温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

パソロブレス市 フランクリン温泉 Franklin Hot Springs

2017年10月18日 | アメリカ

カリフォルニア州サンルイスオビスポ郡の都市パソロブレス(Paso Robles)は、人口増加が目覚ましい発展中の街ですが、住宅街からちょっと郊外へ離れると、果てしなく続く丘にワイン用のぶどう畑や牧草地が延々と広がっています。そんな長閑な丘の中を車で走っていると・・・


 
道路沿いに水を湛える用水池と遭遇。この池の前に立っている看板には"Franklin Hotsprings"と手書きされていました。もうおわかりかと思いますが、この「フランクリン温泉」が今回の目的地なのです。途中に案内標識のようなものはないので、もしGPSが無かったら辿り着けなかったかもしれません。


 
前回記事の「シカモア・ミネラルスプリング・リゾート」は、そこそこの価格帯に属するリゾートホテルでしたが、今回の「フランクリン温泉」は、リゾートとは正反対の価値観で営業している素朴な温泉入浴施設。池畔にちょこんと建つこの掘っ建て小屋が受付なのです。



ちなみに敷地の奥はキャンピングカーの駐車場になっており、自分の車で寝泊まりしながらここでしばらく滞在する旅人もいらっしゃいました。


 
私の訪問時、小屋の内部には誰もいませんでした。雑然とした室内にはたくさんの張り紙が掲示されているほか、ライフジャケットやフロートなどが出っ張りへ無造作に引っかけられていました。後述する温泉プールへ入る際、子供や泳ぎに自信がない人は、各自でこれを装着してね、ということなのでしょう。



壁に括りつけられている料金箱へセルフで料金の7ドルを投入。


 
小屋から反対側へ出ると、大きなプールがお湯を湛えていました。上画像が温泉プールの全景です。プールの大きさは(目測で)15m×30mはあるでしょう。果てしなく広がる丘の真ん中にぽつんと佇んでおり、周囲にはこれといった人工物が無いため、非常に開放的です。広い空ではヒバリが囀りながら飛び交っていました。


 
左or上画像はプール側から受付小屋を見たところ。いかに素朴で質素な施設であるかがおわかりいただけるかと思います。ちょうど小屋前のプールには黒いネットが屋根代わりに張られており、その直下には、まるでタコの足のように複数本のパイプが伸びた温泉吐出口が立ち上がっています。訪問時、この吐出口の下ではオジサンが頭からお湯を浴びながら、気持ちよさそうな表情を浮かべていました。洋の東西を問わず、頭から温泉を被る行為は人間に快楽をもたらすのですね。ちなみにプールサイドには少々の硫黄臭が漂っているのですが、詳しくはまた後程。



この温泉プールは男女共用で水着の着用が必要です。プールサイドに建てられたトイレ兼更衣室で着替えます。2室しかないので、もし混んでいたら、譲り合いながら使いましょう。


 
プールの水温は33.8℃でpH8.86。ちょっとぬるいので、一度お湯に入るとなかなか出られません。特にこの日は冷たい風が吹いていたので(おそらく外気温は12~3℃だったはず、プールから上がった直後には寒さで身震いしてしまいました。一方、pHの数値からも想像できるように、このお湯はとっても滑らか。ヌルヌルを伴うツルスベ浴感がかなり強く、湯中では何度も自分の肌を擦って、その滑らかさを楽しませてもらいました。


 
ポンプで汲み上げられたと思しきお湯は、武骨な姿をした複数のパイプを通じてプールへドバドバ大量に落とされていました。ひとつの鉄の塊から脚のようにいくつも伸びる吐出パイプの姿はあたかも地球外生物のようであり、そもそも色に緑や白といった温泉由来の色がこびりついているため、余計に一種独特な雰囲気を醸し出していました。
なお吐出口における温泉の温度は36.8℃。プールのお湯はモスグリーンに濁って見えますが、吐出される新鮮なお湯は無色透明であり、少々のアブラ臭を伴う濃厚なタマゴ臭が嗅ぎ取れ、タマゴ味と苦味が感じられました。


 
左or上画像は吐出口近くで浴感の良さに感動している私。右or下画像は、そんな私の目線でプールを眺めた様子です。体格が大きなアメリカ人向けに作られているためか、プールは基本的にやや深い造りなのですが、この吐出口まわりならば、身長165cmの私でも立っていられるほどの深さに抑えられていました。また底には泥が溜まっているのですが、その泥を顔に塗っている人もいました。果たしてその効果は不明。


 
プールは湯尻に向かってどんどん深くなるので、私は立ち泳ぎをしないとここまで行けません。プールの温泉は全量がこの湯尻から隣接する池へと流れ込んでいました。つまり完全掛け流しです。


 
私が比較的浅い温泉投入口付近で湯あみをしていると、湯尻の方からカモのツガイが悠然と湯面を泳いでくるではありませんか。その近くのプールサイドには、棒状のカラフルなチューブがたくさん用意されていたので・・・


 
私はチューブを4~5本ほど抱えながら、カモをイメージしてプカプカ浮かんでみました。うひゃ、気持ち良い。最高ですね。時間を忘れ、いつまでもお湯に浮いていたくなります。



湯尻付近のバラが咲く池畔に何かを発見。


 
それはコンクリで造られた丸いバスタブでした。ここにも温泉が供給されており、お湯が淀みやすい大きなプールと違って、入れ替わりが早いこのバスタブのお湯は透明度が高く、また湯加減も若干高め(36℃くらい)。池に向かって視界が開けているので、池や対岸の丘を眺めながらのんびり入浴することができました。お湯は綺麗で温かいし、眺めは良いし、とっても静か・・・素晴らしい湯浴みを堪能させていただきました。

前回取り上げたシカモア温泉と同様に、この温泉も石油を掘ろうとして発見されたんだとか。それゆえ、お湯が放つタマゴ臭にはほんのりとしたアブラ臭が含まれていたのでしょう。何らの装飾性がない鄙びた田舎の質素な温泉プールですが、個人的には非常に気に入り、予定を大幅に超える時間をここで過ごしてしまいました。おすすめ。



GPS 35.587817, -120.642147,

3015 Creston Road Paso Robles, CA
805-712-5372
ホームページ

月曜から木曜→8:00~22:00、金・土・日→8:00~24:00
7ドル
備品類なし

私の好み:★★★

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シカモア・ミネラルスプリングス・リゾート Sycamore Mineral Springs resort 後編

2017年10月16日 | アメリカ
この記事は前編の続編です。

●プールやプライベートバス
 
前回記事では客室のテラスにあるバスタブでフレッシュな温泉入浴を堪能しましたが、続いて取り上げるのは、料金を支払えば誰でも利用できるプールやプライベートバスです。いずれも、駐車場の奥に位置する「トリートメントセンター」(ギフトショップ併設)が受付窓口になっています。



こちらがプール。せっかくゆったり時間が流れるリゾートに泊まったのですから、できれば優雅に泳ぎたかったのですが、ここには1泊しか滞在せず、しかも時間に余裕がなかったため、残念ながらプールを利用することはありませんでした。


 
このプールから続く斜面の木立の中にプライベートバスが点在しています。その数はなんと22! 大小さまざまなサイズが用意されていますから、利用人数に応じて使い分けられるものと思われます。なお宿泊客は通常料金の半額で利用可能とのこと。いずれのプールも木立と一体化していて、周囲の環境に溶け込んでいますね。


 
プライベートバスのひとつを見学させてもらいました。目隠しの衝立に囲まれる形でジャグジー付きのバスタブがあり、お客さんがいないときでもお湯が張られてジャグジーが稼働しているのですが、前編で紹介した客室テラスのバスタブみたいな強いアブラ臭は漂っておらず、その代わり我々にとっては非常に忌まわしきカルキ臭がプンプン放たれてしていました。常時お湯が張られているということは循環も行われているのでしょう。外来客はこのバスタブを利用するわけですが、このお湯ではクオリティに厳しい日本の温泉ファンを喜ばすことは難しいかも。かく言う私もカルキ臭に辟易してしまったため、残念ですがここも見学だけにして、利用しませんでした。


●リゾートを出てアヴィラビーチで夕食
 
さて、私は朝食のみのプランで利用したので、夕食はリゾート内のレストランで別料金の食事を摂るか、あるいは外へ出かけて自分でレストランを見つけることになります。当地はビーチの近くですから、私は海の方へ出かけて、散策がてらお店を探すことにしました。車ですと数分でアヴィラビーチに到着。風のない晴天だったこの日、砂浜の向こうに広がる海原は波が穏やかでとても静か。沖ではたくさんのヨットが浮かんでいました。


 
アヴィラビーチの海沿いには飲食店が立ち並ぶ一角があります。


 
ビーチを臨むお店の中でも一番賑わっていたレストランに入り、穏やかな潮風を受けながらディナーをいただくことに。この時注文したのは、マヒマヒのグリルとクラムチャウダー。ハワイの料理がお好きな方なら言わずもがなですが、マヒマヒとはシイラのこと。いずれも美味しかったですよ。


 
食後は桟橋や砂浜を散歩して、日が暮れるまで腹ごなし。目の前の海をながれるカリフォルニア海流は寒流ですから、海風は冷たく、思わず持参していた長袖を羽織ってしまいました。桟橋に取り付けられた説明プレートによれば、この海岸には海獣の類が出没するようですが、残念ながらこの時には姿を見せてくれませんでした。でも景色は良いので、ぼんやりと海を眺めるだけでも心が落ち着きます。


●リゾート内のレストランで朝食
 
翌朝の朝食は、レセプションがある建物の奥にあるレストランでいただきました。こちらは今回利用した宿泊プランの料金に含まれています。ひとつのお皿に載せられたオーソドックスな内容であり、普通に注文しちゃうと20ドル弱もするようですが、当然ながら調理方法は選べますし、なにしろ店内の雰囲気が良いので、トータル的に考えれば納得できるかと思います。

前編の記事で申し上げたように、こちらのリゾートは客室テラスのバスタブに引かれた温泉が素晴らしいので、もしここで温泉に入るのでしたら、宿泊すれば間違いのない湯浴みを楽しめるはずです。また、今回の記事では紹介しておりませんが、マッサージやエステなどのサービスも充実しているので、スパリゾートとしての利用価値も高いかと思われます。アメリカ西海岸の温泉めぐり旅は、1湯目から素晴らしいお湯に巡り会えました。



GPS 35.186086, -120.712527,

1215 Avila Beach Drive, San Luis Obispo, CA
(805) 595-7302
ホームページ

日帰り入浴に関しては公式サイトでご確認ください

私の好み:★★★
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シカモア・ミネラルスプリングス・リゾート Sycamore Mineral Springs resort 前編(客室のお風呂)

2017年10月14日 | アメリカ
今回から連続して、アメリカ・カリフォルニア州の温泉を連続して取り上げます。
「アメリカに温泉なんてあるの?」なんていうお話をよく耳にしますが、アメリカの西海岸は日本列島と同じ環太平洋火山帯ですから、温泉資源にも恵まれており、温泉を活かしたリゾートホテルから野趣溢れる野湯まで、様々なスタイルの温泉を楽しむことができます。
2017年初夏にロサンゼルスへ降り立った私は、空港でレンタカーを借り、ロサンゼルスとサンフランシスコの中間地点に位置するカリフォルニア州の都市サンルイス・オビスポ方面へ向かいました。まず私が目指したのは、客室で温泉に入れるリゾートホテル「シカモア・ミネラルスプリングス・リゾート」です。


 
ロサンゼルスから太平洋に沿って伸びるハイウェイ101号を北上。途中でアムトラックの列車を追い抜かしつつ、ひたすらドライブを続けること4時間弱。サンルイス・オビスポ手前のアヴィラビーチでハイウェイを下ります。



ハイウェイのランプからすぐに、目的地である「シカモア・ミネラルスプリングス・リゾート」へ到着しました。


 
森に抱かれたリゾートの敷地は大変広く、客室を擁する建物も複数あるのですが、まずはレセプションでチェックインを済ませ、宿泊に関する説明を受けます。


 
グレードに応じていろいろな種類の客室があり、その全てに温泉のお風呂が付帯しているというのですから、温泉が好きな人間にとっては堪りません。敷地内に建つ各客室棟は、アパートメントタイプからコテージタイプまで様々ですが、いずれも周囲の木立とうまく調和しており、建物がまるで木々の中に隠れているかのように佇んでいます。
今回私に宛がわれた部屋は、お風呂付きのお部屋が集まる棟のひとつ"Adventure Building"の2階にある"Gentle"という名前の一室です。こちらでは、部屋番号の代わりに名前が付けられているのですが、きっと私の性格が仏のように優しく穏やかであることを見越して、この部屋が宛がわれたのでしょう(なんてね)。


 
室内は若干古いのですが、広くて綺麗に維持されており、備品類もひと通り揃っていて、快適に過ごすことができました。ちなみにこの部屋の料金は、朝食付きで税金含めて約250ドルでした。


 
シャワールームも綺麗なのですが、アメニティは普通のホテルと大して変らず、ちょっと拍子抜け。その一方で、メイク落としなどが用意されている点は、女性客重視なのかもしれません。なお室内にバスタブは無いのですが・・・



テラスに出ると2人サイズのFRP製のバスタブが据え付けられており、ここで温泉入浴をすることができるのです。


 
バスタブの上には注意書きが2枚掲出されていました。ひとつには、温泉の利用可能時間と温泉を吐出および排出方法が説明されており、テラスのお風呂に入れるのは朝7時から夜の23時までと決められています。これは23時以降の深夜時間帯が"Quiet hours"として音を立てず静かに過ごすことが推奨されているためです。また石鹸やシャンプーの類の使用も禁止されていますから、バスタブに入る前には予めお部屋のシャワーで体の汗を流しておいた方が良いでしょう。
もうひとつには、温泉入浴に関する注意が記されており、「老人や妊婦などは医師の助言を得て」などといった各人の健康上の都合を理由とした入浴の適不適が箇条書きにされていました。


 
お湯を出すときはバルブを開ければ良いだけ。でもこのバルブを開けた瞬間、私は腰を抜かすほどビックリしてしまいました。開栓してお湯を吐出させた瞬間、温泉由来の強いアブラ臭やイオウ臭が広いテラスへ一気に広がったのです。アメリカへやってきた1湯目から、いきなり強烈な匂いを発する温泉と出会えたことに感激しきり。わざわざ太平洋を越えてきた甲斐がありました。このベランダのバスタブは使う度にお湯を張り替えますので、実質的には掛け流しと同等。お湯の吐出温度は46.6℃というやや高温でした。


 
加水しない湯船の温度は44.4℃。人によっては熱く感じるかもしれませんが、緑の木立から吹き抜けてくる風が気持ちよく、この風で爽快にクールダウンできたため、私はこのままの湯加減で入浴させてもらいました。なおpH値は7.74ですので、ほぼ中性ですね。なおバスタブの容量が大きいためか、お湯が溜まるまでちょっと時間がかかりました。


 
お湯はほぼ無色透明であり湯の花などは見当たらなかったのですが、バスタブに溜まったお湯は若干黄色みを帯びているように見えました。先述のように強い匂いを放つこのお湯を口に含んでみますと、はじめの数秒は「あれ?苦いかな?」という程度なのですが、しばらく経つと口腔奥の粘膜が痺れるような渋さ(苦さ)が感じられ、やがて口全体にその苦味が広がってゆきます。また口に含むことによって匂いがより強く嗅覚を刺激し、イオウ臭というよりペンキの溶剤と表現すべき石油的な匂いが喉から鼻孔にかけてしっかりと残りました。このシカモア温泉はかつて油田開発を目的に掘削したところ湧出した温泉なんだそうですから、石油を思わせる知覚的特徴を有しているのは当然と言えるでしょう。日本にも北陸や東北の日本海側に油田試掘の際に湧いた温泉が見られ、アブラ臭を好む温泉マニアから篤く支持されていますが、それらは得てして塩気が多く、また黄土色や緑色に強く濁る傾向があります。一方、このシカモア温泉は透明度が高くて塩気が無いため、日本の油田由来の温泉とはちょっと毛色が異なり、(あくまで知覚的特徴だけですが)どちらかと言えば岩手県の国見温泉に近いお湯であるような気がします。
そんな能書きはともかく、注ぎたてのお湯はフレッシュそのものですから、掛け値なしで本当に気持ち良い。入浴中にはキシキシと引っかかる浴感が強く得られるとともに、湯上がりにはまるで蝋を塗ったようなシットリ感に包まれ、しばらくは温浴効果が続きます。テラスの前には緑豊かな木立が続き、そこここから小鳥の囀りが聞こえます。素晴らしい環境のもと、フレッシュ且つ個性的な温泉に浸かれる喜び・・・。もう最高です!



バスタブにお湯を張ったまま外出して夜まで放置しておいたら、なんとお湯が白濁していました。日が沈んで冷え込み、それによって懸濁が発生したのでしょう。よく見ると単なる白濁ではなく、若干緑色を帯びているようにも見えます。底が見えないほどはっきりと濁っていますが、でも湯の花は見られませんでした。こうした色の変化は本物の硫黄の温泉ならでは。ビジュアル的にも面白い温泉であることがおわかりいただけたかと思います。

さて次回記事(後編)では、リゾート内にあるプールやプライベートバス、リゾート近くのビーチで食べた夕食、翌朝の朝食(リゾート内)などを取り上げます。

次回(後編)に続く。

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アメリカ ワシントン州 オリンピック国立公園の野湯 Olympic Hot Springs

2012年10月19日 | アメリカ
※今回記事の内容はちょうど6年前に、私が(いつものように)一人でアメリカのシアトルを旅した時のことを思い出しながら書き綴ったものです。当時と現在では現地の状況に異なる点があるかもしれませんが、何卒ご了承ください。


先日PCのデータを整理していたら、数年前のHDDクラッシュにより大半が消失していたはずの画像が一部見つかったので、その画像群の中から、6年前に訪れたアメリカ・ワシントン州のオリンピック国立公園内にある野湯について、勝手ながら個人的な備忘録としての簡単なレポートを今回アップさせていただきます。せっかく見つけた画像をお蔵入りさせるのが勿体ないもので・・・。
こちらの温泉は、英語による紹介でしたらネット上でいくらでも見つかるのですが、何故か日本語で書かれたレポートはかなり少ないようですので、ネタとしては少々古いのですが、それでも敢えて記事にする意義はあるのでないかと、一人で勝手に使命感を負い、鼻息を荒くしながらPCのキーを叩いております。



シアトル空港でレンタカーをピックアップし、まずはポート・エンジェルス(Port Angeles)を目指して101号線を走ります。ポート・エンジェルスから更に101号線を約9マイル西進すると、ダム撤去を実施することで日本でも話題になっているエルワ川(Elwha River)を渡る橋にさしかかりますが、この直前で分岐する"Olympic Hot Springs Rd"という直球なネーミングの道路へ左折します。まもなくするとオリンピック国立公園内に入るためのゲートがあるので、ここで公園入場料(使用料)の10ドルを支払います。なお、私は温泉へ向かう前に同公園内の絶景ポイント「ハリケーン・リッジ」へ寄り道しており、そこで支払いを済ませていたので、このゲートではチケットを見せただけでパスできました。

こちらの口コミサイト(英語)によれば、2013年まで"Olympic Hot Springs Rd"がクローズされているとのことです。


 
森の中をクネクネと奥へ伸びてる林道"Olympic Hot Springs Rd"をひたすら前進です。途中で鹿がかわいらしい姿を見せてくれました。また突然視界が開けて静謐な湖面が目の前に広がるところもありますが、これはミルズ湖(Lake Mills)です。



101号の分岐から10マイル強でボルダークリーク(Boulder Creek)キャンプ場の駐車場となり、ここで車道は行き止まりとなりますので、駐車場に車をとめて、その先から始まる"Appleton Pass Trail"を歩くことになります。画面に写っている標識によれば、トレイルの始点から温泉までは2.4マイル(約3.9km)とのこと。


 
道幅が広くて上り下りも少ない、とても歩きやすい快適なトレイルです。


 
私が訪れたのは10月初旬。紅葉が少しずつ色づきはじめていました。空気はとても清々しく、景色も美しいので、歩いていても全く苦になりません。


 
途中で幾筋かの沢を越えます。丸太に簡素な手すりを取り付けただけの橋もあって、一見するとちょっとしたスリルがありそうですが、意外としっかりした造りなので全然問題ありません。


 
歩き始めてちょうど40分で「温泉は左」という道しるべが立つ広場が現れました。目的地はもうすぐです。更にその先には「温泉エリアではキャンプと火気禁止」の立て札もありました。



標識が指し示す方へ向かってちいさな沢を越すと・・・



辺りに硫黄に匂いが漂い始めました。いよいよ温泉エリアに突入です。さっそくトレイルの左下に、いかにも入浴してくださいと言わんばかりの湯たまりを発見したのですが、ここはかなりぬるかったのでパスしました。エリア内にはいくつもの湯たまりがあるので、他を探すことにします。



斜面の途中にあるこの湯溜まりは、大きさこそ良い感じですが、湯加減は物足りない上、ちょっと浅かったので、ここもパスです。見てわかるように、エリア内の湯溜まりの多くは、明らかに人為的に作られた岩風呂です。


 
お湯が滴り落ちる崖を上がってゆくと、源泉がたまってる小さな窪がありました。硫黄の付着により白くなっている箇所も見受けられます。あちこちで硫黄臭漂う温泉が湧いているので、散策しているだけでも楽しいです。



湯溜まりがいくつもあって迷っちゃいますが、とりあえずここで入浴してみました。底には落ち葉がたくさん堆積しており、湯中に足を突っ込みだけで攪拌されて湯船が落ち葉だらけになってしまいましたが、慌てることなくのんびり鷹揚に構えて待っていたら、固形物はすぐに再沈殿してくれましたので、綺麗なお湯に入ることができました。かなりぬるめ(35℃くらい)ですが、日本人が好みそうな硫黄泉であり、また全身浴ができるのはとっても嬉しいです。

英語版ウィキペディアなど、ネットでこの温泉に関するページを検索していると、しばしば「(オリンピック温泉には)バクテリアが含まれているので注意」と述べられているページに出くわすのですが、この手の警告(脳を侵食するアメーバなど)はアメリカでは一般的ですし、そもそも野湯なんて国を問わず衛生状態が良いはずありませんから、普段から泥や落ち葉にまみれてお湯を楽しんでいる野湯ファンでしたら、温泉の衛生問題=自己責任として常時意識してるでしょうから、ここでもバクテリアの存在について神経質になることはないかと思います。

また「水着着用」と述べられているサイトもありますが、これも文化的なマナーの問題であって、誰も来ないのが明らかな状態だったら日本人らしく思いっきり全裸で入浴しちゃっても問題ないでしょう。かく言う私はスッポンポンで入浴したのみならず、他の湯溜まりを探す際にも裸族状態でエリア内を歩き回っちゃいました。とはいえ、万一誰かが来た時に備えて、すぐに水着を履ける準備をしていましたが、結局終始私一人のみで誰も来ませんでした。


  
私が最も気に入ったのはこの湯溜まりです。目の前の崖から湧き出たばかりの源泉がプールされており、当然ながら鮮度感は抜群で、硫黄の味と匂いがはっきりと感じられて、湯加減も38~39℃とかなりいい感じでした。太平洋を挟んだ遙か彼方の異国の地で、森の木々に囲まれた清々しい環境の下、目下を流れるせせらぎの音を耳にしながら、湧出したばかりの硫黄泉に全身浴できるなんて、とっても幸せですね。ちょっとぬるいのが玉に瑕ですが、長湯仕様の湯加減なんだと割り切っちゃって、気持ちよく入浴させていただきました。


・この温泉が位置している「オリンピック国立公園」については、シアトル情報ポータルサイト「JUNGLECITY.com」(日本語)内の特集ページなどをご覧ください。
英語版Wikipedia内「オリンピック温泉」記事
Appleton Pass Trail紹介ページ(アメリカ合衆国国立公園局公式サイト内)

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