Mars&Jupiter

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イベールの「寄港地」、金沢文庫、そして大威徳明王坐像

2007-06-10 07:19:22 | 古典~現代音楽フランス編
昨日は大威徳明王坐像を見るために県立金沢文庫に行った。
特別公開された大威徳明王坐像以外にも
多くの仏像が展示されているではあるが、
来場者の多くは、大威徳明王坐像の前で長い間立ち止まる。

仏像は多くの部分が欠けており、
他の記録からしかそもそもの姿は想像するしかないが、
きっと、すごいものだったのだろうというのは想像できる。
小さい作品ではあるが、気品がある。

とはいえ今回の発見の重要なのは、
その中から出てきた文書である。
多くの見学者は仏像だけを眺め、
文書の方は関心ないかのようにその場を去ってしまうが、
奥書に「運慶」の名が書かれているのに注目した方がいい。
運慶が制作した作品であることを示す重要な箇所である。

金沢文庫が置かれている称名寺の自然も貴重な遺産である。
豊かな自然は是非後世にも残してほしいもんだ。

さて、昨日はその後金沢文庫から上大岡まで歩いた。
たいした距離ではないと思ってはいたのだが、
思った以上に道のりは遠く、2時間近くかかった。

今日途中聴いた曲は、1890年生まれのイベールが作曲した
交響組曲「寄港地」であり、1924年に初演されている。
しかし、これはあくまでも正式な記録であり、
その前にプラハ交際音楽祭のプログラムに取り入れられ、
世界的にも彼の名は知られるようになっていた。

こころに残っている異境の風景を絵画のように、
音で表現しているというのが、正直聴いた感想である。
印象派の作曲家の作品とは明らかに違う手法で、
それを実現したといってもよい。

おぼろげな感じの靄がかかったような中から
フルートが浮かび上がったような旋律を吹き、
そこから全体像がかもしだされる第1曲は、
刻々と移り変わる情景を映し出している。
幻影と現実とが交錯しながらあやうい世界が描かれる。

第2曲は冒頭から異国の地(フランスから見てだが)へと誘う。
チュニジアやモロッコに着いたかのようなあやしい旋律が、
オーボエによって奏される。
おそらく、ナイなどに類する笛の調べを模しているのだろう。
エキゾティックな感じ満載の短い曲である。

第3曲はスペイン的なリズムで、明るい感じの曲である。
色彩豊かに、刻々と変化する状況をうつしだしている。

イベールのこの作品を聴くと、
もはやドビュッシーやラヴェルのような旋律中心の音楽が、
変わってきているのかなとも思ったりする。
彼らがとらわれていた主題を展開していく従来の手法の音楽が、
イベールの時代になると脱しし始めているような気がする。
サティの音楽界への果敢な挑戦があって、
これもあるのかなという気もするのである。
コメント
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