温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

世界一遅い2ヶ月遅れの台湾総統選レポート 2024年 前編

2024年03月09日 | 台湾
みなさまご存知の通り、2024年1月13日の土曜日に、世界が注目する中、台湾で総統選が実施されました。
そして総統には民進党の頼清徳氏が選出され、1996年に有権者が直接総統を選ぶ現在の制度になってから初めて、同じ政党が3期連続して政権を担うことになりました。一方、同日実施された立法院選挙(日本の国会に相当。一院制)では野党の国民党が第一党となったため、総統(政権)と立法院でネジレが発生してしまいました。とはいえ、国民党は52議席で民進党は51議席ですからその差はたった1議席。両党とも単独過半数を確保できていません。このため8議席を獲得した新興勢力である第三党の民衆党が今後国政運営のキャスティングボードを握るのではないかと言われています。

台湾の選挙で有名なのが、その盛り上がり方。まるでお祭りかフェスかといった様相で、選挙期間中は全土が選挙一色に染まって盛り上がり、常にしらけムードが横溢する日本の選挙とは極めて対照的です。投票率も71.86%という高い数値。これでも前回の総統選より3.04%低くなっているのですが、国政選挙ですら50%台に低迷する日本に比べればはるかに高く、台湾の有権者意識がいかに高いか、この数値からもよくわかります。なお日本で70%を超えた国政選挙は1990年の海部内閣に実施された衆院選挙が最後で、民主党が政権を獲った平成21年の衆院選は69.28%、2021年の衆院選では55.93%でした。

あぁ、台湾が羨ましい…。
有権者の関心が低いあまりに政治が腐敗し経済的な長期停滞を招いている日本があまりに惨めだ…。

拙ブログでは蔡英文が初めて総統選で勝った2016年の総統選の様子をレポートしておりますが(当時の記事はこちら)、その時に台湾の選挙の面白さにハマってしまったため、今回2024年の総統選でも私は現地に向かい、どのような選挙戦が繰り広げられたのか、台湾への羨望を抱きつつ実体験することにしました。

●投票前日
本当は投票の数日前には台湾に着いていたかったのですが、「貧乏暇なし」という言葉通りの生活を送っている私は、なかなか休暇を取得できず、現地へ到着できたのは投票前日というギリギリのタイミングでした。まだ夜が明けていない早朝5時に羽田を出るLCCに乗り、朝8時頃に桃園空港へ到着。MRTで台北の市街へ出た私は、いつもの選挙シーズンとは異なる、ちょっとした違和感を覚えたのでした。

以前に拙ブログで取り上げた2016年の選挙や、蔡英文が再選を果たした2020年の選挙では、街中が選挙ムード一色で、至る所に候補者の大きな広告が掲出され、路線バスもラッピング広告を纏い、辻々に運動員が立って自候補の応援を往来の人々に呼び掛けていたものでした。また飲食店で食事していると、突如運動員が店内へ闖入して食事中のお客さんに候補者の名前や番号が印刷されたグッズ(ボールペンやティッシュなどの小物類)を配って嵐のように去っていったり、街宣車がキャラバンを組んで街中を走り回ったりと、とにかくあらゆる手段で選挙運動が繰り広げられ、否応なく選挙が行われることを実感したものでした。


しかし今回台北の街に立ってみると、たしかに候補者の大きな広告は掲出されているものの、以前より数を減らしているようであり、またサンドイッチマンになって辻立ちしたり、飲食店の客へゲリラ的に景品を配布するような運動員の姿も見られませんでした。上画像のような広告ラッピングの路線バスも走っていますが、以前ほど多いようには見えません。端的に申し上げれば、以前よりかなり大人しくなっていたのです。これを社会の成熟と捉えるのか、あるいは世間の関心低下とみるべきか、何とも言えないところですが、従来見られた選挙の盛り上がりが今回は明らかに欠けていたのです、投票率が低くなってしまうのか・・・


たまたま私が出くわさなかっただけなのかもしれませんが、街宣車もいつもより少なめだったような気がします。こちらは台北の紹興北街を歩いていた時に遭遇した民進党の立法院候補。ブレブレな画像でごめんなさい。


上画像は、行義路温泉へ行くためMRT石牌駅付近で路線バスを待っていた時、目の前を通り過ぎた街宣車のキャラバン隊です。今回の台湾滞在で出くわした街宣車列はこの2組だけでした。なんだか寂しいなぁ。
とにかく以前と比べて盛り上がりに欠けている気がしました。

●民衆党選対本部

では、各候補の選対本部はどうなっているのか。選挙を翌日に控え、臨戦態勢に入っているのか・・・。
まず私が向かったのは、新北産業園区の近くにある民衆党・柯文哲候補の選対本部です。周囲は新築のタワマンが建ち並ぶ典型的な新興住宅地といったエリアです。


最寄りのMRT駅から徒歩10分程度で民衆党の選対本部にたどり着きました。台湾では各政党を色で分かりやすく表現しますが、民衆党は「白」(実際には水色)です。画像に写っているKPとは柯文哲のこと。前台北市長である柯文哲は台大病院の教授という経歴を持ち、台大時代から「柯」とProfessorの「P」をとって「柯P(KP)」という愛称で呼ばれていました。綽名のKPを上手くもじって"Keep Promise"という標語にしているんですね。
民衆党は2019年に結成された新しい政党で、翌年の立法院選挙では早くも5議席を獲得しており、新政党にもかかわらず台湾第三党の地位を確立しています。なお総統選にチャレンジするのは今回が初めて。


本部前ではテレビ局の中継車が準備をしているものの・・・


本部の中には数人の関係者しかおらず、盛り上がりも無く、とても明日が決戦だとは思えないほど長閑な時間が流れていました。街中はおろか、選対本部までこんなに静かだとは。


勝とうが負けようが、選挙当日は民衆党選対本部前の道路で交通規制を実施するみたいですね。

●国民党選対本部

あまりに閑散とした民衆党選対本部を目の当たりにして拍子抜けした私は、続いて国民党の選対本部にも行ってみることにしました。国民党のイメージカラーは「青(藍)」です。今回国民党が選対本部を置いたのは、新北市の板橋駅から・・・


歩いてすぐのところにある、いかにも仮設っぽいこのプレハブの建物です。この土地は以前から空き地でしたが、駅前広場が目の前にあるという好立地なので、選挙の期間だけ国民党が土地を借りたものと思われます。お金にはえげつない台湾のことですから、相当ボッタくられたのではないかと邪推しちゃいます。


あれ、やっぱりここも人が少ないぞ。建物の中にいるのは明らかに関係者だけで、その数も多くなく、内部ではいろんな映像が流されていましたが、誰一人としてその映像を見ていません。本当に明日決戦なのかしら。どうしてこんなに静かでいられるのかしら。

●民進党選対本部

最後は民進党の選対本部です。民進党の色は「緑」です。こちらは8年前の選挙から変わらず、MRT善導寺駅付近の北平東路に面したビルの1階に本部を構えており、目の前には中央芸文公園が広がっています。民進党の選対本部は私のような選挙と無関係の人間でも入りやすい雰囲気なので、8年前のブログ記事で取り上げた時と同様に、今回も入ってみましょう。


蔡英文の時と違い、やはりこちらの陣営も人は少なめでした。やっぱり盛り上がってないのなぁ・・・。
とはいえ、他2党の選対本部と異なり、明らかに私のような部外者と思われる人の姿が散見され、日本語の喋り声もちらほら。


奥の方には頼清徳グッズの販売コーナーが設けられていました。売り上げはカンパとして使われるのですが、さすがに選挙前日だからか、多くの商品は売り切れていたようです。


ご本人が野球ファンということもあって、頼清徳グッズの多くは野球チームをイメージしており、カレンダーやエコバッグ、Tシャツといった汎用性の高い商品の他、ユニフォームなども販売され、販売コーナーをはじめ選対本部は全体的に野球場のダッグアウトをイメージしたような内装になっていました。今回の民進党のスローガンも「挺台湾(チーム台湾)」です。


本部前の中央芸文公園では、翌日開かれる開票速報の集会に備え、会場設営の準備中でした。

それにしても、リベラル色が強かったはずの民進党で野球イメージを前面に出すとはちょっと意外です。野球、スポ根、団体戦・・・なんだかオッサン臭くないかしら。いわゆる保守的な国民党と対照的に、民進党はリベラル路線で政策を進め、特に蔡英文政権はアジア初の同性婚合法化や脱原発など、かなりリベラル色を強めてきましたが、しかし台湾がリベラル政策をとってきたのはここ最近のことであり、元々は典型的な東アジアの儒教的社会ですから、リベラルに対する反発も根強いわけで、今回の選挙ではウイングを広げてそんな反動勢力の票も取り込もうとする意図があったように思えてなりません。つまり今後はこれまでのリベラル政策にブレーキをかけるような動きが起きる可能性も否定できません。

さて、ここまで見てきた街中の様子では、思いっきり冷め切ったような感じを受けたのですが、この後、様相は一変して大盛り上がりを呈するのです。
続きは次回の記事にて。

次回に続く。


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