温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

鳴子温泉 東多賀の湯 2016年秋・再訪(宿泊)

2017年09月16日 | 宮城県
 
約一年前ですが2016年秋の某日、鳴子温泉の「東多賀の湯」で一晩お世話になりました。こちらは以前拙ブログで日帰り入浴したときの様子をレポートしておりますが(以前の記事はこちら)、今回は宿泊利用です。私の訪問時には外壁工事中でしたが、もうすでに工事は終了しているものと思われます。語弊を承知で申し上げればアパートのような外観ですが、れっきとした温泉宿であります。もっとも一般的な旅館でありながら、自炊しながら長期宿泊して湯治をするのがこちらの本来の過ごし方であり、それゆえアパートのようになっても不思議ではないのでしょう。周囲にはふんわりと硫化水素臭が香ってます。



玄関ではワンコがお出迎え。


●お部屋・お食事
 
今回通された2階の客室は6畳の和室で、テレビが備え付けられているほか、コタツや石油ファンヒーターなど暖房対策万全。



さすが自炊宿だけあって、部屋には小さいながらもキッチンが付帯しており、冷蔵庫やガスコンロ、流し台が備え付けられていました。なおトイレは共用のものを使います。


 
各部屋のみならず、廊下には共用の炊事場があり、食器類や各種調理器具、電子レンジ、洗濯機なども備わっていますから、長期滞在には最適ですね。
廊下の隅の本棚には漫画がたくさん並べられていました。


 
 
私は夕食を外で摂り、朝食だけお宿でお願いしました。朝食は1階の食堂でいただきます。ここでいただいた白米がべら棒にうまい! 「ゆきむすび」という鳴子地区の気候に合わせて開発された品種らしく、しかも目の前のお茶碗に盛られたお米は、お宿の社長さんが自ら栽培なさったものなんだとか。モッチモチしていて
あまりに美味しいので、チェックアウト時にお土産として買ってしまいました。



●お風呂

さて肝心のお風呂へと参りましょう。浴舎は本館とは離れた作りになっているのですが、両者を連絡するドアを開けるだけでも濃厚な硫化水素臭が鼻を突き、それにつられて私の胸も期待で膨らみます。
なお、浴場入口の暖簾の前にはちょっとした小上がりが設けられており、湯上がりのひと休みに使えます。



硫化水素の濃さを物語る具体例がこの照明。浴場内を照らすために取り付けられているのですが、浴室内ではなくガラスを隔てた脱衣室に設置されており、ガラス越しにスポットライトの光を浴室全体へ当てているのです。浴室に照明器具を取り付けると、硫化水素でたちまち腐食してしまうのでしょうね。


 
質実剛健でシンプルながらも歴史ある温泉地らしい風格を放つ浴室。一見すると以前の訪問時と同じような構造なのですが、ひと呼吸置いてよく見つめ直してみますと、明らかに以前と異なっていることに気づきました。基本的なレイアウトこそ以前とほぼ同じなのですが、以前のような薄暗くて鄙びた湯治宿風情が払拭され、すっかり綺麗になっているのです。どうやら数年前に改修されたらしく、張り直された材木はまだ真新しい白木の状態が保たれており、また白い化成品の防滴建材を採用することで、以前より明るい環境で入浴することができるようになっていました。窓サッシも新しいので開閉がスムーズです。


 
浴室内にシャワーなどのカランが無いのは従前通り。造りに若干の違いはあるものの、壁から突き出た短い桶より100%源泉の温泉が、積み重ねられたケロリン桶に向かって注がれている「東多賀の湯」ならではのスタイルは、改修後も固持されていました。なお改修後も真湯は無いので、硫黄のお湯で体を洗うことになり、また湯船から上がった後の上がり湯をかけることもできませんから、こちらのお風呂に入ると否応なしに全身が硫黄臭くなります。私のような温泉バカにはこの上ない天国状態ですが、人によってはちょっと苦手かもしれません。
なお、このお湯は持ち帰ってもよいらしく、本棟館内の廊下には持ち帰り用のPETボトルが用意されていました。



桶から落とされるお湯を受け止めているケロリン桶は温泉成分のこびりつきによりコーティングされており、その分厚さゆえにケロリンの文字がほとんど見えません。すごい!


 
浴槽は入り心地の良い総木造で、おおよそ4人サイズ。底はすのこ状になっています。訪問時、湯船は42〜3℃という何とも言えない絶妙な湯加減が維持されており、あまりの素晴らしさに、肩までお湯に体を沈めた瞬間、思わず「ふぅ〜」と長い息が漏れてしまいました。湯船のお湯は弱いグレーを帯びる乳白色に強く濁っており、湯中の様子は目視できません。湯口からトポトポと注がれるお湯を口に含んでみますと、唇や口腔の粘膜を痺れさせる強い苦味や渋みが感じられ、石膏甘味とタマゴ味、粉っぽい風味、そして焦げたような味も伝わってきます。とにかく苦味の主張が強いので、迂闊にテイスティングすると口が痺れてエラい目に遭うこと必至なのですが、それだけ濃くて力強いお湯であることがわかります。



湯船の湯面上には通気孔がいくつも並んでいますが、言わずもがな、これは硫化水素ガス対策ですね。人間の嗅覚は時間が経つと同じ臭いに対して鈍感になる傾向があり、本棟から浴舎に入る際には強い硫化水素臭を感じたにもかかわらず、その匂いを放っているはずのお湯を目に前にしても然程匂いが強いように思いませんでした。おそらく私の嗅覚が臭いに慣れてしまったからなのでしょう。それゆえ、下手をすれば中毒の危険性に気づかないことも考えられるので、こちらのお風呂では換気に細心の注意を払っているのだと推測されます。

それにしても、この白濁湯は本当に素晴らしい。湯船の中にいると、肌の微細なシワ一本一本にまで白濁湯がしっかり染み込み、お湯の効能が浸透してくるような感覚を覚えます。ちょっと熱めの湯加減なので長湯しにくいのですが、あまりに極上な浴感なので、逆上せて湯船から上がろうとしても、後ろ髪を引かれて上がれなくなってしまいます。日帰り入浴ではわずかな時間しか入れませんが、この時は宿泊することで、夜を通して何度も入浴し、頭のてっぺんから足の先まで全身を硫黄まみれにしたのでした。今更私が言うまでもありませんが、改めて名湯であることを認識させられました。


東多賀の湯1号泉
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・炭酸水素塩温泉(硫化水素型) 50.2℃ pH5.9 溶存物質1708.9mg/kg 蒸発残留物1604mg/kg
Na+:322.1mg(65.19mval%), Mg++:25.8mg(9.86mval%), Ca++:86.9mg(20.20mval%),
Cl-:58.6mg(8.19mval%), HS-:2.3mg, S2O3--:0.2mg, SO4--:685.9mg(70.87mval%), HCO3-:250.6mg(20.40mval%),
H2SiO3:224.2mg, CO2:489.3mg, H2S:34.4mg,
(平成20年9月24日)
加水加温循環消毒なし

宮城県大崎市鳴子温泉字新屋敷160  地図
0229-83-3133
ホームページ

日帰り入浴11:00~14:00
500円(鳴子湯めぐりチケット2枚)
シャンプーあり

私の好み:★★★
コメント (6)
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