た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

一人酒盛り

2016年03月14日 | essay

 人は逆境に立たないと創造的にならない。キノコを見給え。環境が良すぎると地中に菌糸ばかり伸ばして地上にキノコを生やそうとしない。環境が悪くなってこそ、胞子を飛ばそうとしてキノコを屹立させるのだ。人間もしかり。賢者ポアンカレは確かそんなことを言った。何かで読んだ本にそう書いてあった。

 逆境と言えば、自分の人生はどこからどこまでが一つの逆境だったかわからないほど逆境続きだったようにも思えるし、翻せば大した格別の逆境もなく今日を迎えられた気もする。逆境がたとえあったとしても自分がその都度創造的になりえなかったのは、逆境の程度の低さのせいか、わが身のふんばりの弱さのせいか、多分後者だろうが、ここに来て人生四十余年、ようやく、結構本式の逆境と対面する羽目になった。

 人の憎しみと対面している。それも、同時に複数の。そして自分の愚かさも身に沁みて感じている。打開策に迷う。自分にそれができるかどうか。自分の能力は、自分が見込んだほどあるのかどうか。

 私は果たして、キノコを屹立させることができるか。私は果たして、次の我が半生を創造することが出来るか。乞うご期待。そんな思索に耽りながら飲むと、夜更けのビールもことのほか苦く、旨い。

 

 

 

 

  

 

 

 

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