拙ブログでは初登場の福井県。
福井県の温泉といえば北陸屈指の知名度を誇る芦原温泉を挙げないわけにはいきませんが、名だたる温泉ファンのブログを拝見しても、残念ながら芦原をはじめとした福井県の温泉が登場する機会は少ないようでして、紹介されていたとしてもその評価は決して芳しいものではありません。芦原温泉に限ってみれば、純然たる掛け流しの湯使いで温泉ファンからの支持を集めていた某旅館が数年前に閉館して以来、ますますファンから敬遠されております。早い話が、たとえ源泉における質は良くても、あるいはラグジュアリー感が溢れる館内で豪華な料理に舌鼓を打てるお宿であっても、温泉ファンを満足させる湯使いを実践している施設が少なく、よしんば素晴らしいお湯に入れるお宿であっても料金や時間など利用面でハードルが高いため、廉価で良質な他県の温泉に入り慣れている多くの温泉ファンにとっては、どうしても関心外に置かれてしまうのかもしれません。関西の奥座敷という位置づけのために、関西的な温泉観、すなわち温泉は非日常的なハレの場である認識が浸透しているのかもしれません。また、温泉資源が限られているにもかかわらず、数多くの旅館が「ハレの場」としてゴージャスさを売りにするために浴場を大規模化してしまったため、源泉を共同管理した上でしっかり循環利用しないと、旅館として成り立っていかない実情もあるのでしょう。これは当地のみならず、お隣石川県の加賀温泉郷など北陸の歓楽的温泉地でも同様の傾向が見られます。
前置きが長くなりましたが、上述のような状況にある芦原温泉において、放流式のお湯を手頃な料金で利用することは相当困難であることが予想されます。こうした温泉地では循環式のお風呂であっても、チョロチョロ程度でも生源泉を投入していたら「掛け流し」と銘打ってしまう施設が散見されますが、この場合は「むしろ微量でもお風呂で生源泉に触れることができたらラッキーだ」と発想を転換して、訪問前にあわら市観光協会の旅館紹介ページや各旅館のホームページを調べていたら、「源泉百パーセントかけ流し」と紹介されているお宿を発見したので、どんなお湯か自分で確かめるべく、そのお宿「芦原荘」へ赴いて日帰り入浴利用で立ち寄ってみました(※)。えちぜん鉄道のあわら湯のまち駅から徒歩2分程度の位置にあり、鉄道で旅行する者にとっては大変便利な立地です。
(※)お宿のホームページは2014年8月現在、閲覧できないようです)。
エントランスには日帰り入浴に関する案内が掲示されている他、フロント前には専用の券売機も設置されており、宿泊だけでなく入浴のみの利用も積極的に受け入れていることがわかります。なお芦原温泉の「湯めぐり手形」は利用不可のようですので予めご注意を。建物の外観こそ地味ですが、いくつものソファーが並べられたロビーは、結婚式場のホワイエのような大人っぽい寛ぎの空間が広がっていました。
浴室は1階と2階に分かれており、私が訪れた時には2階浴室が男湯に設定されていました。男女の札が簡単に取り外れるようになっているところから察するに、男女入れ替え制なのかもしれませんね。
さすが旅館だけあって脱衣室は管理がよく行き届いており、とても綺麗で衛生的です。室内ではエアコンで空調されている他、扇風機も置かれていますので、湯上がり後のクールダウン対策もバッチリです。
石板貼りの浴室は入口を挟んで左右に分かれており、脱衣室側から見て左側が広く、主浴槽の他にシャワーが10基、壁に沿ってコの字形に配置されています。
浴室入口そばにある「掛け湯」は、赤御影石の四角い槽が二重になっており、内側槽の底からぬるいお湯が上がって槽内を満たし、そこから溢れたお湯は外側槽に落ちて、更に床の下を潜って主浴槽へと流下しているようです(「掛け湯」近くの主浴槽側面には、それらしき穴がありました)。このお湯はおそらく源泉を使っているものと思われます。
赤御影石の縁取りが目に鮮やかな主浴槽は、14~15人同時に入れそうな容量で、壁に貼ってある小さなプレートが示すように40℃程の湯加減がキープされていました。壁側から2本のジェットバスがゴーゴーと音を立てながら噴射しており、その右側にある湯口から若干ぬるめのお湯が注がれていました。お湯の供給はこの湯口だけでなく、上述のように「掛け湯」からの流入や、底面での吐出も見られます。なお浴槽中央では湯面を盛り上げるほど勢い良くお湯が噴き上げられているのですが、これは明らかに循環湯でしょう。槽内ではお湯がしっかり吸引されており、湯船に人が入った時以外にオーバーフローはほとんど見られませんでした。
この主浴槽には小さな湯口もあって「湯元 源泉 ご自由にお飲みください」と記されています。チョロチョロと滴るお湯は直に触れるのが躊躇われるほど熱く(50℃以上はあるはず)、樋状の吐出口下部には白い析出が付着していました。備え付けのお玉にお湯を注ぎ、フーフーと息を吹きかけてよく冷ましてから飲泉してみますと、塩味とニガリ味が感じられ、湯気とともにふんわりと磯の香りが漂ってきました。飲泉できるのですから正真正銘源泉100%のお湯ですね。このお湯が完全掛け流しで張られている湯船があれば最高なんだけどなぁ…。
入口右側にもサブ的な浴室があり、こちらには8~9人サイズの副浴槽と、4基のシャワーが配置されていました。主浴槽は40℃程の入りやすい湯加減でしたが、この副浴槽は43~4℃という熱めの設定となっており、主浴槽と同様に中央から勢い良くお湯が噴き上げられているとともに、底面の穴からもお湯が供給されていました。でも、湯面を盛り上げるほどお湯が噴き上がっているにもかかわらず、人が入った瞬間以外にオーバーフローはほとんど見られませんでしたし、湯船のお湯も飲泉所の源泉よりはるかに個性が弱まっていましたので、こちらもお湯を循環させているのでしょう。
主副の2浴槽の他、一応露天風呂もあり、日本庭園風に装飾された空間いっぱいに四角い浴槽が据えられています。露天といっても壁・サンルーフ・ガラス窓などによって四方も頭上もガッチリ囲まれており、窓を開けることによって外気がそよぐ程度で、半露天というか露天風内湯と称したくなるような代物です。尤も当地は冬季になると厳しい吹雪が吹き付けますから、そうした気候条件を考慮した構造なのかもしれません。お風呂としては副浴槽とほぼ同様の大きさおよび湯加減となっており、湯使いもほど同様かと思われます。
各浴槽においてお湯は僅かに白っぽく微濁しており、ほんのり塩味が感じられるのですが、飲泉所のアツアツなお湯に比べるとどの浴槽でもパワーダウンが否めず、「源泉百パーセントかけ流し」という文言には首を傾げざるを得ませんでした。館内に湯使いに関する表示が掲示されていなかったので明言を避けますが、こちらの場合の掛け流しとは飲泉所に限定した表現なのかもしれません(もし事実誤認でしたら大変申し訳ございません)。とはいえ、入浴中は湯船から消毒臭は感じられず、食塩泉のツルスベ浴感と塩化土類泉らしいギシギシ&ベタつきがしっかり拮抗しており、お湯に浸かっていると短時間で心臓が激しく拍動して逆上せてしまい、湯上がり後にはなかなか汗が引きませんでしたから、含塩化土類食塩泉としてのパワーを発揮するれっきとした温泉であることには違いありません。
●湯のまち広場
あわら湯のまち駅と「芦原荘」の間には「湯のまち広場」という公園的なスペースが広がっており、芝生広場を中心として足湯や「藤野厳九郎記念館(情報コーナー)」、伝統芸能が演じられる舞台など、観光拠点としての施設が設けられています。
身も蓋も無いことを申し上げれば、この手の広場は観光地によくあるものですが、この中で私が白眉を感じたのが、「伝統芸能館」の前に設置されている、源泉が流されているこのオブジェです。一見すると手湯のようにも見えますが、ここから吐出されるお湯は火傷しそうなほど熱いため、とてもじゃありませんが手湯なんて楽しめません。おそらく温泉を見て楽しむためのものかと推測されるのですが、このお湯が実に素晴らしく、源泉100%と思しきこのお湯からは塩味やニガリ味の他、明瞭な硫黄感が伝わってくるのです。芦原温泉には源泉が約50箇所もあるそうですから、それぞれ個性が異なり、「芦原荘」とこのオブジェのお湯は別箇の源泉かと思われますが、アツアツの源泉が使われること無くただただ流されて排水されている様を眺めながら、このお湯だけが掛け流されている浴槽に浸かってみたいと強く願ってしまいました。あぁ勿体無い…。
温泉分析表見当たらず(おそらくナトリウム・カルシウム-塩化物温泉)
えちぜん鉄道・あわら湯のまち駅より徒歩2分
福井県あわら市温泉1丁目309 地図
0776-77-2110
(2014年8月現在ホームページは閲覧できませんが、営業していることは確認しています)
日帰り入浴11:00~22:00(受付は21:00頃まで)
500円
シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★+0.5
福井県の温泉といえば北陸屈指の知名度を誇る芦原温泉を挙げないわけにはいきませんが、名だたる温泉ファンのブログを拝見しても、残念ながら芦原をはじめとした福井県の温泉が登場する機会は少ないようでして、紹介されていたとしてもその評価は決して芳しいものではありません。芦原温泉に限ってみれば、純然たる掛け流しの湯使いで温泉ファンからの支持を集めていた某旅館が数年前に閉館して以来、ますますファンから敬遠されております。早い話が、たとえ源泉における質は良くても、あるいはラグジュアリー感が溢れる館内で豪華な料理に舌鼓を打てるお宿であっても、温泉ファンを満足させる湯使いを実践している施設が少なく、よしんば素晴らしいお湯に入れるお宿であっても料金や時間など利用面でハードルが高いため、廉価で良質な他県の温泉に入り慣れている多くの温泉ファンにとっては、どうしても関心外に置かれてしまうのかもしれません。関西の奥座敷という位置づけのために、関西的な温泉観、すなわち温泉は非日常的なハレの場である認識が浸透しているのかもしれません。また、温泉資源が限られているにもかかわらず、数多くの旅館が「ハレの場」としてゴージャスさを売りにするために浴場を大規模化してしまったため、源泉を共同管理した上でしっかり循環利用しないと、旅館として成り立っていかない実情もあるのでしょう。これは当地のみならず、お隣石川県の加賀温泉郷など北陸の歓楽的温泉地でも同様の傾向が見られます。
前置きが長くなりましたが、上述のような状況にある芦原温泉において、放流式のお湯を手頃な料金で利用することは相当困難であることが予想されます。こうした温泉地では循環式のお風呂であっても、チョロチョロ程度でも生源泉を投入していたら「掛け流し」と銘打ってしまう施設が散見されますが、この場合は「むしろ微量でもお風呂で生源泉に触れることができたらラッキーだ」と発想を転換して、訪問前にあわら市観光協会の旅館紹介ページや各旅館のホームページを調べていたら、「源泉百パーセントかけ流し」と紹介されているお宿を発見したので、どんなお湯か自分で確かめるべく、そのお宿「芦原荘」へ赴いて日帰り入浴利用で立ち寄ってみました(※)。えちぜん鉄道のあわら湯のまち駅から徒歩2分程度の位置にあり、鉄道で旅行する者にとっては大変便利な立地です。
(※)お宿のホームページは2014年8月現在、閲覧できないようです)。
エントランスには日帰り入浴に関する案内が掲示されている他、フロント前には専用の券売機も設置されており、宿泊だけでなく入浴のみの利用も積極的に受け入れていることがわかります。なお芦原温泉の「湯めぐり手形」は利用不可のようですので予めご注意を。建物の外観こそ地味ですが、いくつものソファーが並べられたロビーは、結婚式場のホワイエのような大人っぽい寛ぎの空間が広がっていました。
浴室は1階と2階に分かれており、私が訪れた時には2階浴室が男湯に設定されていました。男女の札が簡単に取り外れるようになっているところから察するに、男女入れ替え制なのかもしれませんね。
さすが旅館だけあって脱衣室は管理がよく行き届いており、とても綺麗で衛生的です。室内ではエアコンで空調されている他、扇風機も置かれていますので、湯上がり後のクールダウン対策もバッチリです。
石板貼りの浴室は入口を挟んで左右に分かれており、脱衣室側から見て左側が広く、主浴槽の他にシャワーが10基、壁に沿ってコの字形に配置されています。
浴室入口そばにある「掛け湯」は、赤御影石の四角い槽が二重になっており、内側槽の底からぬるいお湯が上がって槽内を満たし、そこから溢れたお湯は外側槽に落ちて、更に床の下を潜って主浴槽へと流下しているようです(「掛け湯」近くの主浴槽側面には、それらしき穴がありました)。このお湯はおそらく源泉を使っているものと思われます。
赤御影石の縁取りが目に鮮やかな主浴槽は、14~15人同時に入れそうな容量で、壁に貼ってある小さなプレートが示すように40℃程の湯加減がキープされていました。壁側から2本のジェットバスがゴーゴーと音を立てながら噴射しており、その右側にある湯口から若干ぬるめのお湯が注がれていました。お湯の供給はこの湯口だけでなく、上述のように「掛け湯」からの流入や、底面での吐出も見られます。なお浴槽中央では湯面を盛り上げるほど勢い良くお湯が噴き上げられているのですが、これは明らかに循環湯でしょう。槽内ではお湯がしっかり吸引されており、湯船に人が入った時以外にオーバーフローはほとんど見られませんでした。
この主浴槽には小さな湯口もあって「湯元 源泉 ご自由にお飲みください」と記されています。チョロチョロと滴るお湯は直に触れるのが躊躇われるほど熱く(50℃以上はあるはず)、樋状の吐出口下部には白い析出が付着していました。備え付けのお玉にお湯を注ぎ、フーフーと息を吹きかけてよく冷ましてから飲泉してみますと、塩味とニガリ味が感じられ、湯気とともにふんわりと磯の香りが漂ってきました。飲泉できるのですから正真正銘源泉100%のお湯ですね。このお湯が完全掛け流しで張られている湯船があれば最高なんだけどなぁ…。
入口右側にもサブ的な浴室があり、こちらには8~9人サイズの副浴槽と、4基のシャワーが配置されていました。主浴槽は40℃程の入りやすい湯加減でしたが、この副浴槽は43~4℃という熱めの設定となっており、主浴槽と同様に中央から勢い良くお湯が噴き上げられているとともに、底面の穴からもお湯が供給されていました。でも、湯面を盛り上げるほどお湯が噴き上がっているにもかかわらず、人が入った瞬間以外にオーバーフローはほとんど見られませんでしたし、湯船のお湯も飲泉所の源泉よりはるかに個性が弱まっていましたので、こちらもお湯を循環させているのでしょう。
主副の2浴槽の他、一応露天風呂もあり、日本庭園風に装飾された空間いっぱいに四角い浴槽が据えられています。露天といっても壁・サンルーフ・ガラス窓などによって四方も頭上もガッチリ囲まれており、窓を開けることによって外気がそよぐ程度で、半露天というか露天風内湯と称したくなるような代物です。尤も当地は冬季になると厳しい吹雪が吹き付けますから、そうした気候条件を考慮した構造なのかもしれません。お風呂としては副浴槽とほぼ同様の大きさおよび湯加減となっており、湯使いもほど同様かと思われます。
各浴槽においてお湯は僅かに白っぽく微濁しており、ほんのり塩味が感じられるのですが、飲泉所のアツアツなお湯に比べるとどの浴槽でもパワーダウンが否めず、「源泉百パーセントかけ流し」という文言には首を傾げざるを得ませんでした。館内に湯使いに関する表示が掲示されていなかったので明言を避けますが、こちらの場合の掛け流しとは飲泉所に限定した表現なのかもしれません(もし事実誤認でしたら大変申し訳ございません)。とはいえ、入浴中は湯船から消毒臭は感じられず、食塩泉のツルスベ浴感と塩化土類泉らしいギシギシ&ベタつきがしっかり拮抗しており、お湯に浸かっていると短時間で心臓が激しく拍動して逆上せてしまい、湯上がり後にはなかなか汗が引きませんでしたから、含塩化土類食塩泉としてのパワーを発揮するれっきとした温泉であることには違いありません。
●湯のまち広場
あわら湯のまち駅と「芦原荘」の間には「湯のまち広場」という公園的なスペースが広がっており、芝生広場を中心として足湯や「藤野厳九郎記念館(情報コーナー)」、伝統芸能が演じられる舞台など、観光拠点としての施設が設けられています。
身も蓋も無いことを申し上げれば、この手の広場は観光地によくあるものですが、この中で私が白眉を感じたのが、「伝統芸能館」の前に設置されている、源泉が流されているこのオブジェです。一見すると手湯のようにも見えますが、ここから吐出されるお湯は火傷しそうなほど熱いため、とてもじゃありませんが手湯なんて楽しめません。おそらく温泉を見て楽しむためのものかと推測されるのですが、このお湯が実に素晴らしく、源泉100%と思しきこのお湯からは塩味やニガリ味の他、明瞭な硫黄感が伝わってくるのです。芦原温泉には源泉が約50箇所もあるそうですから、それぞれ個性が異なり、「芦原荘」とこのオブジェのお湯は別箇の源泉かと思われますが、アツアツの源泉が使われること無くただただ流されて排水されている様を眺めながら、このお湯だけが掛け流されている浴槽に浸かってみたいと強く願ってしまいました。あぁ勿体無い…。
温泉分析表見当たらず(おそらくナトリウム・カルシウム-塩化物温泉)
えちぜん鉄道・あわら湯のまち駅より徒歩2分
福井県あわら市温泉1丁目309 地図
0776-77-2110
(2014年8月現在ホームページは閲覧できませんが、営業していることは確認しています)
日帰り入浴11:00~22:00(受付は21:00頃まで)
500円
シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★+0.5