た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

2016年09月12日 | 短編

   酒場で夢を語る男がいた。夢は大きく、国どころか世界を巻き込んで果てしがなかった。居合わせた者は皆心惹かれ、男の言葉に同じ夢を見て酔いしれた。男の語る夢は貧困を解決した。憎しみを和らげ、友情を拡げた。なるほどそうなれば世の中はもっとずっと生き易くなると、耳を傾けた誰もが思った。そこへある女が口を挟んだ。「で、あんたはその夢の実現のために、どんなことをするの」夢を語った男は口をつぐんだ。

   次の酒が黙って男のグラスに注がれた。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 田んぼアート | トップ |  »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

短編」カテゴリの最新記事