南会津地方の国道401号線を桧枝岐村方面へ南下して旧伊南村地区にさしかかると、山間地ながら視界が開けて伊南川沿いに水田が広がります。この水田の真ん中にあるのが今回紹介する古町温泉「赤岩荘」です。名称には「荘」という文字が含まれていますが宿泊は出来ず日帰り入浴専門です。会津地方の温泉は一癖も二癖もある個性的なお湯のオンパレードですが、この古町温泉はその中でも極め付きではないでしょうか。
まずは露天風呂に行ってみましょう。一目で鉄分がたっぷり含まれていることが判る赤錆び色に濁ったお湯が待ってくれています。強く濁り透明度はほとんどありません。色だけではなく味覚も強烈で、湯口にコップが置いてあるので飲んでみると、海から遠く離れた山奥にもかかわらずとても塩辛い味を有しており、これに昆布出汁の味と金気の味が加わります。臭覚に関してはやはり金気の匂いが目立ち、微かに硫黄の匂いも漂っていました。濃そうな見た目の印象を裏切らず、お湯の中で肌をさするとキシキシとした浴感を得られます。浴槽は二つに分かれており、湯口があるほうはかなり熱め、もう一方はぬるめとなっていました。お湯がオーバーフローするところは温泉成分の析出で千枚田状態になっており、成分の濃さを実感できるかと思います。
続いて内湯に行ってみると、同じお湯なのにお湯の色は赤くなく、薄い緑色で弱く濁っています(透明度は50cmほどでしょうか)。味は露天と同様ですが金気の匂いは内湯の方が強く感じられました。露天と内湯の違いについて考えてみますと、そもそもここのお湯は内湯のようにある程度透明度のある泉質ながら、露天風呂のように外気に触れると忽ち鉄分が酸化して赤く濁ってしまうものと思われます。また露天では香りが飛んでしまうために内湯の方が匂いが強く感じられたのでしょう。ということは内湯の方が新鮮なお湯を楽しめると言えます。温泉はちょっとした条件や環境の違いで性質が変わってしまうことを、この古町温泉はわかりやすく我々に教えてくれます。
塩分の強い温泉なので、冬はお湯から上がった後も湯冷めしにくく、いつまでも体がポカポカし続けます。ということは夏の場合は体が火照ってしまい、なかなか汗がひきません。ですので夏に入浴する場合はお風呂から上がる前に真湯を掛けた方がよろしいかと思います。それほど濃いお湯です。温泉ファンなら是非入るべきお湯です。
露天風呂
露天風呂の湯口。析出がこってり
内湯。長方形の浴槽がひとつあるだけのシンプルな造り。
お湯が贅沢にあふれ出ています
源泉直下の地層の様子を解説したプレート
ナトリウム-塩化物泉
53.1℃ pH6.5 152L/min(地下700m) 成分総計15900mg/kg
福島県南会津郡南会津町古町字太子堂186-2 地図
0241-76-2833
9:30~20:00 水曜定休
600円
私の好み:★★★