車を運転していてあんなに叫び声を上げたのは初めてだったと思う。
坂道を登ったところで突如空に現れた大きな白い山に、私は馬鹿みたいに叫んだのだ。
「うおーっ」と。
そしてハンドルを切り損ねかけた。
私は開田高原を目指していた。十年前貧乏旅行で訪れたところに再び立ち寄ろうと思い立ったからだ。
この春から立ち上げた新しい仕事がなかなか軌道に乗らず、私は思い切った気分転換を必要としていた。正午過ぎに松本を発って中山道を南下し、途中奈良井の宿で緊縮財政を省みず結構な買い物をした。さらに南下して開田高原までたどり着いたときには、午後も3時を回っていた。
しかし私は、愚かにも、そこから御嶽山が望めることすら忘れていたのだ。
私は心底びっくりした。
名峰は、初夏の暑さにうだる下界からまったく隔絶された高みで、白銀の雪をかぶり燦然と輝いていた。
圧倒的な大きさであった。
これを求めていたのだ。これを求めていたのだ。
よろけるように車を道路の脇に止めると、私は慌てて車を降り、口をあんぐり開けて山に見入った。
坂道を登ったところで突如空に現れた大きな白い山に、私は馬鹿みたいに叫んだのだ。
「うおーっ」と。
そしてハンドルを切り損ねかけた。
私は開田高原を目指していた。十年前貧乏旅行で訪れたところに再び立ち寄ろうと思い立ったからだ。
この春から立ち上げた新しい仕事がなかなか軌道に乗らず、私は思い切った気分転換を必要としていた。正午過ぎに松本を発って中山道を南下し、途中奈良井の宿で緊縮財政を省みず結構な買い物をした。さらに南下して開田高原までたどり着いたときには、午後も3時を回っていた。
しかし私は、愚かにも、そこから御嶽山が望めることすら忘れていたのだ。
私は心底びっくりした。
名峰は、初夏の暑さにうだる下界からまったく隔絶された高みで、白銀の雪をかぶり燦然と輝いていた。
圧倒的な大きさであった。
これを求めていたのだ。これを求めていたのだ。
よろけるように車を道路の脇に止めると、私は慌てて車を降り、口をあんぐり開けて山に見入った。