ガイアでの「古武術式薪割り講座」が間近になったので、参加者のために参考資料として各国の薪割り事情を紹介。
今回は南インドの薪割り職人の超絶な仕事振り。
炎天下、小柄な老人が「フンッ!フンッ!」と、呻き声のような、気合のような鼻息を漏らしながら黙々と薪割りしている所に出くわした。
状況から薪割り職人であるらしいが、彼の使っている斧は、これまで見たことがないほど巨大な斧!
一般的な斧は重さ2キロ前後から3キロくらいで、3キロ以上もあると重さに振り回されて扱いが相当に難しく、日本だと特注品になる。
もっとも薪割りではなく斫り(ハツリ)用の鉞(マサカリ)なら3キロを優に超える重さがある。
鉞は、金太郎さんが担いでいる幅の広い斧で、丸太の上に乗って鉞を振り子状に動かして側面を平らに削っていくものであって、振りかぶって薪割りするにはあまりにも重く、バランスも悪い。
後から市場の金物屋さんに行って、老人が使っていた斧を探したら3・5Kと刻印されていた。
重さ4キロ近くもある巨大な斧をふるって一日中薪割りをしていたのだ。
腕力に頼らず、背骨の力を最大限に使う驚くべき身体能力と体力!
この付近には先端が平らではなく、丸まった丸太も置いてあったので、伐採もチェーンソウだけではなく斧を使っているのだろう。
チェーンソウや切断用の鋸である大鋸挽き(オガビキ)で伐採された丸太は、小口(先端の切口)が平らになっているが、斧だと丸くなるのだ。
日本では丸太を玉切りして縦に立てて薪割りするが、インドや東南アジアでは横に寝かせての薪割りしていることが多い。
丸太は用材として使い、用材にならない枝や流木などを薪に使っているという事だろうが、これならチェーンソウは必要ないという訳だ。
丸太の中には先端に四角い孔が穿ってあるものもあった。
「メドが立つ」の語源である目途穴で、伐採された丸太を目途穴に角材を差し込んで手がかりとして、森林から引っ張り出すための工夫・・・。
諏訪大社の御柱の先端にも目途穴が開けてあり、糸魚川の縄文後期の寺地遺跡出土の木柱にも加工痕が残っている。
三千年前の縄文の昔から御柱、そして現代インドに継承されている林業仕事の手業・・・凄いもんだ。