「雨月物語」に続いて「山椒大夫」も、結局見てしま
った。
これを見るのも二度目。
「安寿と厨子王」と言った方が判りやすいと思うが、
溝口健二は、有名な原作ものを映画化するのが好きな
のか、どうもその手が多い。
だからか、話はスムーズに展開して、破綻することは
ない。
つまり、安心して見られる。
これは、良い点でもあるが、反面詰まらなさの要因に
もなりうるものである。
「山椒大夫」は、そんな溝口作品の中でも、かなりま
とまってる作品ではないだろうか。
印象としては、調和の美。
ほぼ同じ時期に撮った「雨月物語]「近松物語」と合わ
せ、この三つは、どれも完成度が高く、隅々まで計算
された物の配置とか、映像に隙を感じさせないのが特
徴。
つまり、どれもよく出来ていて、良い作品だと思う。
これらの作品は、話の筋を知った上で見るという点で
は、歌舞伎(見たこと無いが想像)を見るのに近いか
もしれない。
見るほうとしては、いかに美しく表現してくれるのか、
そんなところに見所を置くという、その見方。
興味がある人にとっては、たまらないが、無い人にと
っては退屈そのもの。
溝口の作品は、その点がはっきり分かれそうな気がす
る。
で、良い作品だとは思うが、好きかと言われると、嫌
いではないという曖昧な所に落ち着く。
個人的には、まとまった良く出来た作品より、破綻が
運動を喚起するような作品が好きなので(この部分無
理やり理屈をつけました)。