温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

裾花峡温泉 うるおい館 

2023年05月09日 | 長野県

(2022年5月訪問)
今回から信州の温泉を取り上げます。
温泉天国である信州には、県庁の裏手にもかけ流しの温泉浴場がありますので、所用で長野市街へ出かけた際、ついでに立ち寄ってみることにしました。まずは長野駅から路線バスに乗って「長野県庁」バス停で下車します。


バス停から目的地へ向かう途中、温泉関係と思しき設備を発見。温泉マニアとしては、浴槽へ供給される前の温泉に関わる設備を目にすると、なぜか興奮してしまいます。

画像に写っている看板にも書かれていますが、後述する本館の裏手には足湯があり、傍を流れる川や緑豊かな山の景色を眺めながら足湯を楽しむことができます。できればその足湯の写真も撮っておきたかったのですが、実際に足湯で寛いでいらっしゃる方が数名いらっしゃったので、撮影は控えさせていただきました。


バス停から歩くこと数分で今回の目的地である「裾花峡温泉 うるおい館」に到着しました。
長野県庁や善光寺など長野の市街地からさほど離れておらず、周辺には住宅が広がっていますが、裾花峡という名前の通り、建物の向こう側には切り立った絶壁がそそり立っており、緑豊かな周辺景色を含め、たしかに峡谷みたいな風情が広がっているのです。県庁所在地の市街と山の景色が共存しているこの光景は、山岳県である信州を象徴しているのかもしれません。


さて、玄関から館内へお邪魔しましょう。
こちらの温泉旅館では日帰り入浴も積極的に受け入れていますので、今回は日帰り入浴で利用させていただきました。私が訪問した時にも次々に入浴客が訪れており、人気の高さが窺えました。


大浴場には「白岩の湯」と「流泉の湯」の2部屋があり、以前は日によって暖簾を替えていたようですが、2022年4月から「白岩の湯」は男湯、「流泉の湯」は女湯として固定されるようになったそうです。

ここから先のお風呂の画像はございませんので、文章のみで説明させていただきます。
広い内湯にはたくさんの浴槽があり、浴槽によって2つの源泉が使い分けられています。窓側に据えられた大きな主浴槽や、腰くらいの深さで底に足ツボを刺激する石が埋め込まれている足ツボ浴槽などには濁り湯の「裾花峡温泉」源泉が注がれている一方、バイブラ槽やジェットバスには無色透明の「保玉・湯乃花温泉」源泉が用いられているようです。

浴場の川側には露天風呂が設けられ、こちらには濁り湯の「裾花峡温泉」源泉が張られています。川に沿って長い造りの岩風呂で、十数人は同時に入れそうなキャパを有しています。川の方へ向かって岩風呂に入ると、ちょうど目線の先に、裾花峡の崖や山の緑の景色が広がり、あたかも山奥の秘湯にいるかのような気分を味わるのですが、繰り返し申し上げますように、ここは長野県庁のすぐそばという市街地。その意外性が実に面白いところです。なお私の訪問時は、露天風呂へ入る人より、その周りでクールダウンしているお客さんの方がはるかに多かったのですが、その理由は後程。

メインで使われている「裾花峡温泉」源泉はやや緑色を帯びた黄土色に濁っており、海から遠く離れた信州なのにお湯を口に含むとしょっぱい味がします。しかも土類系のお湯なのに引っかかる感覚が弱く、むしろツルスベの滑らかな浴感が得られるのが興味深い点です。分析表によれば炭酸イオンが30mgも含まれているので、これが滑らかな浴感の要因ではないかと推測されます。この源泉は湯量が豊富で、なんと毎分1500Lも湧出しており、その豊かな湯量を活かし各浴槽でかけ流しの湯使いとなっています。特に露天風呂では湯尻の他、縁石の隙間からも大量にオーバーフローしており、惜しげもなく掛け流されるお湯を眺めていると贅沢な気分に浸れます。各浴槽とも入浴しやすい湯加減に維持されているのですが、にもかかわらずパワフルに温まるため、気づけば体がかなり火照ってしまい、心臓がたちまち激しく鼓動してしまいました。露天風呂のまわりで多くのお客さんがクールダウンしていたのは、こうしたお湯の力強さが影響しているのでしょう。

一方、内湯の一部に使われている「保玉湯乃華温泉」源泉は冷鉱泉を加温循環させたもので、分析表によれば源泉では硫化水素イオンが20.8mgも含まれているのですが、加温や循環などの影響で、浴槽では硫黄感はすっかり失われており、塩素臭以外の匂いや味は特に感じられません。その代わり滑らかなツルスベ感(とろみ)を湯中でしっかり実感することができました。102mgも含まれている炭酸イオンがその滑らかさをもたらしているのかと思われますが、それにしてもこの102mgという含有量には驚かされます。
ところで、この「保玉湯乃華温泉」は旅館からちょっと離れた犀川の小田切ダム付近で湧出したものをローリー輸送しているのですが、野湯などの変わり種温泉が好きな方ならご存じの塩生乙温泉こそ、この「保玉湯乃華温泉」源泉なのです。


塩生乙温泉として知られる小田切ダム湖畔のポリバスがある場所からちょっと坂を上がった場所を、Googleストリートビューで見てみたら、なんと源泉施設からトラックの荷台に積んであるタンクへ鉱泉を注水している光景が写っていました。おそらくこのトラックによって「うるおい館」へ運搬されているのでしょうね。源泉が有していたはずの硫黄感の喪失は、加温や循環の他、輸送やそれに伴う時間の経過も大きく影響しているものと思われます。


さて話をこの旅館の自家源泉「裾花峡温泉」に戻しましょう。
2階の食堂「湯あがり亭」には・・・


飲泉できるコーナーがあり、冷えた温泉水を無料で飲むことができます。


ピッチャーに入れられた冷えた温泉を実際に飲んでみますと・・・しょっぱさの他、金気味や石灰味が口の中に広がりました。飲泉は茶碗1杯までとのことですが、決して美味しいものではないためゴクゴク飲めるわけではなく、正直なところ茶碗1杯以上は飲みたくないかも、といった感じの味です。でもこの不味さこそ体には良いのかもしれません。健康オタクは妙にマゾ気質がありますけど、それに倣って不味さをありがたく思い、茶碗に注いだ冷たい温泉をしっかり飲み干しました。


裾花峡温泉
ナトリウム-塩化物温泉 44.3℃ pH7.2 1500L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質8625mg/kg 成分総計8739mg/kg
Na+:2715mg(81.90mval%), Ca++:302.7mg(10.47mval%), Fe++:4.1mg,
Cl-:4071mg(85.67mval%), Br-:12.0mg, I-:5.4mg, HCO3-:1092mg(13.36mval%), CO3--:30.0mg,
HBO2:67.4mg, H2SiO3:137.6mg, CO2:114.4mg,
(平成27年5月11日)

保玉湯乃華温泉
含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩冷鉱泉 14.2℃ pH9.18 湧出量不明 溶存物質1304.1mg/kg 成分総計1304.1mg/kg
Na+:331.3mg,(95.43mval%),
Cl-:86.0mg(12.99mval%), HCO3-:659.0mg(57.72mval%), CO3--:102.0mg(18.17mval%), HS-:20.8mg,
(平成24年2月27日)

長野県長野市妻科98
026-237-4126
ホームページ

日帰り入浴10:00~23:00(朝風呂営業6:00~9:00)
平日800円・土日祝850円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5

コメント (2)
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