泰平さんから北杜市のご当地アニメ「スーパーカブ」を教えてもらったので視聴したら、一晩でエピソード1全7巻を観てしまった。
私もかって北杜市の自然農法家に弟子入りして住んでいたのです。
仔細不明ながら天涯孤独らしい、「親もお金もなく友達もいない」アンニュイで内気な女子高生が、通学用に「3人殺した」いわくつき中古のカブを1万円で買って物語が始まる。
感情をあまり表に出さず、口数も少ない彼女が、相棒になったカブのシートやメーター、ハンドルを撫でて、ニヒヒとほほ笑む場面や、しゃがんでカブに見入ったり窓から見てはウフフとほほ笑む場面、オイル交換でドレンプラグが外れないなど、バイク乗りの琴線に触れる場面がでてきて嬉しい。
最近の映画やアニメは、言葉で説明し過ぎる傾向が強いが、このアニメは説明的なセリフを最小限に抑えることで、観るものが自分の頭の中で状況や登場人物の気持ちを理解できる演出になっているので、共感や感情移入できることが好ましい。要するに落語的な演出なのですよ。
原作者と製作スタッフの見識が素晴らしく、これなら黒澤明や小津安二郎も褒めるに違いない。
主人公はカブのお陰で友達もできて世界が広がっても、内気でアンニュイな個性はそのまま、芯の強い女に成長していく。
物語がすすむうちに、時たま格言めいたセリフや辛辣なことをポツリと喋って笑わせてくれるが、これがリアリティですよ。
明朗快活な主人公や中二病的な主人公ではなく、アンニュイで内気であっても、内に秘めた強さをもった主人公は新鮮。
とくに鎌倉への修学旅行の回など、おぢさんは応援団になってしまった( ´艸`)
当日に発熱して参加を諦め、お昼前に熱が下がってからカブで鎌倉に向かうことを決意した主人公・・・あぁ、富士山経由だと遠回りだよ~!津久井から相模湖経由で厚木、藤沢に出た方が近いのに!とヤキモキして観たが、このアニメには富士山と湘南海岸を走る国道137号線が欠かせないということがわかって安心。
頻繁にでてくる北杜市の商店は全て実在するから。地元の人は大喜びしたであろうご当地アニメであり、バイク場面はホンダが監修しているのでリアルこの上なく、バイク好きにも面白い。
なにより主人公は明朗快活な個性、中二病的にウジウジしているという映画やアニメ世界に一石を投じる意欲作だから、自分は個性的ではない平凡な人間と自己否定しがちな思春期の子供たちに観て欲しい。
疾走感溢れるビーチボーイズの「リトルホンダ」を聴きたくなる映画。