昔、越の国に伝尤(でんゆう)という独り者がいた。桃の花が好きで庭に桃の苗を丹念に育てていた。その年の夏は日照りが続き、草木は枯れ果て、人々は今日の飲み水にさえ苦労する有様だった。伝尤は自分の飲み水まで苗に注いだ。ある人がこれを見て、「せっかく苗が育って桃の花を咲かせても、自分が乾いて死んだら花を愛でることもできないではないか。愚かなことだ」と言った。伝尤が答えて言った。「私は独り者である。生きながらえても後世に子孫を残すことができない。しかしこの桃は樹になれば種を落とす。種は次の樹になる。長生きする方を取ろうではないか」と。
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この話を、私は古本屋で立ち読みした。何とも後味の悪い話である。伝尤のとった行動をいったいどう受け止めてよいのか、いまだに決めかねている。彼は明らかに間違っていると思うのだが、それを上手く説明できないでいるのだ。
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この話を、私は古本屋で立ち読みした。何とも後味の悪い話である。伝尤のとった行動をいったいどう受け止めてよいのか、いまだに決めかねている。彼は明らかに間違っていると思うのだが、それを上手く説明できないでいるのだ。