温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

キャリエンティ温泉 Caliente Hot Springs Motel And Spa

2018年02月12日 | アメリカ
 
ネバダ州の田舎町キャリエンティ。スペイン語で「熱い」を意味する"caliente"(カリエンテ)が町名の語源であり、何が熱いのかといえば、この地で湧く水、つまり温泉が熱いのです。そこで、どんな温泉に出会えるのか、興味深々で行ってみることにしました。メインストリートに沿って住宅や商店・お役所などが建ち並ぶごくごく普通の田舎町なのですが、さすがはネバダ州、通り沿いには小さいながらもカジノが営業していました。


 
町の中心にはユニオンパシフィック鉄道のキャリエンティ駅が広いヤードを構えており、その歴史ある駅舎は史跡として指定されています。



駅構内をウロウロしていると、おやおや、遠くの方からホイッスルが聞こえてくるではありませんか。



西の方から山や谷を越えてやってきた貨物列車が、この駅で反対方向の列車と行き違いを行い、停車することなく、そのまま東の方へ走り去って行きました。長大という言葉がむなしくなるほど果てしなく延々とつながっている貨物列車は、果たして何両編成で全長何メートル、いや何キロあるんだろうか・・・。アメリカなどんなことでもスケールが大きいですね。


 
 
さて、貨物列車を見送った私は、駅の北東へ向かい、街はずれに位置するモーテル"Caliente Hot Springs Motel And Spa"を目指しました。このモーテルには温泉のお風呂があり、日帰り入浴も可能なんです。レセプションで入浴のみ利用したい旨を伝えると、若い夫婦が笑顔で対応してくれました。
平屋の宿泊棟の手前には・・・


 
上画像の浴場棟が佇んでいました。一見すると宿泊棟と見分けがつきにくいのですが、"HOT SPRINGS BATH"と書かれた看板と屋根の上の小さな湯気抜きが、ここにお風呂があることを知らせています。屋根の下には個室風呂が4室並んでおり・・・


 
私は4号室をあてがわれました。ブロック積みの室内は白いペンキで塗られ、床や浴槽などにはタイルが用いられています。窓が無いためちょっと圧迫感があるかも。室内にはベンチが用意されているものの、シャワーなどの設備類や石鹸等の備え付けはありません。そこで・・・


 
まだ浴槽へお湯を張る前に、バルブの開けてお湯を出し、持参していた石鹸で汗を流し、体を綺麗にして泡を全部排水してから、浴槽に栓をしてお湯を張ることにしました。部屋の横幅いっぱいに作られている浴槽は幅1.8m、奥行1.6mほどの大きさがあり、2人なら余裕で一緒に入れます(とはいえ私は一人旅ですから、一人で入りましたけどね)。若干深い作りなのですが、ステップが付いているので安心して入れます。


 
お風呂は利用のたびにお湯を張り替えますから、入室時は空っぽ。栓をしてバルブを開け、お湯を吐出させます。吐出時のお湯の温度は40.3℃ですから、日本人の感覚で言えば決してカリエンテ、つまり熱いという表現が相応しいようには思えないのですが、日中は高温になる荒野の中という環境であり、また窓のない室内はちょっとしたサウナ状態でもあるので、あまり熱いと体が参ってしまうのです。従いまして、このくらいが寧ろちょうど良いのです。


 
バルブから怒涛の如く吐出される大量のお湯のおかげで、大きな浴槽にもかかわらず4〜5分でお湯張りが完了しました。けだし湯量豊富な温泉なのですね。お湯は無色透明で湯の花などは見られません。透明度の高いクリアなお湯です。なお浴槽にオーバーフロー管は無いので、適度なタイミングでバルブを締めないと、室内にお湯が溢れ出てしまいますから、もしこちらへ行かれる方がいらっしゃったら、この点はくれぐれもご注意を。


 
湯船の温度は38〜9℃に落ち着き、一層湯浴みしやすい湯加減になってくれました。なお私のpH計は8.65と表示しましたので、計器に狂いがなければアルカリ性泉と言えそうです。お湯はほぼ無味無臭ですが、わずかに石膏的な甘みが感じられました。またその石膏の仕業なのか、弱く引っかかるような浴感も得られましたが、総じて言えばアッサリとして癖のない、とても優しいお湯です。優しくて40℃を下回るぬるめのお湯なのですが、なぜかよく温まり、湯上がりはいつまでも汗が止まりません。さすが癖がないとはいえ、本物の温泉はパワーが違うのですね。

お風呂から上がり、上半身裸のまま噴き出る汗をぬぐいながら、表のベンチに座ってオーナー夫婦とおしゃべりしていると、街の中心部の方から機関車のホイッスルが聞こえてきました。ついさっき両方向の列車が行き交ったばかりなのに、時間差をあけることなくまた別のやってきたのですね。アメリカの鉄道は旅客輸送よりも貨物輸送に重きが置かれていますから、荒野のただ中とはいえ、頻繁に列車が行き来しているのでしょう。鉄ちゃんでもある私は、ついつい鉄道事情にも関心が向いてしまうのですが、そんな鉄分の多い御仁はもちろん、ネバダ州を旅する一般の旅行者も、このお風呂は旅の疲れを癒してくれるかと思います。オーナー夫婦の話によれば、宿泊棟にはバスタブ付きの客室もあるそうですから、関心がある方は宿泊も検討してみては。



GPS:37.620860, -114.510312,

2, Youth Center Drive, Caliente, NV 89008
ホームページ

入浴可能時間8:00~22:00
日帰り入浴$20
備品類なし

私の好み:★★+0.5
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

クリスタルスプリングス Crystal Springs

2018年02月09日 | アメリカ
 
ネバダ州南部にはエリア51と呼ばれる広大な空軍管理地があるのですが、この周辺では以前からUFOと思しき飛来物体が目撃されており、また長年にわたって基地の存在が秘密のベールに包まれていたため、その手の話が大好きな御仁の間では、宇宙人やUFOがいるという噂がまことしやかに言い伝えられてきました。いまでも宇宙人やUFOに会いたいと願う人々が訪れるらしく、界隈には上画像のように大きな宇宙人の像を立てたお店が営業していました。


 
そんなエリア51の近くでも温泉が湧出しております。
US93号線と州道318号線、そして州道375号線が一か所で交わる地域の名前をクリスタルスプリングス(Crystal Springs)というのですが、その名の通りクリスタルのように透明度の高い泉があり、しかもその泉は温かい、つまり温泉であるという情報を得たので、どんなところなのか体感すべく行ってみることにしました。上の2つの画像は州道318号線と州道375号線が交わるポイントであり、このY字路の目の前にその温泉があるらしいのです。


 
Y字路付近をウロウロしていると、南側の道端が駐車場のように広くなっており、その先に何やらゲートらしきものが設置されているのを発見。ゲートの傍には案内看板が立っており、そこには"Crystal Springs"と書かれていました。どうやらここが目的地のようです。しかし、この看板以外に温泉の存在をアピールする設備はありません。地域の名前になっているにもかかわらず、寂しい取り扱われ方をされていますが・・・



それどころか、ゲートには立入禁止の札まで掲示されていました。そういえば、前回記事のアッシュスプリングスでも立入が規制されていましたね。この界隈の温泉は一括して立ち入りを規制しなければならない、何かしらの問題でも発生しているのでしょうか。温泉へ入るつもりでこちらへ来たので、この札を目にして落胆してしまいました。



入れないなら、せめて自分の目で存在を確かめておきたい…。そう願いながら敷地を囲うフェンスに沿って歩いていると、木々の中でサラサラと流れる清らかな小川を発見。もしや、これがスプリングなのか。


 
フェンスに沿ってさらに奥へ進むと、まさにクリスタルスという名前が相応しい、極めて透明度の高い池が現れました。まさにここがクリスタルスプリングスなのでしょう。池の畔にはトレイルのような小径がのびていたので、開放されていれば池にドボンと入って野湯を楽しむこともできたはず。事前に仕入れた情報によれば30℃前後のぬるいお湯が大量湧出しているらしいので、灼熱の砂漠の中でそのようなぬる湯に入れたら、さぞ爽快だったことでしょう。しかしこの時は立入禁止だったのですから、己の不運を悔やむほかありません。池は大変清らかであるものの、人が入っていないためか、あるいは元々なのか、たくさんの藻や水生植物が大量に発生しており、今の状態で湯の池に入ることは、衛生面の問題が懸念されるためちょっと躊躇われます。もしかしたら、そんな衛生面の理由で閉鎖されているのかもしれませんね。いや、もしかしたら、温泉がエリア51の宇宙人を呼び寄せており、それが原因で立入が禁止されているのかも。

砂漠の中で湧くオアシスの泉が実は温泉だったという、ちょっと面白い場所をご紹介しました。



GPS:37.531865, -115.233377,

場内の様子に関しては本文参照。

私の好み:入っていないので評価不可
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アッシュスプリングス Ash Springs

2018年02月06日 | アメリカ
ラスベガスの北にあるネバダ州リンカーン郡には、荒野の砂漠にもかかわらず温泉が点在しています。まずはUS93号線のロードサイドで湧出している"アッシュスプリングス Ash Springs"を訪ねることにしました。


 
ラスベガス方面からUS93号線を北上すると、その名もアッシュスプリングスという小さな町に行き着きます。この町の中央にはシェルのGSがあるのですが、GSの道を挟んだ真向かいに、フェンスに沿って何やら怪しい未舗装の路地が伸びていたので、ここを入ってみることにしました。


  
私の予感はみごと的中。看板こそ無いものの、路地の先にはゲートが設置されていました。町の名前の由来になっている「アッシュスプリングス」に到着です。かつては公に開放されていたようですが、現在は開放を中止しているらしく、ゲートは閉ざされていました。しかしその脇から容易に出入りできるようになっていたので、ここから先は自己責任で場内へ入ってみることに。


 
場内は公園のようになっており、ベンチやトイレなどが設けられているのですが、現在はどの設備も使用中止。なぜ中止されてしまったのか、その理由はよくわかりません。


 
場内には透き通った水を湛える池があり、清らかな水と緑が織りなすその麗しい景色に心が洗われます。周囲は砂漠のような環境なので、いわゆるオアシスなのでしょうね。


 
池の底から水が湧出しており、底の砂や砂利を絶え間なく噴き上げていました。この池は単なる水ではなく、ぬるいお湯なのです。つまり温泉なんですね。


 
池の傍らには人工の大きな露天風呂が設けられているのですが、残念ながら槽内のお湯はほとんど抜かれていました。


 
とはいえ、温泉そのものはドバドバと音を轟かせながら大量に湧いており、一応露天風呂の内部にも数センチは溜まっていましたから・・・


 
調子に乗って入っちゃいました。もしかしたらこの界隈の自然界には人体に被害をもたらすアメーバが生息しているのかもしれず、それゆえ公園をクローズさせているのかもしれませんが、今日に至るまで私は健康なので、幸運にも私は被害に遭わなかったようです。お湯は非常にクリアに澄み切っており、見ているだけで清々しい気分になれます。湯温は35℃というぬる湯。画像をご覧になればわかるように、この日は快晴であり、灼熱の陽の光がギラギラと照りつけていたため、このぬる湯に浸かると実に爽快でした。お湯自体は無色透明無味無臭のクセがないサラサラとしたアッサリとした優しいお湯です。単純泉かアルカリ性泉でしょうか。
なぜ清らかな温泉が湧くこの公園がクローズ中なのかわかりませんが、是非とも再開していただきたいものです。



GPS:37.463368, -115.192432,

場内の様子に関しては本文参照。入場の際は自己責任で。
無料
備品類なし

私の好み:★★


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ワームスプリングス Warm Springs

2018年02月03日 | アメリカ
昨年末(2017年末)まで拙ブログではアメリカの温泉を連続して取り上げておりましたが、今回記事から再びアメリカ・ネバダ州の温泉を紹介してまいります。宜しければお付き合いください。

 
ネバダ州中部の田舎町トノパーの街から国道6号を東へ50マイル進むと、ネバダ州道375号線が右手へ分岐する丁字路に差し掛かるのですが、この丁字路の前に放棄された建物が2棟ポツンと残っています。荒野の真っただ中にあるので、小さな建物ながら遠くからもすぐにその存在に気付くはず。実際にその建物に近づいてみましょう。


 
この小屋のような白い建物が今回の目的地です。かつてここには小さな温泉リゾート施設があったようですが、既に廃業されており、なぜか建物だけが取り残されたようです。小屋はいくつかあり、レストランやバーだtyたと思しき建物は閉鎖されているのですが、その左手にある小さな小屋(左側(上側)画像)へ向かうと・・・


 
小屋の傍には小学校で見られるようなプールをひと回り小さくしたような古いプールがあり、そこには真っ蒼なお湯が張られていました。白い小屋は更衣室の廃墟であり、内部は2部屋に分かれ(つまり男女別になっており)、更衣ブースが細かく仕切られていました。



それにしても、プールに張られた真っ蒼なお湯のあまりに鮮やかな色合いと美しさに、私は思わず絶句してしまいました。
プールの廃墟に張られたお湯とはいえ、こんなに美しい青を湛える温泉は他にあるでしょうか!
全米のみならず、地球屈指の美しさではないでしょうか!


 
温泉は山の方からドバドバ注がれており、湯量は非常に豊富。プールサイドはもちろん、私が車を止めている通りの路肩まで、ドバドバという響きが届いていました。
更衣室側にプールへ入るステップが取り付けられているのですが、朽ちていまにも手摺りが折れそう…。でもこのステップのおかげでお湯の透明度がお分かりいただけるかと思います。廃墟に放置されているプールのお湯にもかかわらず、非常に透明度が高いのです。どなたかが定期的にメンテナンスをしているのでしょうか。あるいは、湯量が多いので汚れや飛来ゴミなどが常に流されているのでしょうか。いずれにせよ、このお湯の透明度が鮮やかなブルーを生み出していることに違いありません。またプール内部はカルシウムの付着により白くコーディングされており、これが空の青さを映すことで感動的なターコイズブルーが誕生しているものと思われます。
なお、お湯の注ぎ口に近いステップ付近のプールの湯温は、43℃とちょっと熱めです。


 
一方、その反対側の湯尻では42℃という入りやすい温度に落ち着いていました。上述のステップ付近で身長165cmの私のヘソ下ほどだったプール深さは、湯尻へ行くにつれて徐々に深くなり、湯尻の縁付近では私が完全に頭まで潜ってしまうほど深くなってしまうのですが、湯加減はちょうど良いので、足が底につく程度の深さのところで湯浴みさせていただきました。
うひゃー!すばらしい!
お湯から特に匂いは感じられないのですが、石灰味や石膏の甘みが感じられ、湯中ではキシキシとした浴感に包まれます。白い見た目のみならず、味覚や浴感からもカルシウムが多いお湯であることがわかります。開放的な環境のもと、青い空と青くて綺麗なお湯に浸かれる幸せは、言葉で表現できません。


 
 
さて、湯あみに満足した後は、プールにお湯を供給している温泉の流れを遡ってみました。目の前の小さなハゲ山から流れてくるようです。お湯の流路はカルシウムを主成分とする析出によって真っ白に染まっており、その表面にはうろこ状の模様が形成されていました。


  
緩やかな勾配を流れ落ちる温泉。その途中で振り返ってみました。ほとんど木が生えていない荒野ですので、ちょっと高いところへ上がるだけでも、下の温泉跡地はもちろん、遠くまで良く見通せました。


 
更に流れを遡ると、やがて細く、そして深く刻まれるようになり、やがて最上流部に行きあたりました。周囲はこんもり盛り上がっているのですが、質感や色合いから推測するに、硬めの石灰華(トラバーチン)によって形成された丘ではないかと思われます。つまりカルシウムを多く含む温泉が丘を生み出したのでしょう。


 

プールのお湯は真っ蒼でしたが、源泉がある最上流部ではお湯に濁りなどが全くなく、むしろ内部では黄色が目立っています。温泉藻の類が発生しているのでしょうね。湯面のところどころでさざ波が立っているのですが、それもそのはず、底からプクプクと泡が上がっており、まさにこの湯溜まりで温泉が自噴しているのです。温度計を突っ込んだら59℃という高温が計測されました。たしかに近づくだけで熱気が伝わってきます。ここは荒野の只中ですから、真夏の日中でしたら灼熱地獄になるのかもしれませんね。


 
源泉で湧いた温泉が築き上げたトラバーチンの丘に上がって、お湯の流れ、そして周囲の景色を改めて眺めてみました。潤いとは無縁に思えすだだっ広い大荒野に、まさかこんな温泉が湧いているだなんて、日本に住む我々の常識では想像できませんよね。しかもその温泉が大量に湧いており、独特な地形まで生み出しているのですから、その摩訶不思議な自然の力には驚いてしまいます。
ガイドブックには決して紹介されない温泉施設の廃墟ですが、「国破れて山河あり」ならぬ「施設被れて出で湯あり」と表現したくなるこの素晴らしい温泉。車があれば容易に行けますから、もし興味がある方は一度訪れてみてはいかがでしょうか。



GPS:38.189470, -116.371025,

プールには誰もいませんが、一応私有地のようです。入場の際は自己責任で。
無料
備品類なし

私の好み:★★★
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする