温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

湯元「花乃井」 スーパーホテル大阪天然温泉

2018年05月12日 | 京都府・大阪府・滋賀県
拙ブログでは珍しく、チェーンのビジネスホテルを取り上げます。
夏の某日、大阪中心部の中之島付近、新なにわ筋と土佐堀筋の交差点付近に立地する「湯元「花乃井」 スーパーホテル大阪天然温泉」で一晩お世話になりました。スーパーホテルといえば、徹底した合理化により低価格化を実現している全国展開のビジネスホテルチェーンであり、一部店舗では「天然温泉」と称して、ホテル内の大浴場に温泉やローリーで運搬した鉱泉を導入していることでも有名です。今回取り上げるホテルもその好例なのですが、本社の御膝元だからか、他店よりはるかに大きな浴場を擁しており、しかも自家源泉を使っているため、大阪で宿泊する機会に、利用してみることにしたのです。



最寄駅は地下鉄阿波座駅ですが、私は京阪の中之島駅で下車し、土佐堀川と中之島の綺麗な夜景を眺めながら歩いてホテルへ向かいました。


 
土佐堀通へ出ると、黄色地に青い斜体字で表記されたおなじみの看板が目に入ってきました。


 
ホテルの正面では「大阪市内唯一の本物の天然温泉(2011年6月1日現在)」と記された看板が、道行く人に対してお湯の希少性をアピールしていました。拙ブログをご覧に方なら既にお気づきかと思いますが、大阪市内には他にもいわゆる天然温泉を使った施設がありますので、この表現には首を傾げたくなるのですが、関西、殊に大阪という地域は悪気も無く表現を誇張してしまう文化的な傾向があるようですから、この手の言葉使いは話半分で理解し、且つ大目に見るべきもので、決して目くじらを立ててはならない、と思っています。そして、生粋の関東人である私は、自分にそのことを言い聞かせて、冷静を保ちつつこの記事を書いております。



スーパーホテルとは思えない立派な玄関アプローチの左右両サイドには、なんと温泉が流されていました。淡い黄色を帯びたお湯は、泡立ちながら流れています。贅沢な演出ですが、そんなお湯があるのなら、その分をもうちょっとお風呂に回してほしいなぁ、と思う私。できることなら、このお湯に入りたい!


 
私が泊まったシングルルームはご覧のような感じ。玄関アプローチこそ立派でしたが、客室はごく一般的なスーパーホテルそのものであり、いわゆるビジネスホテルのレイアウトです。余談ですが、テレビを点けたら香港の放送が映し出されました。アジア系外国人観光客が多い大阪らしいサービスと言えるかもしれません。


 
さてホテルご自慢のお風呂へと参りましょう。浴場は地下1階です。客室にあるカードとタオル類を持参したうえで、まず浴場の受付へ赴き、カードと引き換えにロッカーキーを受け取ります。なお受付の奥には食堂が設けられていました。

浴場は大浴場と小浴場に分かれており、男女日替わりなんだとか(朝5時に男女の暖簾替え)。私が利用した日は、男湯が大浴場でしたので、以下のレポートでは大浴場について述べさせていただきます。


 

浴場に入って右手には足湯、そして洗い場が配置されており、計11基のカランが取り付けられています(この他、立って使うシャワーも1基あり)。洗い場に傍には玉座を思わせる大きな腰掛が2台あり、温泉で温められていました。いわゆる座湯の役目を果たしているのかな。そしてその腰掛の奥には、イオンパックと称する設備が据え付けられているのですが、鉢のような形状から察するに、顔をその中に入れて顔面ミストを楽しむためのものかと思われます。

一方、浴室の左側や奥には各種浴槽が配置されています。室内の手前側でお湯を湛えているのは主浴槽。ジェットなど各種機能が備え付けられており、場所によって深さが異なっています。主浴槽の隣(奥)にはサウナと水風呂、最も奥まったところには、ドイツ製の強力なジェットバスと、台湾の沖撃湯も真っ蒼なほど勢いが強い打たせ湯が設けられていました。
そんなこんなで早い話が、スーパーホテルならぬスーパー銭湯なみにいろんな機能浴を楽しめるわけです。正直なところ、私はこうした各種機能にあまり興味がないのですが、他のお客さんは積極的にいろんな設備を活用していらっしゃいました。各浴槽で温泉が使われているのは高く評価したいところです。


さて、肝心のお湯に関して触れておきましょう。見た目は薄い麦茶のような色(淡い琥珀色)を呈しており、それだけで単なるお湯とは違うことがわかるのですが、味や匂いに関してはこれといった特徴を確認できず(若干ほろ苦い程度)、また浴感も掴みどころに欠けていました。玄関では「源泉かけ流し(一部循環)方式を取り入れております。浴槽には常時、新鮮でミネラルたっぷりの温泉が注ぎ込まれています」と説明されていたのですが、実際には新鮮源泉を投入しつつ、循環もしっかり行われており(浴槽内で強力吸引されていました)、しかも府の条例に基づき塩素消毒も実施されているためか、本来の源泉が持っている知覚的特徴が失われているようでした。また分析表によれば炭酸水素イオンが432.4mg含まれていますので、本来ならば弱いながらも重曹泉的な特徴が表れてもおかしくないのですが、このお湯からはあまり感じられませんでした。むしろ玄関アプローチの両脇を流れているお湯の方が、ほのかな臭素臭のような香りを放っており、はるかに状態が良いように思われます。いくら湯量豊富と表現したところで、その量は毎分180Lであり、にもかかわらず不特定多数のお客さんを受け入れなければなりませんから、下手に純粋な掛け流しを実施してしまうと、却って衛生的な問題が発生しかねず、従って循環や消毒などの各処理を行うのは必要不可欠です。

でも本音を言えば、何らの手が加えられていない35℃の源泉に入ってみたいものです。海に近いのに塩分が少なく、重曹の比率が高いので、拙ブログでも既に取り上げている阪神間の銭湯で見られる重曹泉(やそれに近い単純泉)と同じようなタイプであると考えて良さそうです。手が加えられていない生源泉は、きっと至極爽快な浴感をもたらしてくれるに違いありません。そんなことを想像しながら、大浴場の湯船に浸かっていました。とはいえ、浴場のお湯は温泉法に規定されている温泉であることには違いなく、またこのチェーンならではのコストパフォーマンスの良さも魅力的ですから、大阪都心部で温泉に浸かって夜を明かしたい方にはもってこいかと思います。


なにわ温泉(スーパーホテルCity大阪天然温泉)
単純温泉 35.4℃ pH7.9 180L/min(動力揚湯) 溶存物質709.6mg/kg 成分総計711.7mg/kg
Na+:145.2mg(76.52mval%), Ca++:11.9mg(7.14mval%), Mg++:6.7mg(6.66mval%), NH4+:7.6mg, Fe++:0.6mg,
Cl-:21.1mg(7.76mval%), HCO3-:432.4mg(91.72mval%),
H2SiO3:65.7mg, H2S:1.0mg,
(平成28年5月31日)
加水なし
加温・循環あり、消毒あり(府条例の基準を満たすため)

大阪府大阪市西区江戸堀3-6-35  地図
06-6447-9000
「スーパーホテル大阪天然温泉」公式サイト(ホテル)
なにわ天然温泉「花乃井」公式サイト(浴場)

宿泊客の他、日帰り入浴も可能(宿泊客は無料)
日帰り入浴5:00~10:00(受付9:30まで)、11:00~翌2:00(受付0:00まで)
1680円
大浴場と小浴場は男女日替わり。スケジュールは公式サイトでご確認ください。
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★+0.5
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長浜市 須賀谷温泉

2018年05月09日 | 京都府・大阪府・滋賀県
 
琵琶湖の畔に個性的な温泉があると聞き、実際に行ってみることにしました。まずは北陸本線の河毛駅で電車を降ります。お城のようなファサードをした駅舎を出ると、周囲に広がる景色は水田ばかり。実に長閑で麗しい田園風景です。


 
駅の観光協会で自転車を借り、目的地へ向かうことにしました。目的地までは長浜市のコミュニティーバスが運行されているのですが、本数が少ない上、登録者でないと利用できません。歩いて行けない距離ではないのですが、この日はタイトなタイムスケジュールだったため、便利な自転車を活用することにしたのです。


 
国道を走っていると、途中で小谷城なる史跡に出くわしました。私は学生時代に歴史を専攻していたにもかかわらず、日本の中世以前に関しては非常に疎いため、この小谷城についても「浅井長政のお城かな」程度の認識しか持っていなかったのですが、後日よく調べてみたら、かつて織田信長の武将だった羽柴秀吉によってこの城は陥落し、攻められた城主の浅井長政が自害に至ったという悲劇の舞台だったことがわかり、それならばちゃんと時間を確保して見学しておけばよかったと、いまになって頻りに後悔しております。
余談ですが、さきほど私が電車を降りた河毛駅の外観は、このお城をイメージしているのかもしれませんね。


 
そんな歴史の舞台だった小谷城跡を通過して国道を南下すると、路傍の田んぼに温泉を示す看板が立っていました。その角で左折し、路地を入ってゆくと・・・


 
駅から約20分のサイクリングで、今回の目的地である「須賀谷温泉」に到着です。


 
旅館ですから宿泊が本業ですが、日帰り入浴も積極的に受け入れているようです。とはいえ、私が訪れた日は宿泊客が多かったため、日帰り入浴の営業は15時までに変更されていました(通常は11:00~21:00)。日帰りでの利用をご検討の際は、念のため事前に確認したほうがよさそうです。
広々としたフロント左手に設置されている券売機で湯銭を納め、浴場へと進みます。途中右手に食堂があり、日帰り客でもうどんなどをいただくことができます(もちろん有料)。

こちらのお風呂は、ご近所の小谷城にちなんで「浅井の湯」と名付けられており、更に女湯は「お市の湯」、男湯は「長政の湯」として分かれています。まさか入浴中に秀吉が攻めてきて狼藉に遭うようなことはないかと思いますので、今回は警戒心を解き、ゆっくりと湯浴みさせていただきましょう。
なお浴場内は撮影厳禁ですので、以下文章のみでレポートさせていただきます。あしからずご了承ください。お風呂の様子をご覧になりたい場合は、公式サイトでご確認ください。

脱衣室は清掃が行き届いており、飲料水のサービスも用意されていて使い勝手良好。そんな脱衣室から浴室へ。
男湯「長政の湯」の場合、入って右側に洗い場、左側に後述する浴槽が2つ配置され、洗い場にはシャワー付きカランが6基(うち1基は立って使うシャワー)並んでいます。

2つある浴槽のうち、大きな主浴槽は目測で1.8m×3m。露天風呂に面した窓側の浴槽縁には丸太が用いられている他はタイル張り。湯口には浅井長政とその妻であるお市がこのお湯に入ったと書かれており、そこから47℃近くに熱せられたお湯が浴槽へチョロチョロと注がれていました。またこの湯口のほか、その両脇の槽内からは適温のお湯が投入されており、浴槽の縁より静々と溢れ出ていました。湯船の湯加減は42~3℃。お湯は鉄分の影響でオレンジ色に濃く濁っています。とはいえ、お湯に触れても肌に着色するようなことはありません。

もうひとつの浴槽は、主浴槽よりひとまわり小さい副浴槽。「秘湯」と書かれた札が立つその浴槽は4人サイズで、主浴槽よりぬるめの湯加減に設定されており、湯口からおそらく非加温の源泉と思しき鉱泉がチョロチョロ滴り落ちているほか、浴槽内でも適温のお湯が吐出されていました。そして浴槽縁の切り欠けから溢れ出ているほか、浴槽内での吸い込みも確認できました。生の源泉を投入しつつ、循環加温も併用しているのでしょうか。
不思議なのはお湯の濁り方。上述のように主浴槽ではオレンジ色に濃く濁っていましたが、こちらでは無色透明で、湯中に赤茶色の浮遊物がチラホラ舞っています。源泉は20℃未満ですから、浴用にするには加温しなければならず、主浴槽も副浴槽も当然ながら加温されているわけですが、加温の程度によってここまで懸濁の度合いに違いが出るということなのかもしれません。

続いて、引き戸を開けて露天風呂へ。日本庭園のような趣きの中に設けられた7~8人サイズの岩風呂は、その全体がすっぽり屋根に覆われているので、頭上の開放感は望めませんが、外には青々とした竹林が広がり、静かで清々しい環境でのんびり湯浴みすることができます。お湯は内湯の副浴槽と同じような無色透明で、石積みの湯口の中では熱い加温湯と冷たい鉱泉が一緒に注がれていました。また浴槽内でも適温のお湯が吐出されていました。この浴槽でも生源泉と加温循環湯が並行して供給されているのでしょうね。

それにしても、濃く濁っている主浴槽に対し、副浴槽や露天風呂に張られているお湯はやけに透明度が高いので、一見すると同じ源泉とは思えません。しかも何かの物質が特に多く含まれているわけではなく、むしろあらゆる成分が控えめな規定泉なのですから、なおさら不思議です。もしかしたら非業の死を遂げた浅井長政の怨念がお湯を濁らせていたりして・・・。ま、そんなことは無いわけですが、これも天然の鉱泉を使っているからこその現象と言えるでしょう。
総鉄イオンが温泉法の定める規定を上回っているため、いわゆる規定泉として温泉(鉱泉)を名乗れるわけですが、実際にお湯を口にしてみても、さほど金気味はせず、むしろ土気のような感覚が伝わってきました。その一方で、内湯の室内には赤さびのような匂いが漂っているので、やはり鉄分が多いのでしょう。
湯使いに関し、公式サイトでは「県下初の「かけ流し式」を採用」と案内されていますが、実際に私が体感したところでは、そのままの源泉を投入しつつ、循環加温も並行して行っている掛け流し循環併用式と称すべき状態だったように思います。温泉資源が豊富な地域の方にしてみれば、こうした湯使いにもかかわらず「掛け流し」を名乗ることに対して納得いかないかもしれませんが、温泉資源に乏しい滋賀県ではこれでも十分に立派ではないでしょうか。

そこそこ高めの値段設定にもかかわらず、日中から日帰り入浴のお客さんが数人いらっしゃり、ゆっくりとした時間を過ごしていました。戦国時代の歴史に思いをはせながら、湯浴みしてみるのも良いかもしれませんね。


規定泉(総鉄イオンが該当)
17.2℃ pH不明 溶存物質0.19g/kg 成分総計0.24g/kg
Na+:5.10mg, Mg++:8.60mg(25.36mval%), Ca++:26.10mg(46.43mval%), Fe++:6.70mg, Fe+++:4.50mg,
Cl-:6.40mg, SO4--:6.00mg, HCO3-:103.90mg(80.57mval%),
H2SiO3:15.8mg, CO2:45.8mg,

滋賀県長浜市須賀谷町36  地図
0749-74-2235
ホームページ

日帰り入浴11:00~21:00(時間については念のため現地へご確認ください)
1000円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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明日か明後日には更新を再開します

2018年05月07日 | その他
いつも拙ブログをご覧くださり誠にありがとうございます。
昨年までは1日おきに記事を更新しておりましたが、昨年末あたりから更新ペースが2日おきになり、ついに、今年5月の連休では全く更新できない状態になってしまいました。
更新を楽しみになさっている読者の方から、体調やブログ休止などご心配下さるメールを頂戴しておりますが、私用で記事を書く時間が取れなかっただけですので、体調は問題なく、ブログの休止も(いまのところは)考えておりません。ご心配をお掛けして誠に申し訳ございません。皆様のお心遣いに心より感謝申し上げます。
明日か明後日には新しい記事をアップを再開する予定ですので、今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。

2018年5月7日

温泉逍遥 K-I
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