た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

無計画な死をめぐる冒険 128

2008年05月11日 | 連続物語
 「あなたは」
 「お前は行き過ぎた」
 天蓋を震わす低い声である。「それを止めるためにわしが現れた」
 「あなたは何者ですか」
 差し当たって私が知りたいのは、なぜ彼が現れたかという原因より、彼が私を取って食う類の者か否かの確認である。
 怒りに見開いた目が私を射すくめる。
 「わしはすでに二度お前に姿を現した」
 「二度」
 二度ならば、団子鼻に冷血女であろう。しばらく前から、いやな予感はしていたのだ。大体、人の質問にまともに答えないところが奴らと同類である。
 「ひょっとすると、一度はぶ男で、一度は私を深海に沈めかけた女でしたか」
 鬼の開いた口の端が笑ったように思う。
 「印象がよくないようだな、どちらも」
 今のあなたほどではないが、という言葉を呑み込んだ。いずれにせよ、取って食わないことは確からしい。そう言えばあの冷血女も自分は団子鼻と同一人物だというようなことをほのめかしていた。一体どれだけ人を馬鹿にする連中なのだ。一人か三人かはいざ知らず。

 (つづく)
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