温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

カイル温泉 Kyle Hot Springs

2017年12月13日 | アメリカ
前回記事に引き続き、アメリカ・ネバダ州のワイルドな温泉を巡ってまいります。

 
アメリカの西海岸から東海岸までを結ぶ長距離州間高速道路のI-80をサンフランシスコ方面からソルトレイクシティへ向かって東進し、途中のMillcityで一般道へ下ります。


 
続いて、ネバダ州道400号を16マイルほど南下すると・・・


 
角に緑色の標識が立つ十字路に行き当たります。この標識には"Kyle Hot Springs"の文字が記されているので、その案内に従って・・・


 
ダート路に入り、道なりにひたすら南東へ進みます。未舗装路ですが道幅は広く、しかも平坦で荒れている箇所も無いので、普通の乗用車でも問題なく運転できるはず。


 
ダート路に入ってから9.3マイル地点で、道はY字状の分岐します。ここを左に入ってしばらく進むと・・・


 
目の前の小さな丘に、青い巨大なFRP製のタライが置かれている光景が目に入ってきます。ここが今回の目的地であるカイル温泉です。適当なところに車を止めて・・・


 
 
この青いタライは、おそらく家畜用のものであり、それを人間用の簡易的なプールにしているのでしょう。近づいてみると、中には白濁したぬるま湯が溜まっており、塩ビ管からちょろちょろとお湯が注がれていました。遠方に山稜が連なる荒野の真ん中にポツンとたたずむ簡素な露天風呂。ワイルドな温泉が好きな方にとっては、この上なく興奮するロケーションではないでしょうか。私もこの場に立ったときは、全身からアドレナリンがビュービュー噴出しつづけ「うひゃー」と歓喜の雄叫びをあげてしまいました。


 
ちなみに、青いプールの脇にはモルタルで固められた立派なプールも設けられていたのですが、こちらにはお湯が引かれていらず、中は空っぽで、子供用の水遊びグッズが放置されているばかりでした。空気を膨らませて使うその遊具は、まだ中の空気が抜けきっていなかったので、もしかしたら比較的近い時期に、ここへ家族連れが遊びにきたのかもしれません。

 
 
この時の外気温は53°F(11℃)、東京の冬とほぼ変わらぬ寒さであり、にもかかわらずお湯はチョロチョロとしか供給されていないため、プール内の水温は18.9℃という、とてもお湯とは言えない温度にまで下がっていました。試しにその場で着替えて入ってみたのですが、寒くて10秒も入っていられません。意地を張って両腕をあげて歓喜のポーズをとってみましたが、カメラのシャッターが切られた後は、寒さに耐えられなくなり、あわててプールから出て、服を着て寒さを凌いだのでした。ちなみにこの白濁湯というか白濁水からは硫黄由来のタマゴ臭が放たれており、タマゴ味やほろ苦味も感じられました。れっきとした硫黄泉のようです。
超開放的なロケーションで眺望も素晴らしく、しかもマニア受けする簡素な湯船であるため、気温がある程度高くなるとマニアの方々にも納得いただけるような気持ち良い湯浴みが楽しめるのかと思います。でも沙漠のような場所なので、夏は逆に暑すぎちゃうかも。



さて、青いプールにお湯を供給していた塩ビ管をたどってゆくと・・・


 
錆びている鉄のフェンスに囲まれた四角い湯溜まりを発見しました。先ほどの青いプールには白濁湯が溜まっていましたが、こちらのお湯は青緑色で比較的透明度も高い状態でした。


 
湯溜まりの奥には源泉があり、そこから温泉が湧出しているほか、コンクリで固められた湯溜まりの内部からも湧出しているようでした。


 
お湯の透明度は比較的高いものの、底部には泥が分厚く沈んでおり、しかも苔や藻の類も発生していたため、決して気持ち良く入浴できるような状況ではありません。しかし、湯温が44℃もあるため、先ほどの冷たいプールで体が冷えた私は、一刻も早く体温を回復させるため・・・



この湯溜まりにも入浴したのでした。お湯からは強いイオウ感、具体的には濃厚なタマゴ臭と焦げたような匂い、タマゴ味とほろ苦味が感じられます。湯中ではキシキシとした浴感が肌に伝わり、湯上がり後の体にはしばらくイオウ臭がこびりつきました。青いプールと違ってこちらは眺めはあまり期待できませんが、お湯の状態ははるかに良いので、底の泥さえ無ければ、なかなか良い露天風呂となるはずです。

このカイル温泉は、今でこそ廃墟のような源泉の湯溜まりや、そこからお湯を引いている簡易的なプールしかありませんが、かつてはここに温泉リゾート施設があったそうです。そういえばゴーストタウンとして名が知られているユニオンビルもこの温泉の近くにありますね。19世紀にネバダ州では銀鉱脈が発見されて人々が次々に集まってきましたが、20世紀に入ると新たな鉱脈を求めて当地を去り、街の廃墟だけが虚しく残ったようです。そんなゴーストタウンのひとつがユニオンビルであり、カイル温泉も当時は一攫千金を夢見る人たちで賑わったのでしょう。人っ子ひとりいない荒涼とした大地の中で、原始的な湯溜まりで熱い温泉につかりながら、かつての繁栄を想像し、世の中の儚さにしみじみ実感したのでした。



GPS:40.406822, -117.885079,

常時利用可能
無料
野天風呂につき備品類なし

私の好み:★★+0.5


コメント
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