温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

スミスクリークバレー温泉  Smith Creek Valley Hot Springs

2017年12月17日 | アメリカ
険しい道のりほど、目的地へ到達できたときの達成感はひとしおです。今回取り上げるネバダ州のスミスクリークバレー温泉(Smith Creek Valley Hot Springs)は、現地へたどり着くまでかなり迷ってしまいましたが、でもその苦労が報われて余りあるほど大変素晴らしい温泉でした。


 

ネバダ州中部の田舎町オースティンの西端から分岐する州道722号線に入り、道なりに北西へ車を走らせます。小さな飛行場を過ぎ、緩やかな丘を越えると、前方にはだだっ広い低地が広がりました。この低地には小さな湖があり、その畔に目的地である温泉があるはずです。上画像に写っている景色には青空が広がっているので暖かそうに見えますが、この日は5月中旬だというのに華氏32度、つまり摂氏0℃という寒さ。全身を震わせながら、ハンドルを握り続けます。


 
スミスクリークバレー温泉(Smith Creek Valley Hot Springs)のおおまかな場所はネットで調べておき、細かいことはGoogle Mapに任せようと考えていた私。携帯電話が圏外になることは想定できたので、予め地図をプリントアウトしておき、グーグルマップが指し示したルートをその地図上に書き写して、その通りに従って途中から未舗装路に入りました。初めのうちは走りやすかったのですが・・・


 
低湿地の未舗装路はやがて細くなり、轍も深くなって、ドロドロ且つ凸凹のとんでもない悪路になってしまいました。方角としては間違っていないのですが、このまま無謀に進んだら車をスタックさせて立ち往生しそうだったので、途中で引き返すことにしました。グーグルマップが指し示した道では、目指す温泉へ辿り着けそうにありません。どれだけ技術が進歩しようとも、ITには限界があるのです。


 
電波が届かず、細かな地図もないような僻地では、ITなんて役に立ちません。そこで一旦州道に戻り、湖を南側から迂回する形で、低地の西側へ向かうことにしました。この辺りは放牧地らしく、沿道では黒や茶の牛たちがのんびりと草を食んでいたのですが、そんな呑気な牛たちを尻目に、私は自分の勘を働かせ、なんとしてでも温泉を発見してやろうと、意気込んでいました。


 
低地をぐるっと廻り、州道が山道へ差し掛かろうとする手前に、上画像のような看板が立っています。この看板があるところでグイっと鋭角に曲がり、未舗装路へ入って低地の中を東進しました。先ほどの悪路から目指そうとして断念した地点を、逆方向からアクセスしてやろうという算段です。


 
牛たちがのんびり草をはむ牧場の真ん中を車で突っ切ります。砂埃を上げて走る私の車を、牛たちは「なんだこいつ」という半ば軽蔑の眼差しでジッと見つめてきますが、いまは冷たい視線を浴びても気になりません。なぜなら私の行く先には温かい温泉が待っているはずだから。
やがて右手に湖面が見えてきました。あの湖畔のどこかに温泉があるのです。


 
途中でキャトルグリッド(※)が複数個所現れます。
2ヶ所目のキャトルグリッドを通過して、しばらく進むと・・・
(※)キャトルグリッド:道路に鉄格子のようなものを埋め込むことにより、家畜の侵入を防ぐための設備。鉄格子の間隔が微妙に広く、しかも溝が深いため、家畜はその上を歩けないが、車のタイヤなら通過できるという便利なもの。


 
未舗装路に入って6.5マイル程の地点で、湖に向かって細い道が分岐していますので、そこを右折して細い道を南下していきます。結構な凸凹道ですが、気を付ければ普通の乗用車でも進めるかと思います。



上画像で写っているように、道の前方では白い湯気が上がっていますね。どうやら目的地に近づいているようです。



細い道の先に突如現れたのが、このトタンの家畜のタライです。水面の上から湯気が上がっていることからもわかるように、ここに張られているのはれっきとした温泉です。つまり家畜用のタライにお湯を張った簡易的な露天風呂なのです。



なんてフォトジェニックな露天風呂でしょう!
大自然のただ中にポツンと据え置かれたプリミティヴな露天風呂を目にすれば、マニアならずとも歓喜すること間違いありません。あまりに素晴らしい光景は、美しい絵画の世界そのもの。感動のあまり、しばらくその場で立ち尽くしてしまいました。


 
盆地状の低湿地の真ん中にハンドメイドで据え付けられた原始的な露天風呂。小屋など付帯設備は一切なく、トタンの大きな桶を転用したバスタブがあるだけです。なお露天風呂の目の前まで車をつけることができました。


 
露天風呂周辺は源泉地帯らしく、地面のあちこちから温泉が湧出していました。温泉の温かさが草の生育を促進させるのか、源泉やお湯が流れる水路の周りだけ緑が濃くなっていました。


 
 
いくつもある自噴源泉の中でも大きな源泉にパイプが伸びており、そこから露天風呂へお湯が引かれていました。湧き出たばかりのお湯の温度は68.8℃という高温です。湧いたお湯のすべてが露天風呂へ引かれているわけではなく、むしろ殆どが使われることなく、地面を流れ、川を成して自然へ帰っていました。



トタンの湯船は入れ子のような状態になっており、中の小さなタライにお湯が張られています。小さいと言っても直径2メートルはあり、2~3人は同時に入れそうな容量があります。湯船のお湯は無色透明ですが、底に少々の泥が溜まっているため、お湯を動かすとそれが舞いあがって若干濁ります。


  
源泉からお湯を導くパイプには白い析出がこびりついていました。この温泉には硫酸塩でも含まれているのかな。パイプから出てくるお湯をテイスティングしてみますと、微かな塩気、ゴムのようなイオウ感が少々、石膏感、そして僅かな芒硝感が得られました。なかなか面白いお湯だと思うのですが湯加減はちょっと物足りず、源泉で60℃以上あったお湯も、湯船の温度は34.3℃まで下がっていました。源泉から引かれてくるお湯の量が限られているため、どうしても冷めてしまうのですね。また配管にバルブのようなものも無いので、投入量を調整することもできません。もし熱い場合でも、薄める水が近くにないので加水することもできません。その時々の状況によって湯加減が上下するものとおもわれます。



何はともあれ、その場で着替えて入浴することに。
ふはぁぁ、きもちいい! 最高だぁ!
硫酸塩泉かあるいは塩化土類泉のようなフィーリングがあり、湯中では引っかかる浴感が肌に伝わってきます。ちょっとぬるいのですが、むしろそのおかげでじっくりと長湯することができました。お湯もさることながら、ここはロケーションが本当に素晴らしい。この上なく開放的な環境のもと、空や湖水の蒼、平原の翠、そして山々が戴く雪の白というトリコロールの色彩美が、私の心を魅了してくれました。日本では決して味わえないダイナミックでワイルド、そしてブリリアントな露天風呂でした。勘を働かせながら苦労して辿り着いた甲斐がありました。



GPS:39.315652, -117.549163

随時利用可
無料
野天風呂につき備品類なし

私の好み:★★★
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リースリバーバレー温泉 Reese River Valley Hot Springs

2017年12月15日 | アメリカ
今回取り上げるのもネバダ州のワイルドな温泉です。

 
前回取り上げたカイル温泉(Kyle Hot Springs)からインターステートハイウェイ"I-80"に戻り、再びこの道を東に向かってを走行します。そしてバトルマウンテンでこの道から外れ、ネバダ州道305号へ入ります。



バトルマウンテンから35マイルほど南下すると、放棄されただだっ広い牧場地の右手に、こんもりと盛り上がった小さな丘が見えてきます。これを通り過ぎた辺りで上画像のように、右へ路地が分かれますので、ここを右折します。今回の目的地はこの先にあるのです。なおこの右折地点には看板や目印になるようなものはありません。事前の入念なリサーチが肝要です。


 
曲がってすぐに、家畜侵入防止用の有刺鉄線の柵に行く手を阻まれるのですが、この道の部分だけは簡素なゲートになっており、誰でも開けることができますので、私も一旦車から降り、自分でゲートを開け、車を柵内に入れたら・・・



再び車から降りて、ゲートを閉めます。ここは開け閉めをセルフで行うのですが、家畜が誤って進入しないよう、通過するとき以外は必ずゲートを閉めておくわけです。私有地ながら、日中は出入りが許されているんですね。


 
ゲートから先の道は荒れており、下手をすればスタックしてしまいそうな状況でした。このため、適当なところで車をとめて歩くことにしました。ゲートからは大して離れていないので(0.25マイル程度)、無理して車を進める必要はありません。



ここが今回の目的地、リースリバーバレー温泉です。画像を見ただけではわかりにくいのですが、ここには温泉の源泉によって生み出されたトラバーチンの小さな丘と、そこからお湯を引いている露天風呂があるのです。


 
丘の上から熱い温泉が小さなせせらぎを成して流れていました。そして流れの周りには炭酸カルシウムが固着して、辺りをベージュ色に染めていました。




丘のてっぺんには大きな穴が開いており、穴の底では泡をあげながらアツアツの温泉が自噴していました。まだ空気に触れていない温泉は全く濁っておらず、無色透明で非常にクリアです。言わずもがなですが、この丘は自噴する温泉が生み出したトラバーチンによって形成されているのです。足元に気を付けながら穴のそばまで下り、大きな泡をあげながら湧き上がる温泉に温度計を突っ込んだところ、50.5℃と表示されました。このままでは熱くて野湯できません。



丘の下には家畜が水を飲むための大きな盥が置かれており、そこに源泉からホースで引かれたお湯が張られ、簡易的な露天風呂が出来上がっていました。果てしない大平原にポツンと佇む小さな露天風呂。ワイルドな温泉が好きな私にとって、この上なくうっとりするロケーションです。



丘のふもとに樹脂製の巨大な盥を置き、そこにホースを引いてお湯を張っただけという、至って簡素な露天風呂。だからこそ、この大自然にマッチするのです。盥は直径2.5mほどで、4~5人は同時に入れそうな大きさです。


 
上述したトラバーチンの丘の底から湧出する温泉の一部を、黒いホースを用いて引いています。


 
50℃で湧出する温泉を直接引いており、加水できるような環境にないため、私が訪れた時のバスタブ内の湯温は47℃近くあったのですが、一旦ホースを外してお湯の供給を止め、更に近くに転がっていた木の棒でグルグル掻き混ぜて湯揉みをしたら、何とか入浴できる45℃まで落ち着いてくれたので、満を持してやっと入浴。はじめのうちは熱さが肌を刺してくるのですが、やがて体が慣れてくると、あまりに開放的な環境とお湯の良さが相俟って、時間を忘れてずっと浸かっていたくなりました。うひゃー! 気持ち良いぞ!

トラバーチン丘を形成するような温泉ですから、重炭酸土類泉か塩化土類泉に属するような泉質かと思われるのですが、お湯が新鮮だからか、この手の温泉にありがちなお湯の濁りや浮遊物・沈殿物の発生は見られず、バスタブにおいても無色透明でクリアな状態が保たれています。また酸化が進んでいないためか、味や匂いなどの近く的特徴の顕れ方も総じてマイルドであり、お湯を手に掬ってよく確認すると弱い金気や微かな塩味、そしてほのかな石膏感が得られる程度です。おそらくお湯の参加が進むと、もっと味や匂い、そしてお湯の濁りなどがわかりやすく現れてくるのでしょう。とはいえ湯中ではキシキシと引っかかる浴感があり、そうしたフィーリングだけはこの手の温泉にありがちな特徴が見られました。
いや、そんな屁理屈なんて、もうどうでも良い。ここは本当に素晴らしい! 余計なことを考えず、ただひたすらお湯に浸かって大自然の中に溶け込めばよいのです。それだけでもここに来る価値があります。


 
温泉の湧出量は多く、ホースで引いているのはその一部に過ぎません。多くは地面へ垂れ流されています。そして平たいところで流れは止まり、一帯を泥濘にしていました。また温泉が空気に触れ続けることによって炭酸カルシウムが固着し、石灰華の千枚田が形成され、地表を赤茶色に染めていました。


 
さらに奥には錆びた大きな金盥が置かれていました。これもかつてはバスタブとして使われたのかと思われますが、今では空っぽのまま放置されていました。かつてから知る人ぞ知る秘湯だったのでしょう。
場所さえ特定できれば容易にアクセスでき、しかも圧倒的な開放感の中で新鮮な温泉を楽しむことができる、極楽のようなワイルド露天風呂でした。



GPS:40.198050, -117.10309,

日中なら立ち入り可能
無料
野天風呂につき備品類なし

私の好み:★★★
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カイル温泉 Kyle Hot Springs

2017年12月13日 | アメリカ
前回記事に引き続き、アメリカ・ネバダ州のワイルドな温泉を巡ってまいります。

 
アメリカの西海岸から東海岸までを結ぶ長距離州間高速道路のI-80をサンフランシスコ方面からソルトレイクシティへ向かって東進し、途中のMillcityで一般道へ下ります。


 
続いて、ネバダ州道400号を16マイルほど南下すると・・・


 
角に緑色の標識が立つ十字路に行き当たります。この標識には"Kyle Hot Springs"の文字が記されているので、その案内に従って・・・


 
ダート路に入り、道なりにひたすら南東へ進みます。未舗装路ですが道幅は広く、しかも平坦で荒れている箇所も無いので、普通の乗用車でも問題なく運転できるはず。


 
ダート路に入ってから9.3マイル地点で、道はY字状の分岐します。ここを左に入ってしばらく進むと・・・


 
目の前の小さな丘に、青い巨大なFRP製のタライが置かれている光景が目に入ってきます。ここが今回の目的地であるカイル温泉です。適当なところに車を止めて・・・


 
 
この青いタライは、おそらく家畜用のものであり、それを人間用の簡易的なプールにしているのでしょう。近づいてみると、中には白濁したぬるま湯が溜まっており、塩ビ管からちょろちょろとお湯が注がれていました。遠方に山稜が連なる荒野の真ん中にポツンとたたずむ簡素な露天風呂。ワイルドな温泉が好きな方にとっては、この上なく興奮するロケーションではないでしょうか。私もこの場に立ったときは、全身からアドレナリンがビュービュー噴出しつづけ「うひゃー」と歓喜の雄叫びをあげてしまいました。


 
ちなみに、青いプールの脇にはモルタルで固められた立派なプールも設けられていたのですが、こちらにはお湯が引かれていらず、中は空っぽで、子供用の水遊びグッズが放置されているばかりでした。空気を膨らませて使うその遊具は、まだ中の空気が抜けきっていなかったので、もしかしたら比較的近い時期に、ここへ家族連れが遊びにきたのかもしれません。

 
 
この時の外気温は53°F(11℃)、東京の冬とほぼ変わらぬ寒さであり、にもかかわらずお湯はチョロチョロとしか供給されていないため、プール内の水温は18.9℃という、とてもお湯とは言えない温度にまで下がっていました。試しにその場で着替えて入ってみたのですが、寒くて10秒も入っていられません。意地を張って両腕をあげて歓喜のポーズをとってみましたが、カメラのシャッターが切られた後は、寒さに耐えられなくなり、あわててプールから出て、服を着て寒さを凌いだのでした。ちなみにこの白濁湯というか白濁水からは硫黄由来のタマゴ臭が放たれており、タマゴ味やほろ苦味も感じられました。れっきとした硫黄泉のようです。
超開放的なロケーションで眺望も素晴らしく、しかもマニア受けする簡素な湯船であるため、気温がある程度高くなるとマニアの方々にも納得いただけるような気持ち良い湯浴みが楽しめるのかと思います。でも沙漠のような場所なので、夏は逆に暑すぎちゃうかも。



さて、青いプールにお湯を供給していた塩ビ管をたどってゆくと・・・


 
錆びている鉄のフェンスに囲まれた四角い湯溜まりを発見しました。先ほどの青いプールには白濁湯が溜まっていましたが、こちらのお湯は青緑色で比較的透明度も高い状態でした。


 
湯溜まりの奥には源泉があり、そこから温泉が湧出しているほか、コンクリで固められた湯溜まりの内部からも湧出しているようでした。


 
お湯の透明度は比較的高いものの、底部には泥が分厚く沈んでおり、しかも苔や藻の類も発生していたため、決して気持ち良く入浴できるような状況ではありません。しかし、湯温が44℃もあるため、先ほどの冷たいプールで体が冷えた私は、一刻も早く体温を回復させるため・・・



この湯溜まりにも入浴したのでした。お湯からは強いイオウ感、具体的には濃厚なタマゴ臭と焦げたような匂い、タマゴ味とほろ苦味が感じられます。湯中ではキシキシとした浴感が肌に伝わり、湯上がり後の体にはしばらくイオウ臭がこびりつきました。青いプールと違ってこちらは眺めはあまり期待できませんが、お湯の状態ははるかに良いので、底の泥さえ無ければ、なかなか良い露天風呂となるはずです。

このカイル温泉は、今でこそ廃墟のような源泉の湯溜まりや、そこからお湯を引いている簡易的なプールしかありませんが、かつてはここに温泉リゾート施設があったそうです。そういえばゴーストタウンとして名が知られているユニオンビルもこの温泉の近くにありますね。19世紀にネバダ州では銀鉱脈が発見されて人々が次々に集まってきましたが、20世紀に入ると新たな鉱脈を求めて当地を去り、街の廃墟だけが虚しく残ったようです。そんなゴーストタウンのひとつがユニオンビルであり、カイル温泉も当時は一攫千金を夢見る人たちで賑わったのでしょう。人っ子ひとりいない荒涼とした大地の中で、原始的な湯溜まりで熱い温泉につかりながら、かつての繁栄を想像し、世の中の儚さにしみじみ実感したのでした。



GPS:40.406822, -117.885079,

常時利用可能
無料
野天風呂につき備品類なし

私の好み:★★+0.5


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フィッシュレイクバレー温泉 Fish Lake Valley Hot Springs

2017年12月11日 | アメリカ
今回からアメリカ西部のネバダ州に湧く温泉を取り上げます。


果てしなく続く大地に敷かれたひたすら伸びる道路をレンタカーで疾走し、ネバダ州の南西部にあるフィッシュ・レイク・バレーという地域へ向かいます。


 
そのフィッシュ・レイク・バレーはゴーストタウンで有名らしく、歴史的な景観に興味がある私としても行ってみたい気持ちはあったのですが、今回は時間の関係でその失われた街には立ち寄ることなく、谷の名前の元になった湖の北にあるワイルド且つ開放的な温泉露天風呂へ向かいます。。温泉の場所を指し示す道しるべはないので、あらかじめ地図で場所の見当をつけておき、現地での行動はGPSを活用して、目的地を探します。前夜、紙の地図に印をつけておいた場所に近づくと、私のスマホのGPSが東へ進むよう指示したので、その指示通りに小さな看板が立つ角を曲がって、広い未舗装路を東進しました。未舗装ですが道幅は広く、しかも平坦なので、私は舗装路並みにスピードを出してしまいました。


 
GPSがゴールに近づいたことを知らせる頃、道は左右に分岐するのですが、ここは轍がはっきりしている左へ進みます。そして道なりに走ると、やがて広い駐車場にたどり着きました。駐車場の端にポツンと建っている小屋はトイレです。



駐車場の傍らには小さな池が水を湛えており・・・


 
その池畔にはプールのようなコンクリの構造物が設けられていました。そして池やコンクリのプールを囲む柵に沿って、バーベキューができる簡易的なコンロ、そしてゴミ箱が備え付けられていました。無料で利用できる公共の無人設備なのですが、それにしては備品が充実していますね。ここでならキャンピングも車中泊もできるかと思います。ちなみに画像に写っている白い車(SUV)は、今回の私の旅の相棒です。


 
見る位置や角度を変えて池とプールを見てみましょう。双方の位置関係や周辺の環境がわかるかと思います。申し上げるまでもありませんが、このプールに張られているのは、れっきとした天然温泉です。私はこの温泉に入るべく、ここまでやってきたのです。大平原の中にポツンと佇む池と温泉。いいところでしょ。


 
コンクリ浴槽の近くには鉄の蓋が被せられたコンクリ枡があり、その中からはカラカラと音が聞こえてきます。どうやらこの内部に源泉があるらしく、地中の配管を通って、浴槽内の穴から温泉が供給されていました。


 
温泉が張られたプールの寸法は1.5m×3mで、身長165cmの私の胸下まで浸かる深さがあります。プールサイドにはデッキブラシが置かれているのですが、吹きさらしのロケーションですから、浴槽内には少々の苔が生えており、それゆえ滑りやすくなっていました。とはいえ、お湯自体は無色透明で透明度が高く、湯中の浮遊物も見られず綺麗に澄みきっていました。
ちなみに浴槽内の温度は39.5℃でpH8.39。無色透明無味無臭ですが、ツルスベの滑らかな浴感が気持ちよく、しかも後述するようにお湯が大量供給されるので、鮮度感も相まって非常に気持ち良んです。



浴槽内に供給されるお湯の量はかなり多く、当然ながら完全掛け流しですから、お湯は次々にプールから溢れ出し、川をなして隣の池へ流れ出てゆきます。大量にお湯が注がれ、早いペースでお湯が入れ替わるので、プール内部のお湯の透明度が高く、不純物も少なく、鮮度感も抜群なんですね。浴槽内は滑りやすいので手摺りをしっかり握って、改めてプールの中へ。



うひゃー、気持ち良い!
わざわざここまでやってきた甲斐があった!
本当に素晴らしい!
お湯の質が良いことはもちろん、大平原の中の露天風呂ですから、絶対に日本では得られない圧倒的な開放感を堪能できるのです。しかも放ったらかしのワイルドな温泉にありがちな汚さはあまり感じず、むしろ湯量が多いのでお湯は綺麗そのもの。ワイルドな温泉に慣れない方にもおすすめです。拙い文章と下手くそな画像ではこの温泉お魅力が伝わりにくいのですが、もし当地を観光する機会がありましたら、是非訪れていただきたい名湯でした。



GPS:37.860091, -117.983795,

常時利用可能
無料
野天風呂につき備品類なし

私の好み:★★★

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伊東温泉 ホテル緑風園

2017年12月09日 | 静岡県
 
前回記事の「富戸温泉」から北上して、東伊豆の中心都市である伊東へとやってまいりました。温泉巡りを趣味にするようになってからも、それ以前の温泉に無頓着だった頃も、首都圏で生活する私にとって伊東という街は馴染深く、わが人生でこの駅舎を訪れた回数は数えきれないほどです。さてこの駅から東海バスに乗って、伊東の市街地を進んでゆきます。


 
市街地の中にある「竹町」というバス停で降り、数分歩くと、今回の目的地である「ホテル緑風園」に辿り着きました。駅からも歩いて行けますが、この日はあまり天気が良くなかったため、路線バスでアクセスしたのでした。
エントランスの前には小さな足湯が備え付けられており、誰でも無料で利用できるようです。


 
外観は旅館と言うより築年数の古いマンションみたいですが、エントランスの周りはモダン和風に改修されており、現代的なニーズに応えようとするお宿の努力が垣間見えます。


 
玄関の内部には日帰り入浴客専用の靴箱と並んで券売機が設置されています。入浴利用の場合はここで支払ってスリッパに履き替え、券を奥のフロントに差し出します。なお入浴料金は伊東市民と市民以外では料金が異なり、市民は半額(500円)で利用することができるため、後述するお風呂では地元の方が多くみられました。和風にリニューアルされた通路を横目に館内を進みます。


 
浴室へ向かう途中には休憩室があったり、湯上がりに飲むための冷水が用意されていたりと、サービス面が充実しています外外観や内装だけでなく、細かな配慮もぬかりがありません。



館内には男湯である「頼朝の湯」と女湯の「八重姫の湯」そして貸切露天風呂があるのですが、今回は男湯「頼朝の湯」だけの利用です。ここまでの館内は頑張って現代風に改修されていましたが、脱衣室に入ると一気に昭和へタイムスリップしたような雰囲気に様変わりし、天井の低い空間に古びた設備類が並ぶ室内からは、鄙びた風情たっぷりの湯治宿に近い趣きすら感じられます。


 

天井が低い内湯の造りも建物の古さを物語っているのですが、面積自体はそこそこの広さがあり、大きな湯船は窓に面しているので、天井の低さを補って余りある明るさとゆとりを実感できました。また床や浴槽などにはご当地名産の伊豆青石がふんだんに採用されているため、見た目のみならず感触も上品です。

内湯の壁に沿って混合水栓が計10基並んで取り付けられており、うちシャワー付きは6基です。カランから出てくるお湯はおそらく源泉のお湯です。浴槽の大きさは失念してしまいましたが、結構な容量を擁しています。そして、壁に沿って積み上げられた岩の上から温泉が落とされ、ステップのある湯尻よりオーバーフローしていました。なお岩の湯口の他、浴槽内中央部の底からもお湯が供給されており、複数個所からお湯を注ぐことによって湯加減の均衡を図っているものと思われます。湯使いに関しては不明ですが、私の眼には供給量と排出量がほぼ同じであるように見えたので、掛け流しかそれに近い方法が採用されているものと推測されます。


 
内湯のドアを開けて、お宿ご自慢の露天風呂へ。鬱蒼と茂る木立の中に大きな露天風呂がお湯を湛えており、とても市街地の中とは思えないほど静かな環境です。露天の湯船自体も30人近くは同時に入れそうなキャパを有する岩風呂で、浴槽内には石板が張られています。


 
軒下には笠が備え付けられていました。雨天時にはこれを被って湯浴みするわけですね。露天エリアは全体が日本庭園風の設えになっており、奥の方でどっしり構える岩の築山では小さな滝が飛沫を轟かせていましたが、おそらくこの滝はあくまで庭としての演出であり、温泉とは無関係のようでした。


 
その滝の近くに湯口があり、小さいながらもゴツゴツとした岩から無色透明のお湯が流れ出ているほか、手前側の浴槽内でもお湯が供給されており、複数から供給することによって湯加減のバランスをとっているようでした。しかしながら、供給量に比べてオーバーフロー量が少なく、またお湯からは消毒臭のようなものが感じられたので、もしかしたら放流式との併用で循環消毒も行われているのかもしれません(誤っていたがごめんなさい)。

お湯は混合泉が引かれており、無色透明でほぼ無味無臭。サラサラとした軽やかで柔らかいお湯です。特に内湯でその浴感がしっかりと肌に伝わってきます。上述のように露天風呂のお湯は放流式なのか疑問符が付いてしまうのですが、内湯ではそのような点が無く、お湯の柔らかさがストレートに感じられるため、地元の常連さんは露天に入らず内湯ばかりを好んで入っているようでした。なお分析書によれば、混合泉を分配する機械室内における湯温は40.6℃と表記されていますが、各浴槽ではそれ以上の適温が維持されていましたから、内湯・露天ともに加温されているのではないかと推測されます。

伊東市民なら500円で広い露天風呂に入れるため、昼間から地元の人で賑わっていたのですが、それだけでなく、廉価で宿泊することができるために、比較的早い時間帯から浴衣を纏った宿泊客も次々にお風呂へと集ってきていました。いろいろなお客さんを惹きつける、利用価値の高いお風呂でした。


混合泉
アルカリ性単純温泉 40.6℃ pH8.7 溶存物質0.449g/kg 成分総計0.449g/kg
Na+:93.4mg(69.17mval%), Ca++:31.3mg(26.58mval%),
Cl-:68.5mg(32.88mval%), SO4--:158.6mg(56.22mval%), HCO3-:35.2mg(9.88mval%), CO3--:1.7mg,
H2SiO3:51.6mg,
(平成20年3月18日)

JR伊東線および伊豆急行線・伊東駅より徒歩15分(1.2km)、もしくは東海バスの「竹町」バス停より徒歩1~2分
静岡県伊東市音無町3-1  地図
0557-37-1885
ホームページ

日帰り入浴13:30~22:00
伊東市外1000円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★


コメント (2)
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