温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

伊豆中部の某共同浴場

2022年10月14日 | 静岡県

(2021年12月)
温泉巡りを趣味とする方々にとって、地元民向けの鄙びた共同浴場という存在は極めて蠱惑的であり、その魅力に一度でも惹きつけられると、なかなか見つけられない施設ゆえに、あたかも秘宝を追い求めるかのように、つい血眼になって浴場を探してしまうものです。

共同浴場は地元の方以外が利用できないクローズドな施設と、お金を支払えば外部の人間でも利用できるオープンな施設があり、伊豆にもその両方が各地に点在しています。このブログではあまりクローズドな施設は取りあげたくないのですが、オープンな施設だからといっても、元々は地元の方が寛ぐために設けられていますから、私が紹介したことによって外来者が押し寄せるような事態は避けたいため、今回の記事では固有名詞や位置に関する情報を極力避けた上で取り上げたいと考えております。

上画像の鄙びた木造家屋は、伊豆中部の某所にある共同浴場のひとつ。観光地図には浴場の位置を知らせる記載はなく、また周辺に案内板なども無いため、予め浴場の存在を知らないとたどり着けないかと思います。このような共同浴場は得てして部外者以外利用禁止だったりするのですが、こちらの浴場は部外者でも利用可能なので、2021年冬の某日に利用させていただくことにしました。


引き戸を開けて中に入ると、三和土の左手に番台のような空間があり、小窓の下に料金箱へさがっていますので・・・


そこへ料金350円を投入します。部外者でも現金支払いにより利用が可能です。無人施設ですからお釣りはありません。事前に小銭を用意しておきましょう。玄関を入って、手前側が男湯、奥が女湯です。男湯の引き戸を開けると・・・


視界に水色の浴槽が飛び込んできました。まるで別府温泉の共同浴場みたいに、脱衣室と浴室の仕切が無く、両方の空間が一体になっているのです。上画像の場合、浴槽上に立つアルミの壁の向こう側は女湯で、左側に見切れているのが更衣空間です。更衣空間は狭いため、皆さんは譲り合いながら着替えていらっしゃいました。


更衣空間と浴室の関係については、こちらの画像の方がわかりやすいかな。


タイル張りの浴槽は馬蹄型で2~3人サイズといったところ。常時お湯が投入されているわけではなく、蛇口を開けることによって熱いお湯が注がれ、湯船が熱くなったら蛇口を締める、という流れを繰り返しています。
要するに貯め湯式の湯使いであり、純然たるかけ流しとはちょっと違うかもしれませんが、循環式の湯使いが圧倒的多数を占める当地の温泉浴場の中で、加温循環消毒が無く、ほぼかけ流しに近い放流式の湯使いとなっているこのような施設は、かなり珍しいのではないでしょうか。

なお当地では温泉を揚湯から配湯まで集中管理しており、巨大なタンクにストックした熱いお湯を各旅館や日帰り入浴施設など各施設へ配湯しているのですが、ストックしているとはいえかなり熱く、そのままかけ流しつづけると小さな湯船はすぐに入れないほど熱くなってしまうため、この共同浴場では貯め湯式を採用しているものと思われます。私が訪問した時は、一時的に地元のお爺さんでかなり混雑したのですが、洗い場にはお湯が出るカランが無いため、皆さん湯船のお湯で体や頭を洗い、その都度湯船から桶でお湯を汲むため、湯船の嵩がみるみるうちに減ってしまい、しばらく湯船用の温泉が出しっぱなしになっていました(お湯だけだと熱いので、ホースを伸ばして水道の水も同時投入していました)。

湯船に注がれるお湯は無色透明でほぼ無味無臭。癖の無い優しいお湯で、普段使いにはもってこいでしょう。湯上がりはよく温まるのにさっぱり爽快。とても気持ちの良いお湯です。湯船に浸かりながら地元の方々とおしゃべりしながら、当地の温泉や観光事情についていろいろと教えてもらいました。お風呂はまさに社交の場。これからも地元の方から愛され続けてもらいたいと切に願っています。


混合泉(第一貯湯槽)
アルカリ性単純温泉 60.8℃ pH8.7 溶存物質0.524g/kg 成分総計0.524g/kg
Na+:135.6mg(85.26mval%), Ca++:19.0mg(13.73mval%),
Cl-:134.1mg, SO4--:106.3mg, HCO3-:46.9mg, CO3--:5.5mg
H2SiO3:67.1mg,
(平成18年8月14日)

伊豆中部の某所

私の好み:★★★
コメント
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