首飾り」を目指すので、それはそれでいいのだけど、ちょっと光沢があり過ぎる。

 

あまりにも綺麗過ぎたので、艶消し研磨したらメッキが剥げて銅下地が見えてしまう失敗・・・ダメもとで燻し銀仕上の薬品に漬けたら、ピカピカだった銀環が大首飾りの実物そっくりに古びてくれた。

怪我の功名というヤツで一安心。

右端が未処理で他は燻した古色仕上げ。10年もすれば露出した銅下地に緑生が出ていい感じになってくれそう。ついでに耐水ペーパーで軽く撫でて、実物にあるような研磨傷を付けておいた。

 

 

 

 

 

 


仕事疲れに猫と遊ぶ・・・大首飾りプロジェクト

2018年05月22日 07時56分48秒 | ぬなかわヒスイ工房

飼い猫の寿限無が初めての木登り。


先代のバット君は木登り名人で、よく工房前の柿木に登っては私の仕事を眺めていたが、彼女は危なっかしい。

一見、余裕に見えるが・・・。

足運びに迷うと、私をジッと見てアドバイスを求めてくる(笑)

降りたいのか登りたいのかウロウロして、どこに手足をおけばいいのか分からなそう。

案の定、降りる時に最後の枝で両手でぶら下がってもがいていたが、着地成功。

 

人が喋るように鳴き、呼べば「ミギャッ!」と鳴いて走り寄り、欠伸の時も「ア~・・・」と声を出す面白い猫で、仕事に疲れると遊んでもらっている。

 

 


「飲む青森」で心は青森旅・・・大首飾りプロジェクト

2018年05月20日 10時03分43秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画

青森旅の楽しみが、果汁100%うまいリンゴジュースが飲めること。
アオレン(JA青森)とシャイニーという二大ブランドがあり、最近は徒歩3分にあるスーパーでもアオレンのジュースが売っており、気持ちだけは青森にトリップしている・・・忙しくてどこにも行けないのだ(笑)

アオレンとシャイニーはリンゴの品種ごとにジュースが発売されており、紅玉好きの私には有難い。

 

アオレンとシャイニーは香料や砂糖不使用、水で薄めてない本物の果汁100%ジュースで、そこらに売っている100%濃縮還元ジュースは薄くて飲めない!と熱く語って教えてくれたのは、青森のガソリンスタンドのあんちゃん。

茶髪のちょいワルっぽい感じの若者だったが、青森のリンゴジュースを褒めたたえる姿から郷土愛が滲み出ていた。

因みに果汁を搾って短時間の熱殺菌で瓶詰めしたのが果汁100%ストレートジュースで、アオレンとシャイニーはこれだ。(酸化防止にビタミンCのみ添加)

100%濃縮還元と表記のあるものは搾った果汁を煮詰めて濃縮冷凍し、消えた香りを補うために香料と場合によっては砂糖を添加して、瓶詰め段階で水を加えて元の分量まで戻したジュース。

濃縮還元ジュースでも愛媛のポンジュースなど美味いのも稀にあるが、旅先で出会ったご当地ブランドのジュースを飲むたびに、旅の思い出が蘇ってくる。
「飲む青森」・・・喉から体に青森が滲み込んでいくのがよく解る。

 

 

負けるもんか!・・・大首飾りプロジェクト

2018年05月18日 22時20分57秒 | ぬなかわヒスイ工房

瑪瑙染め実験2回目は、前回で得た結果を元に焼成を熱効率と保温性のいいダッチオーブンで焼成したり、顔料を変えて溶液濃度も薄めるなどの工夫の他、加工途中の未成品と完成品も混ぜてみた。

アマゾンで検索したらダッチオーブンがなんと3,000円代で売っていて、あまりにもの安さに隔世の想い。

概ね実物に近いくすんだオレンジに変色してくれて及第点・・・だけど・・・。

熱膨張に耐えられず欠けてしまった完成品の八角玉・・・元の色はもっとキャラメル色っぽかった。


要するに角ばった形状の未成品は膨張応力による変形に逃げ場があり欠けず、緩かな曲面で構成された完成品では変形の逃げ場がなく耐えられないという事だろう。

痛い思いをしたが、これも学びとして受け入れる・・・とでも思わないとやってられない(笑)

一喜一憂の大首飾りプロジェクト、負けるもんか!と呟いて、前に進むしかないのでR!

 

 


生まれながらの冒険家!・・・結婚記念のBetter Haif勾玉

2018年05月12日 09時20分36秒 | ぬなかわヒスイ工房

お得意様から結婚記念に注文頂いたbetter haif勾玉を「宇宙卵マガタマゴ」と称し、趣向を凝らしたギフトボックスに入れて送ったが、ユーモアとして理解して頂けるか心配していた。


結果オーライで、式場に飾って頂けるそうで一安心。

「宇宙卵 マガタマゴ!割れやすいのでやさ~しく扱ってください」というメッセージを添えた(笑)

フェイスブックに投稿したらチョコに見えたらしいが、卵部分はプラスチック製のギフトボックス、モシャモシャの部分は梱包材で、容れ物の籠も含めて100均製品。

 

茶目っ気やユーモアも相手次第で嫌味になるので、こういう遊びは冒険的要素をはらんでいる・・・だから生まれながらの冒険家としてはやめられない(笑)

 

 


金環生地完成!・・・大首飾りプロジェクト

2018年05月10日 16時06分06秒 | ぬなかわヒスイ工房

大首飾りに没頭している内に、ぬなかわヒスイ工房の在庫が枯渇してしまい、連休中は石笛や勾玉の注文品作りに追われた。

貧乏暇なしだが有難い話し。

連休明けは懸案だった金環作りに挑んだが、この半年の間に試作と試行錯誤を繰り返し、ついに直径8㎜の銅製丸棒の曲げ加工に成功した。

実物の金環はC字形をした耳飾りだが、大首飾りの金環は欠けた部分がロウ付けされて閉合している。恐らく武四郎さんが大首飾りを仕立てる時に、職人に命じて塞がせたのだろう。

 

金属の中でも柔らかく加工し易い銅といっても、直径8㎜もある丸棒は簡単に曲がってくれるものではなく、焼きなまししてから指輪のサイズ直しの鉄芯棒に巻き付けて切断した。

理屈は解っていても焼きなましの加減や、綺麗に円環にするのは至難。

コイル状に丸くなった銅棒を切断したが、ロウ付けするので金属アクセサリーの糸鋸で精密に切断するより、グラインダーで切断したほうがハンダが乗り易くて具合がいいようだ。その後に成形、焼き入れして強度を出す。

 

ただし古墳時代の金環製作を研究した報告書を入手した所、当時は曲げ加工ではなく他の作り方をしていたらしいが、その方法だと素材の入手が無理なので、巻き付け加工した。

ロウ付けした後は金環を研磨・・・実物は僅かに加工痕や切削痕が残っているが、木賊(トクサ)で研磨した後に備長炭などで磨いていたのだろうか?

大首飾りは単にレプリカ作りではない「平成の大首飾り」を目指しているので、近代工具を持つ私としては徹底的に研磨した。

鏡面仕上げしたのは、千七百年前の職人仕事へのリスペクトのつもり・・・古代の先輩が納得してくれる仕事をしたいのだ。

 

完成した生地は、燕三条のメッキ加工工房で金と銀をメッキしてもらう。

都会には古色を出す加工をしてくれるメッキ業者もいるが、メイドイン糸魚川、メイドイン新潟に拘りたいのだ。




#ぬなかわヒスイ工房 #大首飾り #古墳時代の金環

 

 


ちこちゃんに叱られません!(笑)・・・大首飾りプロジェクト

2018年05月06日 21時55分41秒 | ぬなかわヒスイ工房

晩飯後に炬燵でうたた寝していたら、お袋が観ていたNHKテレビ「チコちゃんに叱られる!」で、北海道の名の由来を言及していたのでピクっと反応。

起き上がって視聴したら案の定、北海道の命名者である松浦武四郎が紹介されて、先日、都内で打合せしたばかりの武四郎記念館の山本学芸員が出演していた。


打合せ後に一杯やろうと思っていたら、翌日はNHKの収録があるから日帰り出張なのだと言っていたのがこの番組らしく、会ったばかりの人がテレビに出ているという不思議な感覚。

武四郎が命名した北加伊道とは「北の我ら産れしクニ」という日本語とアイヌ語を合わせた造語で、北海道の地名の多くはアイヌ語をそのまま漢字表記であることも、武四郎がアイヌ民族に寄せる敬愛の現れ。


探検家、好事家、文筆家というだけでなく、元祖バックパッカーとして日本中を歩いて詳細な記録を残した旅行家でもあり、私の師匠でもある。

 

とにかく私は北海道の名の由来について知っていたので、ちこちゃんに叱られることは無く、エカッタ(笑)

*写真は翌日にリビングでコーヒー休憩してたら、偶然に再放送が流れていたのでスマホで撮影。

 

 


祝いめでたのペア勾玉・・・better haif勾玉

2018年05月03日 19時16分09秒 | ぬなかわヒスイ工房

祝い目出度の若松様よ 若松様よ
枝も栄ゆりゃ葉もしゅげる
エーイーショウエ エーイショウエー
ショウエイ ショウエイ ションガネ
アレワイサソ エサソエー ショーンガネー

博多で祝いの席や祭りの時に唄われる「祝いめでた」の歌詞だが、生粋の新潟県人の私でもたまに口ずさむことがあるくらい粋でオメデタイ歌。

メデタイことがあったのだ。

お得意様から結婚祝いに、ペアになったBetter haif勾玉のご注文。

 

お客様から注文を受けたからメデタイというだけでなく、お得意様となると友達付き合いになる事が多く、心からご結婚おめでとう!という気持ちになるのだ。

外国人から「My better haif!」と奥さんを紹介された時に閃いたアイデアで、厚めに作った勾玉を半分に割って作ってあるのだが、遠距離恋愛カップルや結婚記念日の贈り物としてポツポツ注文を受けている。

今回は特別に気合の入るご注文で、奮発して緻密で発色のいいヒスイを使った。

 

一般的には4点~10点、多い人になると70点も同時に勾玉を作っているそうだが、私の場合は1点づつ作っている。

1点仕上げるだけでヘロヘロに消耗するし、大量生産するとモノ作りの喜びが失われて面白味を感じないのだ。

でもこのペア勾玉だけは2点同時進行で、同じ耐水ペーパーで研磨して仕上げていく。


カットする前・・・紐孔を開けてからカットするのもコダワリ・・・結構難しい仕事なのです。

離れ離れにになった直後・・・背中合わせだと淋しそうですな(笑)


そうでないとbetter haifと冠したのが嘘になる気がする。

お客様の人生の節目に関われるというのは職人冥利に尽きる。