ぶっ壊れたシーカヤックの修理が終わったと、中村造船から連絡があった。
見積りは二隻のシーカヤックの修理で総額1万5千円とのことだったが、「意外に簡単だったから、そうだねえ・・・7千円か8千円でどう?」と社長は申し訳なさそうに言った。
なんて欲の無い人だろう!
だから俺も意気に応えて、「安すぎますよっ!命に関わる補修ですから1万円出しますっ!」と見栄を張る。
海の男の「潮っ気」とは、男気のことでもある。
俺も建築リフォーム店の店長時代は、工事中に予想外の事態が発生せずに順調に終わった時には、請求は見積りより安く出していたので、同じタイプの社長がますます好きになった。
人には信頼されるけど金持ちにはなれないタイプだ。
このカヤックはFRP製だから、デッキとボトムを別々に作ってから接合する工法で作られているが、補修前のシームライン(繋ぎ目)はボロボロで、内側から見ると太陽光が透けて見えたくらいで、大波に付きあげられると船体が真っ二つに裂ける恐れがあったのだ。
修理の終わったシーカヤック受け取りにお邪魔した時、船談義に華が咲いたが、ひとつ社長に頼みごとをした。
頼みごとは、社長の掌の写真を撮らせて欲しいということ。
俺は職人さんの掌を見るのが好きだ。
太く節くれだって、ゴツゴツしていたり、変形してしまっている不格好なヒトの掌、手、て、テ。
掌はその人生を雄弁に教えてくれる。
中村造船の社長。なんと掌が顔の半分以上もあってでかいのだ。
これが漁船作り32年の男の掌。
爪も変形していて、苦労が偲ばれる。
何年か前、京都の陶芸家さんと雑談している時に、「山田さんの手って格好いいですねえ・・・ちょっと触らせて貰えませんか?」と言われたことがある。
彼はマジマジと俺の掌を見たり触れたりして、「いい手です。この手は働き者ですね~。」と彼は俺の手を褒めてくれた。
思えば身体部位で褒められたのは掌だけだが(笑)、ハンサムだと言われるよりは嬉しかった・・・言われたことないけど(泣)。
そんなことから、以前に増して人の掌に興味を持った。
ヒトの掌は履歴書だ。
これからは格好いい掌を持つ人と出会ったら写真を撮らせてもらって、ブログで紹介していくことにする。