
(2021年7月訪問)
前回まで連続して草津温泉の旅館を巡り、お宿ご自慢のお風呂に入らせていただきました。各旅館の訪問に際しては、加盟旅館に宿泊した時のみ購入できる和風村「湯めぐり手形」を利用したのですが、その際に宿泊した旅館は、以前拙ブログでも取り上げたことのある「草津館」でした。以前の記事でも述べましたが、こちらで所有する自家源泉「若の湯」があまりに素晴らしく、あのお湯に浸かって一晩ゆっくり過ごしたいと思い続けていたため、仕事で心身の疲労がピークに達した2021年7月の某日、宿泊でお世話になったのでした。

物腰が柔らかくて心優しそうな女将さんに案内されたのは、3階「月の間」。部屋の広さは10畳あり、窓からは隣接する「御座の湯」の様子がよくわかります。室内にはトイレや洗面台、そしてファンヒーター・窓エアコンが設けられています。冬にはファンヒーターが必要になりますが、夏は日が暮れたら涼しくなりますので、エアコンを使う機会はあまり無いと思います。地獄のような東京の猛暑の中で暮らしていると、どうしてもエアコン漬けになってしまい、機械的な冷風のために体調を崩してしまいがちですが、そんなときには涼しい草津温泉へ避暑し、エアコンを使わないで過ごすことをお勧めします。草津の湯に浸かってエアコン不要の環境でのんびり過ごせば、心身の疲れが忽ち回復しますよ。なおwifi環境も良好ですから、テレワークができちゃうかもしれませんね。

洗面台の水は山の湧水なんだそうです。
実際に飲んでみると、非常にうまい!

早速浴衣に着替えて1階のお風呂へ。
暖簾を潜った先にある脱衣場へは数段のステップを下ります。そして脱衣室からお風呂へ向かう際にもステップを下るんです。全国を温泉巡りをしていると、どんどん下ってゆくお風呂はえてして名湯であることに気づくため、このような造りのお風呂に出会うとワクワクします。

男女別の浴室は内湯のみで露天風呂はありません。でも一つの浴室内に2つの異なる源泉が引かれており、一粒で二度美味しい欲張りなお風呂になっています。脱衣室・浴室内ともに木のぬくもりが感じられる木造で、足元は切り出し石材が敷き詰められています。伝統的な材質によって作られたこの浴室からは、老舗温泉旅館らしい安心感と重厚感が伝わってきます。

手前側の小さな浴槽はお宿の目と鼻の先で湧いている白旗源泉のお湯です。灰白色に濁ったお湯の中ではいろんな大きさの湯の花が浮遊しており、お湯を口に含むと強い収斂酸味や金属味が口の中に広がって口腔の粘膜を刺激するとともに、アルミ箔を齧った時のような独特の感覚が口の中に広がりました。
多少熱めの湯加減ですが、石造りの浴槽はどっしりと入り応えがあり、熱いながらもお湯の濃さをじっくり味わいたくなる不思議な湯船です。

奥の大きな浴槽が、ここでしか入れない自家源泉「若の湯」。手前の白旗源泉と違ってこちらは白濁しているものの透明度が比較的高く、また浴槽内部が全体的に緑色に染まっています(イデユコゴミのような温泉藻の影響でしょうか)。
そして何と言っても素晴らしいのが、誰しもを長湯に誘う絶妙な湯加減です。湯口の上には3分の砂時計が置いてあるのですが、私は5回ひっくり返しても浸かり続けられる程でした。尤も草津のような強いお湯に長く浸かるのはあまり良くないのですが、わかっちゃいるけど、でもついつい長く入り続けたくなるほど蠱惑的な極上浴感なのです。

湯口のお湯を口に含んでみますと、白旗源泉と比べて若干優しく、航空の粘膜を刺激する収斂も幾分穏やかなように感じられます。また白旗源泉は酸味が強く前面に押し出されて感じられましたが、若の湯は柑橘類のような果実感を伴っており、ほろ苦味も混在することで、複雑かつ奥深い味を得ることができました。
品が良くて且つ入りやすい温度で湯船へ流れ込む自家源泉「若の湯」。あまりに素晴らしいので、宿泊中は何度も部屋とお風呂を往復してしまいました。

前回の記事でもご紹介しましたが、館内の窓から「若の湯」が湧出している様子を見ることができます。
湧きたてのお湯が僅か数メートル流れた後、そのまま浴槽へ注がれているのです。お湯の状態が良いのは当然ですね。
避暑と湯あみによりすっかり元気を取り戻した私は、足取り軽く東京へと戻ったのでした。仕事に疲れたらまたこちらのお世話になるつもりです。
若の湯
酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉(硫化水素型) 50.5℃ pH2.0 湧出量測定不能(自然湧出) 溶存物質1.80g/kg 成分総計1.92g/kg
H+:10.2mg(38.88mval%), Na+:56.1mg, Mg++:35.4mg, Ca++:73.9mg(14.11mval%), Fe++:18.8mg, Al+++:49.4mg(21.03mval%),
F-:9.3mg, Cl-:326.6mg(34.38mval%), SO4--:701.3mg(54.50mval%), HSO4-:241.7mg,
H2SiO3:234.2mg, H2SO4:6.2mg, CO2:110.0mg, H2S:6.0mg,
(令和元年12月2日)
白旗源泉
酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉(硫化水素型) 50.8℃ pH2.1 湧出量測定せず(自然湧出) 溶存物質1.66g/kg 成分総計1.76g/kg
H+:8.91mg(36.30mval%), Na+:54.4mg, Mg++:37.4mg(12.63mval%), Ca++:76.5mg(15.67mval%), Fe++:17.6mg, Al+++:43.9mg(20.04mval%),
F-:9.5mg, Cl-:310mg(35.19mval%), SO4--:651mg(54.61mval%), HSO4-:195mg, Br-:1.5mg,
H2SiO3:216mg, H2SO4:4.4mg, CO2:88.0mg, H2S:7.7mg,
(平成25年5月15日)
草津温泉バスターミナルから徒歩4〜5分(約350m)
群馬県吾妻郡草津町草津甲419
0279-88-2027
ホームページ
日帰り入浴時間要問い合わせ
800円
シャンプー類・ドライヤーあり、ロッカー見当たらず
私の好み:★★★