(2022年5月訪問)
温泉巡りを趣味にしている方ならお分かりいただけるかと思うのですが、日帰り入浴に比較的寛容な温泉地であっても、なぜか訪ねた旅館の全てで入浴を悉く断られてしまうことってありますよね。私も2022年5月某日に信州の上山田温泉でこのような経験をしてしまい、温泉街の真ん中で途方に暮れていたのですが、そんな私を救ってくれたのがこちらのお宿でした。お宿の名前には「ホテル」とカタカナが含まれていますが、実際には純然たる和風の温泉旅館です。周囲の旅館群に埋もれるかの如くひっそりとたたずんでおり、うっかりすると通り過ぎてしまうかもしれません。
見るからに古そうな外観のお宿。破風を頂く玄関の下には「源泉掛け流し」と書かれた札が立っており、それを目にしながら、ほのかな期待と投げやりな諦観がごちゃ混ぜになった心境で「ごめんください」と声を掛けると・・・
居間と思しきお部屋からおばあちゃんが現れ、日帰り入浴を快く受け入れてくださいました。
館内は昭和40年代から時が止まったかのような雰囲気。館内のあらゆるものが昭和のままなのですが、特に骨董品クラスのブラウン管テレビや、懐メロばかりが入っているジュークボックスが私の目を惹きました。
お風呂は玄関から右手の奥へ進んでいった突き当たりにあります。
昭和の面影が強く残る外観や館内とは打って変わって、男女別のお風呂はこぢんまりとしているものの、極めて一般的と言いますか、昭和ではなく平成の雰囲気を強く感じさせる造りです。おそらくお風呂だけ改修したのでしょうね。男湯の場合は左側にシャワーが4個並び、右側に浴槽が1つ据えられています。
内湯の浴槽はタイル張り。無色透明のお湯が張られています。掛け流しの湯使いですが、訪問時には浴槽から洗い場へお湯が溢れ出るようなことは無く、どうしたものかと浴槽内を調べてみたら、お湯は後述する露天風呂へ流下する造りになっていたのでした。
像が飾られていた湯口から温泉がチョロチョロと投入されています。このお湯を口に含んでみますと、薄いながらもはっきりとしたタマゴ味を感じました。湯中では弱いツルスベ浴感が得られます。なお源泉温度が低いので加温した上でかけ流されているようです。
露天の岩風呂は2人しか入れないような可愛いらしい造り。池で錦鯉が泳ぐお庭に面しています。上述したように内湯の下流に当たるためか、ぬるめの湯加減で、この露天風呂からお湯が排出されていました。個人的には上流に当たる内湯のお湯が良いので、訪問時は内湯ばかりに入っていたのですが、でも露天ではしっかりクールダウンできるので、悠々と泳ぐ鯉をみつめながら、内湯で火照った体を露天で冷ましていました。
お蔭様でこの日は無事、上山田温泉のお湯に入浴することができました。
戸倉ホテルさん、ありがとうございます。
造られたレトロではなく本物の昭和を体感できる貴重なひと時でした。
戸倉温泉源泉開発協同組合新5号源泉と上山田温泉株式会社3号源泉の混合泉
アルカリ性単純温泉 47.5℃ pH8.9 溶存物質360.5mg/kg 成分総計360.5mg/kg
Na+:84.7mg(79.11mval%),
Cl-:67.8mg(41.10mval%), HS-:0.9mg, S2O3--:0.2mg, SO4--:61.0mg(27.33mval%), HCO3-:73.9mg(26.03mval%),
H2SiO3:43.5mg, HBO2:2.2mg, H2S:0.01mg,
(平成31年3月15日)
加温あり(入浴に適した温度を保つため)
加水循環消毒なし
長野県千曲市大字戸倉温泉3055
026-275-2019
日帰り入浴時間不明
500円
シャンプー類・ドライヤーあり、ロッカー無し
私の好み:★★+0.5